災害看護(東日本大震災)とは?
東日本大震災で多くの死傷者と行方不明者が出ている。
非常に悲しく、自分も現場に直行してケアした気がいっぱいになる。
今なぜ「災害看護」なのか。
なぜ災害現場では、看護が非常に重要な意味をもつのか。
今だからこそ、少し記述してみたい。
1 ) 災害看護の確立
まず、「災害看護」を確立したのは、
日本であり、兵庫県立看護大学(現兵庫県立大学看護学部)であった。
阪神大震災で様々な痛みを共有した看護師たちが、
現場での応急処置から災害の概念化
しいては、災害の予防行動にまで研究を押し進めて、
元 ICN President の南先生とともに「災害看護」を確立して、
世界中にその重要性を示した。
YUITO も世界中旅するが、日本人で看護師というと必ず
・お前は兵庫県立出身なのか、自分は兵庫をRESPECTしている
・災害看護はまさに看護の本質であり、今後最も重要な領域である
とアメリカのナースを始め、タイのナース、ドバイのナースに言われ、
一番驚いたのは、アフリカでも言われたことである。
ひとりでも多くの人を救えることを願っている。
2 ) WHOと災害看護
YUITO のメンターでもある災害・紛争疫学研究者の
Richard Garfield 教授は、
コロンビア大学看護学部教授であり、WHO災害対策部長であった。
ただの酒が好きな陽気なおっさんにしか見えないが、
男性看護師であり、疫学者であり、
世界中で大規模な災害が起きると24時間以内に飛んで、
現地の first quick survey を行い、
現地の状況を報告し、
必要だと思われるものを報告し、援助を待つ。
本人はいつも、
「災害の8割はアジアで起きるし、地域を包括的に見れる看護師が
まずは災害地に行くべきであり、危険なら男性看護師がいいだろう。」
と述べている。
3 ) 看護の本質と災害
では、なぜ災害時に看護が重要なのだろうか。
5つの視点からその特徴を考察したい。
( 1 ) 被災者の体全体をアセスメントできる
看護師は基本的な応急処置はもとより、
対象の体を臓器別ではなく、トータルに診ることができる。
この人は外傷なのか、心疾患なのか、呼吸器疾患なのか。
すぐに判断し、応急処置をすることができる。
これは生かしたのが、トリアージであり、
体を包括的に診れる看護師の仕事となっている。
医師は救急医や総合医は同じようなことができるが、
臓器別に細分化されて教育された医師には難しい。
( 2 ) 精神的なケアまで展開できる
地震で家族を亡くし、安全が確保できない状態では、
被災者は精神的なストレス下にあり、
それは体と同じように丁寧なケアと治療を受ける必要がある。
体だけでなく、精神的なケアまで提供することが普通である看護師は
災害時にこの部分で非常に有効となり、その専門性を発揮できる。
( 3 ) 環境アセスメントと環境ケアができる
また災害はライフラインの遮断や避難所での過酷な生活をしいる。
看護の基本概念は、人間と環境であり、
ナイチンゲールの概念より看護とは医療だけでなく、
水や気温、食料、安全などの環境因子もマネジメントして、
包括的に被災者をケアする考え方が刷り込まれている。
したがって、看護師だから、災害時の応急処置をしながら、
水の確保やトイレなどの衛生管理などを同時に遂行して
医療以外の側面からも被災者をスムーズに支援できる。
( 4 ) quick survey
すると、看護師は
・被災者の外傷と疾患の状況
・不足するであろう医療品
・避難所の生活状況
・避難所で生活物資で支援が必要なもの
・被災者の精神状況
・地域の全体的な情報
という包括的かつ迅速な報告が可能となり、
・必要な診療科の医師
・必要な生活物資
・今後の支援戦略
を迅速に手配できるようになる。
だから、WHOでも
災害地にはまず看護師をすぐに数名派遣するのである。
( 5 ) 復興までの長期支援
疾患だけでなく、生活全体をアセスメントして、
ケアを持続的に提供できる看護師は、
急性期の疾患が落ち着いた後でも、
「まちの復興」という視点で、
生活を支えつつ、地域に出向いていき、
長期的な視点で被災者を
かれらが暮らす町をケアできるのである。
「生活作り」と「地域作り」は
まさに「復興」であり、
病んだ町をケアし、リハビリで自律され、もとの生活に戻すのは
看護師・保健師の専門性そのものである。
以上の5つの視点から
世界中で災害というと「看護」と言われるのである。
まさに「看護の本質」そのものが浮き彫りとなり、
最もその専門性が発揮できるのが「災害」なのである。
また今回の災害でお亡くなりになられた方に
心からご冥福をお祈りいたします。