NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

上級実践のための10ヶ条(1)

研究の会議や管理で、近くの救急病院に行くと

知り合いのNPがいるので、よく立ち話をして、

臨床の様々なコツ(Tips)を議論しています。

 

救急のNPは、救急外来のWalk in部門である

Urgent Care(準緊急)を担当することが多いので、

歩いてきた隠れ重症患者に関する話が多いです。

 

ちなみに、患者は、救急外来のWalk inに入る前に、

日本の空港よりも厳重なセキュリティーチェックがあり、

レントゲンによる身体チェックと荷物チェックがあります。

 

ハワイは少ないけど、銃持ってくる人もいるので。ワオ。

 

直接の面識はないですが、

ハワイのプライマリークリニックや母子保健病院では、

日本人NPも活躍しています。

 

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今回は専門看護師、診療看護師、大学院卒看護師などの

「上級実践看護師(Advanced Nurse Practitioner;ANP)」

が、どのように臨床で働くべきかを自分の臨床を基にして、

具体的な方針を示していきたいと思います。

 

自分は枠がなく、自由に臨床やっていたので、

アメリカ帰りの医者たちに、

「Yuitoは、日本の医者やアメリカのNP

 を超えて、もはや別の生き物だな。」

と言われていました(笑)

 

自由に何でもやらせてくれた医師と環境に感謝です。

 

衝撃的な内容なので、

何かしら刺激を受けて頂けると幸いです。

 

早く、おれを超えてくれ!!

 

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「上級実践のための10ヶ条」

 

1)医師と対等に議論する姿勢

 

まずは、医師と全く対等であるという強い信念、

そして、引けを取らずに対等に議論する姿勢が必要です。

 

自分としては、幸いにも

# 大学院も含め医師と同じ6年教育だったこと

# チーム医療が軸のアメリカ式看護教育を受けたこと

# 帰国子女だし、アフリカにも1年いたこと

という環境に恵まれ、医師と完全に対等だと信じていました。

 

英語の論文と教科書読みまくったし、若かったので、

「なんなら、おれの方が、Evicend Based Practiceだぜー」

と思っていました(笑)ま、実際そうでしたが。

 

特に、公衆衛生が専門だったこともあり、

医師と看護師の行為を明確に分ける必要はなく、

医師がやっても、看護師がやっても良いという考えでした。

 

救急が専門というのもあり、

画像も読んで、エコーもやって、鑑別診断もあげることは

看護師にも完全に必要だと思っていたし、実際に必要でした。

 

大学院の先輩や同級生が、

医者のレベルを超えていたことの影響も大きいですね。

 

英語論文を片手に、ケアしていたのは衝撃的でした。

 

従って、上級実践で一番大切なのは、

医師と対等だという信念で、

自分から積極的に議論することです。

 

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2)包括的なHistory Taking

 

いわゆる問診ですね。医療の原点です。

 

救急車が来たら、バイタルを取りながら、

医師と一緒に、必要だと思う内容を

積極的に患者さんに問診していました。

 

まずは、医学的な問診が一番大切です。

 

時系列に今回のon setまでの現病歴と聞き、

さらに既往歴や内服、アレルギーなどと展開していました。

 

医師と問診内容はかぶらないようにしつつ、

鑑別診断をあげて、さらに必要な情報を聞き取り、

医師と鑑別診断や検査の議論していましたね。

 

時系列に情報をまとめつつ、

患者さんに自由に語らせると、

キーとなる情報が後から出てくる出てくる。

 

医療者は、自分がほしい情報だけ取る

押し付け問診になりがちですよね。

 

自由な救急医のもとに育ったので、

ユイトが言うなら、この検査も追加するよ。」

と、意見を取り上げてくれたのは、うれしかったです。

 

論理的に説明したし、いつも英語論文読んでたら、

信頼がかなり高かったのでしょう。

 

ユイトは、間違えたこと言わない」

と研修医から尊敬されていたのも、うれしかったです。

 

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次に、看護的な視点での問診も必要です。

 

入院となったり、手術などの意思決定となると

やはり家族構成やADL・認知度などの日常生活、

意思決定者などの看護の視点の情報が必要となり、

包括的に問診していました。

 

病気以外の問題も多いので、

ソーシャルワーカー生活保護の相談したり、

市町村の高齢者虐待につなげたりしていました。

 

医療事務と福祉の人たちが「神」でしたね。

 

社会資源につなげるのも、看護の仕事です。

 

医学的な問診と看護的な問診を統合するために、

自分でオリジナルの問診リストを作って、

それを軸に聞き取り、紙に情報を書いていました。

 

この包括的な問診は上級実践において必須で、

アメリカ人NPもみんな自分で進化させた

オリジナル問診チャートをそれぞれ持っています。

 

そして、それをフィジカルと統合させます。

 

電子カルテにある全く意味にない

ゴードン分類の入院時アナムネよりも

自分の好きなように問診を進化させることが大切です。

 

なぜ、あれは無くならないのかー。

診療報酬の規定かな。ま、疑問です。

 

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3)徹底的なPhysical Exermination

 

身体所見は、本当にしっかりと

時間見つけてやった方が良いです。

 

