NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

年功序列

すでに5月になろうとしており、

新年度生活も落ち着いた頃でしょうか?


YUITOは、

頭はオフシーズンのままですが、

またまた全国巡りを始め、

夏はアジアを中心に仕事が入っています。


今回は「年功序列」から

「看護師の評価制度」を

考えてみたいと思います。


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多くの病棟には

「お局( OTSUBONE )」

と言われる人材がいて、

医療者と患者に害をなしているのは、

みなさんもご承知の通りです。


全国のどこの病院に行っても

この言葉が自然と出てきて、

看護独自の文化?

に驚愕することがあります。


その人材は、


1) 同じ職場で長期間働いていて、

2) 自分がルールと勘違いしており、

3) 今までの病棟のやり方を強要し、

4) 人のダメ出しばかりして、

5) 自分はあまり働かない


という特徴があります。

(超的確な表現でしょ!?)


要するに、

「患者や後輩のため」

ではなく

「自分の立場をいかに守るか」

で行動している人たちです。


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ただ、

これは彼女(彼ら)の問題だけでなく、

「看護師の能力は臨床経験年数で決まる」

という看護の評価システム自体にも

本質的な問題があるのです。


日本の看護全体が、

この「(経験年数的)年功序列

評価システムを採用しているので、

能力はないけど、長く働いているだけで、

主任や師長へと自動的に昇格して、

能力のない人が病棟を支配するという

「お局」制度が完成するのです。


そして若手は、

自由にケアを展開するよりも

お局の顔色を伺って行動しなければならず、

チームの生産性を落とす結果となるのです。


もちろん、お局は一部であり、

長く働いて優秀な管理職に

なっている人もたくさんいます。


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「看護師の能力は、臨床経験年数で決まる?」

そんなバカな話はありません。


看護師の能力は、

経験年数という「時間の量」ではなくて、

「どのくらい密度の濃い時間を過ごしてきたか」

という「時間の質」で決まるのです。


適当に看護してきた5年目の看護師よりも

毎日必死に勉強してきた3年目の看護師の方が

能力的に優れているのは、

誰もが同意することでしょう。


毎日の仕事をノートで振り返り、

しっかりと勉強を積み重ねていけば、

たった1年という時間でも

他の人の2-3年分に相当する

濃密な時間となり、

能力が早く向上していくのです。


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看護の世界は

「看護師は、みな同じ」

という概念が非常に強く、

みな同じ程度の人材なのだから、

「臨床経験が1年でも長い方が仕事ができる」

という全くエビデンスのない、

時代遅れの評価システムが採用されています。


自分自身も仕事の場で、

看護部長クラスから

「あなた偉そうなこと言うけど、

 臨床経験何年なの?」

という質問を毎回のように受けます。


看護界の上層部は、

まだまだ昭和のままだし、

上層部に都合の良い

「(経験年数的)年功序列」を

この時代に守り抜いているのは、

看護界だけではないか、

とさえ思えてきます。


年功序列と同時に、

デキル人をたたく風習が残っているのも

日本の看護文化のひとつでしょう。


患者の多様性を大切にしようと言いつつ、

デキル看護師、他と違う看護師を認めないで、

排他してしまう矛盾に

看護界は早く気付かないといけません。


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クリニカルラダーという

臨床教育制度がありますが、

これも経験年数毎にラダーが分かれており、

デキル人も我慢して、

他の人と歩調を合わせて

キャリアアップすることを

強いられる仕組みになっています。


このラダー制度によって、

能力があっても、

経験年数が長い人よりは

先には進めないという

暗黙のガラスの天井が

作られているのです。


いつも声を大にして言っていることは

「デキル人をさらに伸ばす評価制度」

が必要であるということです。


デキル人をしっかりと評価して、

経験年数が少なくても実力が伴えば、

早めに次のキャリアアップの機会を与えたり、

管理職に昇格させたりすることが必要なのです。


ビジネスの基本は、

デキル人をしっかりと評価し昇格させて、

チームとしての生産性を高めることです。


プロの仕事に「甘え」が入る余地はないので、

年数や役職に関係なく

「成果」によって評価しなければなりません。


むしろ、デキル人を伸ばしていかないと

看護全体としての発展がなく、

今後看護の存在自体が脅かされてくるでしょう。


もちろん、

平均的な人材や仕事のできない人材の

底上げも必要であり、

それを否定している訳ではありません。


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特に、看護師の給料制度は

本当にカイゼンの余地があるでしょう。


現行の看護の給料制度は、

個人の生産性はまったく評価されずに、

がんばってる人もテキトーな人も

経験年数が同じであれば、

給料はほぼ同じで、

経験が長くなれば、少しあがるだけです。


テキトーに仕事してても

給料が変わらないであれば、

努力した人がバカを見るカタチとなり、

みなテキトーに仕事しようと考え、

仕事の質は落ちていく一方だし、

キャリアアップする意思をもつ人も

かなり少なくなるでしょう。


普通のビジネスでは考えられない構造です。


認定になっても、大学院を出ても

給料があがらない評価システムのことを

ビジネス界で話すと大声で笑われます。


「それはマネジメントセンスがない」と。


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少し前に、

保育士の給料評価に関わる機会があり、

経験年数と成果を比較すると、

3-5年目前後が一番成果を上げており、

10年目前後で成果が

ガクッと落ちることがわかりました。


しかし、年功序列上、

給料は10年目の方が良いという実態でした。


そこで、

給料を経験年数評価から成果評価へと変えて

何によって評価するかを明示して、

努力と給料が見合うような評価制度へ変えると

みなのモチベーションがあがり、

チームとしての生産性が劇的に向上しました。


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最近は、病院・在宅・企業、

いろいろな方向から

看護師の質のバラツキが大きいので、

「看護師個人の能力の評価制度」

を作ってくれという要望が

多々寄せられています。


すなわち、

英語検定みたいにテストをして

# 呼吸器管理できる     → 4級

# 包括的な栄養管理ができる → 3級

という制度のことです。


個人的には、

「それはぼくがやる仕事ではなくて、

 看護協会がやる仕事です。」

と言って断っていますが、

将来的には、長期的な意味では、

看護師の能力が個人で評価されるのは

避けられない流れだと思います。


採用する方としては、

そういう評価があった方が

看護師個人の能力を

簡単に把握することができるし、

それに見合って、

正当に給料を出すことも可能となるからです。


「競争や人材の評価なんておかしい」

という看護の人は多いですが、

それは甘えであり、

プロの仕事は常に競争であり、

個人の人材評価が不可欠です。


みんな仲良く、

みんな一緒では

ビジネスでは通用しないのです。


看護も

ビジネスのひとつであることを

忘れてはいけません。


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看護も教育背景が多様化して、

また個人の向上心に依存する臨床教育も多く、

看護師個人の能力のバラツキが

本当に大きくなってきました。


ここらで、看護界全体で、

「質の高い看護師の能力とは何か」

をしっかりと議論して、

そのコンピテンシー(能力)を

明確に項目化し公表して、

評価の軸をしっかり立てる

必要があると思います。


おそらく

年功序列」評価が続く限り、

デキル人材は臨床から、日本から

どんどん去っていくし、

看護の質が向上せずに、

市民に害を及ぼす結果になるでしょう。


一刻も早く

デキル人材=がんばっている人材

が正当に評価され、

正当な給料をもらえる評価制度を

看護全体で採用することを求めます。


F**KIN' OLD SYSTEM

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