がんセンター
今回は、ハワイ大学がんセンターを紹介します。
がんセンターは、大学内では独立組織となっており、
医学部キャンパス内に設置され、
カカアコという再開発している地域にあります。
国立がん研究所(Natinal Cancer Institution)の所属機関であり、
予算規模も大きく、新しくてオシャレな建物が特徴的です。
研究専門の教授陣も多く、ゲノムから病理学、
実験ラボから介入研究、コホート研究まで幅広く、
自分も未だに全体像を把握できていません。
フラダンスによる介入実験も行なっており、
ハワイらしい自由な雰囲気で、みなフレンドリーです。
HPの写真のコーナーは、一見の価値ありです。
職種も国籍も多様で、日本人研究者もいます。
ハワイ州と環太平洋に責任があるとのことで、
グアムのデータも解析していますし、
ハワイの日系人がん登録もあり、
食生活など日本人文化についてよく質問されます。
ハワイに住んでいますが、
普通の日本人の生活をしているので、
朝には納豆ご飯食べて、ヘルメットかぶって、
リュック背負って、自転車で20分強かけて通っています。
自転車には、サーフボードを運べるキットが装着され、
ハワイは渋滞が多く、自転車が早くて便利です。
こんなに自転車に乗るのは中学生以来ですが、
けっこう気分爽快になります。ハワイだから?
今は、ポスドクの仕事とオフィスを受け継いで使っています。
疫学部の医療統計班は、
(Cancer Epidemiology Program, Biostatistics)
共有資源(Shared Resource)となっており、
がんセンター内にある様々なチームの統計解析を
サポートする一番マイナーな小さいチームです。
自分のオフィスもパソコンと統計の本しかなく、
今度ガンダムのプラモデルを置こうと考えています。
個人的には、自分のオフィスを気に入っており、
写真のようにダイアモンドヘッドとワイキキビーチが
一望できる最高に素敵なオフィスです。
最上階にあるCEOの真下の部屋なので、
がんセンター内で2番目にいいオフィスだと
勝手に信じています(笑)
事務やITなどのサポートスタッフの充実ぶりがすごく、
会計や書類、PCやネット環境など、すべてやってくれるので、
研究者が研究のみに専念できる効率的なシステムです。
統計は、主に数学とプログラミングで
「SAS」と「R」という統計ソフトと
いくつかのプログラミング言語を併用して、
データクリーニングと解析を行っています。
別のフロアに数億円するスーパーコンピューターがあり、
ゲノムの数兆個というデータも一瞬でまわる
なんとも「すげー」しか言えない環境です。
あまりわからないゲノム解析も
遺伝子情報学(Bioinformatics)が専門である
いつも部屋でギターを弾いている長髪の教授が
丁寧におしえてくれるので、勉強になっています。
医療統計は、確かに難しいですが、
他のチームに参加するので、
自分が考えもしなかった研究をサポートできて、
興味の幅が広がり、おもしろい仕事です。
マウスのRCT、ゲノム情報のノイズ処理など、
「知らねー」と言いたくなる案件も突然やって来ます。
そういう案件は、すぐにボスに相談です。
統計よりも、客観的な視点や倫理調整などの
コミュニケーション能力の方が重要で、
特に、倫理調整は上司に強く言われています。
看護の役割と同じだと思っているのは、
自分だけでしょうか。特に倫理調整とかね。
海が見えるテーブルがあり、昼寝するソファーまであり、
豊かな創造性とは、こうゆう素敵な環境から生まれるのだな
といつも感心しています。日本にもあるといいですね。
担当教授は、優しい白人のおばさんで、
(統計とプログラミングは最速です)
自分の研究は、スーパーマニアックに
測定誤差や人種間の違いを主としています。
みなさんが病院で見ている検査値は、
「実は確率であり、かなりの変動がある」
という話は、また今度で。
やはり、近い将来的には看護でRCTを
(Randomized Controlled Trial、無作為化比較試験)
組める人材が不可欠であり、
10年後にRCTを組める医療統計者になることが
現在の大きな目標でしょうか。
自分も、質的研究は大好きですが、
医学と張り合うには量的研究は必須で、
看護人材の中からビックデータやゲノム、
医療統計に興味がある若手が出て来てほしいと
切に願い、先輩として道を作っています。
ぼくがいつも思っているのは、
「看護には、新しいエビデンスを作る
大きなチャンスがたくさんある」
ということです。
だって、浣腸ひとつ、清拭ひとつにしても、
RCTのエビデンスないままに、
経験則的な根拠で行ってるだけですからね。
今、当たり前だと思っているケアで
患者さんの死亡率をあげている可能性も十分にあります。
大学院卒の看護師も増えて来たので、
そろそろで日本全国でRCTを組み、
看護ケアのエビデンスを
日本から発信すべきだと感じています。
そこで、必要なのは
「リーダーシップ」と「医療統計家」でしょう。
診療報酬に乗らないのも、
看護が専門的でないと言われるのも、
RCTによる強いエビデンスがないからです。
看護は、今まで研究されていない分、
新しいエビデンスを作れるチャンスは、
たんさんあるように感じます。
LancetやNew England Journal of Medicine (NEJM)
などの一流雑誌に、日本の看護のRCTを載せる
という強い思いを抱きつつ統計をまわしています。
医療統計が専門となり、
ゲノムやバイオマーカーをやっておりますが、
これも看護師としての仕事・研究だと思っています。
従来の狭い看護に捉われないで、
あらゆる領域で看護師が自由に研究できる環境が
早くできるといいなと思っています。
今日も後輩のために、がんばって道を切り開きます。