NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

Intensive Care Nursing Review No,1

海外にいると日本の本のことが

なかなか書けないので、引き続きオススメ本の紹介です。


海外と日本の臨床の大きな違いは

CNSやNPなどの上級実践看護師(Advanced Practice Nurse)が

病院や病棟を自然とリードしていて、

論文片手に呼吸器を調整したみたり、

論文の要約を使ってスタッフに教育してみたり、

「常に臨床に論文がある」

ということです。


もちろん、あまりデキナイAPNもいますが(笑)


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最近の流行は、自分も含めて、みなipad miniを持ち歩き

ひたすらPDFで論文と専門書を詰め込んで

現場でわからないことがあれば

その場ですぐ調べ尽くして、迅速にケアに生かすことです。


現場で参照する専門書は

・ベイツ診察法

・解剖学書(自分はグレイ)

・ワシントンマニュアル

などの基本的な本をよく見かけて

Amazon電子書籍として買って

kindleアプリで管理している人が99%です。


「マイナーな神経の身体所見がとりたいな。」

ipad → ベイツ診察法 → あ、そうだった!


電解質でMg低いけど、鑑別診断は?」

ipad → ワシントンマニュアル → あ、これか!


「この管理ってエビデンスあるの?」

ipadpubmed → paper

 → download→ reading → discussion → care!

(しかも、この間なんと10分くらい!)


appleのおかげで、その場でエビデンスを調べて

5分後には、そのケアできるハイテクな時代になりました。


おかげでよくi padがフリーズします(笑)


それくらい

「常に臨床に論文がある」

時代になってきました。


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学生時代にクラッた(衝撃を受けた)のが、

かの有名な「ICU Book」で、

この「臨床に論文がある」ことをリードした本だと思います。


最近新しい4版が出ました。ぼくは、まだ未読です。

去年海外では、みなすごい勢いでdownloadしてましたが(笑)


日本語訳はこちら。ひとつ前の3版の訳です。

院生時代は本当に高く感じて、借金して買いました(笑)

ICUブック 第3版

ICUブック 第3版


こうやって論文を比較して、

ひとつひとつのケアを本当の意味で

Evidence Basedに行って行くのかと初めて知り、

引用論文の多さと緻密さに圧倒されました。


実際は、偏った論文を集めているので、

内容は間違えも多く、信頼できないものも含みますが、

あの世界観は臨床に多大な影響を与えました。


急性期の上級実践看護師は、必読の必読だと思います。

この内容の議論だけで、一晩いいお酒が飲めますよ(笑)


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急性期のエビデンスの移り変わりが早く

3年くらいでがらっと変わってしまうこともあり、

ICU Bookの内容でも、もはや不十分で

「看護の視点」からEvidence Basedに議論しているものは

英語のものと言えども、なかなかありませんでした。


その中で、十分な英語論文引用数で、

もう一度ケアを再考しようと果敢に挑んでいる雑誌が

知らぬ間に日本で刊行されて、うれしく感じました。


それが学研から出版されている

Intensive Care Nursing Reviewです。


おいしい内容だらけで、クリティカルケア従事者は

間違えなく買いです!!


最近、やたら急性期の本が乱立しており、

どれも似たり寄ったりで、かなり萎えていました。


一番ショックだったのは、各本の各章をチェックすると

引用文献がすべて日本語のもので、しかもレビューだったことです!

(認定看護師、もう少しがんばりましょう!)


ただ、この本はそんなことはなく、

しっかりと十分な英語論文引用数で

完全に「レベルの違い」を見せつけいます。


これでもだいぶ読者層に配慮して

優しく記述しているなとその苦労が伝わってきました。


INTENSIVISTみたいに、がっつり行ってほしい気もしますが、

ビジネスも考えて、ギリギリのラインついていますね(笑)


こんな本が普通に売れて、普通に読まれる

看護界になってくれれば、これ以上にうれしいことはありません。


「無駄な本に惑わされず、良本を時間をかけて読むこと。」

これが最良の時間の使い方であり、勉強法です。


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内容としては、

・A-lineとNIBPの血圧測定では、どこに差があるのか?

・抑制が日常であるICUは監獄なのか?

が非常に秀逸で、引き込まれてしまいました。


ICUでは、「A(動脈圧ライン)」と「N(非観血的血圧測定)」で

血圧測定値が異なることが多々あり、

「どうするよ?」と身体所見をとっても、

やはり目に見える数値のインパクトは強く

臨床判断や介入を大きく左右する因子となります。


看護師として、そのエビデンスが知りたいけど、

今までなかなか知る機会がなかった内容でしょう。


ICUの抑制と鎮静に関しても

Evidenceだけでなく看護の質や倫理として

日本で行われている前提に疑問を投げかけてくれて

非常に本質的な議論だと思いました。


Poorな(質の悪い)ICUほど、

・何も考えずに抑制     !?

・動くとすぐに鎮静を早送り !??

・鎮静しても鎮痛なし    !???

という状況があるのは事実です。


別の言い方をすれば

すぐに抑制する看護師は、その自分の行為によって

看護師としての自分の能力がないことを

周囲に宣言しているようなものです。


ただ、他の看護師からの圧力や

管を抜かれた場合に自分で入れられないシステムなど

日本独自の文化がそうさせていることも事実です。


早く日本の医療システムが

患者中心の議論になることを願っています。


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ちなみに編者である卯野木先生は、本当に尊敬する存在で、

「看護の世界に、こんな半端ないレベルの人がいるんだ。」

と自分の中でブレイクスルーになったし、

領域は違いますが、その存在から

「とことんチャレンジしよう」という勇気をもらいました。


またこの雑誌の著者である

櫻本先生は大学院時代の同級生ですが、

同じ世代であるし、同業者として一番クラッた人物で、

よきライバルであり心から尊敬できる人です。


またもや買った本はあげてしまって、

どこかに行ってしまいましたが、

この雑誌は、投資業界用語でいうと" STRONG BUY "です!


次回号も楽しみにしています。

また出版ビジネスとしてもうまく行くことを願っています。


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