Physical Exerminationは、

大学院の必修科目で、アメリカ人NPから学んで、

初めて体系的な見方や重要性を知りました。

 

今思うと、尊敬する天才の桜本君(桜本先生)と

男2人でパンツ一丁になりながら、

アメリカ人NPの指導のもとPhysical Exerminationを

ひとつひとつ練習していましたね。

 

呼吸器と腹部、神経所見の取り方を完璧にしたのに、

テストのお題が、まさかの「耳鏡」で、

ギリギリ合格したのを覚えています(笑)

 

おかげで救急で、

耳鏡も眼底鏡も使えるようになりました。

 

常にナースステーションには、

ベイツの教科書と解剖学の教科書を置き、

検査後などの空いた時間に

担当する患者のフィジカルを取っていました。

 

どんどん、症例をみて経験を増やすことです。

勉強とばかりに、徹底的にフィジカルとっていました。

 

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他の看護師の受け持ちで肺炎の患者がいれば、

画像を見て、フィジカルと照らし合わせて、

身体所見と診断の組み合わせを蓄積していました。

 

小さい肺炎だと聴診音はあまり変わらないけど、

打診で響きが違うし、やっぱり口腔内が乾くね、

と診断からフィジカルの経験をつんでいました。

 

すると、そのうち、経験が蓄積されて

フィジカルから診断へとつながります。

 

検査する前にフィジカルで予想して、

検査でやっぱりね、いうことになります。

 

ベテランのおばあちゃん看護師が、

救急患者の瞳孔と神経症状を診て、

「右被殻の出血だね」とさらっと言って、

頭部CTで被殻出血だった時は、

フィジカルのArtを感じたものです。

 

研修医と一緒に弟子入りしました(笑)

 

あとは、正常のフィジカルが意外と大切で、

後輩には、勤務終わった後に、ベイツ開かせて、

自分の体を使ってフィジカルとらせてました。

 

正常がわかれば、「これ正常と違うな。異常だな。」

と、シンプルに考れるので、そこから展開できます。

 

History Taking & Physical Exermination

は、医療と看護における一番の本質なので、

忙しいのはわかるけど、再考してみて下さい。

 

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4)体系的なカルテを書く

 

これは一番自信のある内容ですね。

 

「書けないのは、考えていなのと同じ」

と自分で考えていたので、

構造的にひたすらカルテを書いていました。

 

上級実践では、体系的にカルテを書いて

カルテ上で具体的な介入プランを

明確にすることが求められます。

 

ベースは、自分オリジナルの問診チャートで

それに合わせて電子カルテで自分のテンプレート作って、

モレなく、かつ早く打てるようにしていました。

 

だって、S情報を少し、O情報をちょろっ、

何時に採血・点滴した、っていう記録じゃ

中学生だって書けるでしょ(笑)

 

救急の場合は、こんなフレームワークでした。

 

<60歳、男性、パチンコ中の突然の胸背部痛>

# 現状歴(経時記録)

# 既往歴(診断、時期、治療)

# 内服薬

# アレルギー

 

# S情報(症状の語り、本人の病識と治療への希望)

# O情報(ROS、フィジカル、画像所見、検査所見)

# 社会的基礎情報(家族、仕事、意思決定)

 

# Procedure(何時に何した)

 

# プロブレムリスト

# 介入方針

 

と医師のカルテを超える、A4で1枚以上の情報を

忙しい中、バーっと書いていましたね。

 

15項目くらいありましたかね。

参照すべき英語論文を添付したこともあります(笑)

 

救急外来は忙しく、ちゃんと書かない医者もいて、

入院時に病棟が困っていたので、それで詳しく書くようになり、

朝の医局カンファで興味深い症例を発表していたので、

さらっと発表できるようにフォーマットとして進化しました。

 

他の看護師には、医者じゃないんだから

そんなに書かなくていいじゃん、と言われましたが、

これが本当に専門的な看護だぜー、とガン無視して、

自分の頭の整理のために、ひたすら書いていましたね。

 

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特に、プロブレムリストを

医学的・看護的な視点の両方からあげて、

さらに包括的的な介入プランまで書いていました。

 

たとえば、

# 血圧管理(大動脈解離B型、保存療法)

ガイドラインによると血圧いくつに管理する

 

# せん妄高リスク状態(年齢、血圧)

血圧低く管理するとせん妄リスクなので、いつ評価する

 

# 経済的自立支援

パチンコで金銭的に厳しいいのでソーシャルワーカーコンサル

 

など、少しでも病棟を楽にしたかったし、

なんせ自分の頭の体操で考える癖をつけていました。

 

どう介入すべきか、という

「問題解決能力」は、

みんな持っているので、

上級実践として全体像を示した上で、

何が問題なのかを見つける

「問題発見能力」に焦点を絞って、

プロブレムリストを作っていました。

 

うれしかったのは、

救急外来が入院が必要だと思われる診療科にコンサルし

入院管理する医師たちが、救急外来に降りてくるのですが、

その際に、医師のカルテではなく、自分のカルテを印刷して、

そのカルテを持参して、その情報を基に救急医と議論したり

患者を診察して、入院方針を決定していたことです。

 

一番うれしかったのは、

入院管理するアメリカ帰りの内科医達からは、

History Taking & Physical Exerminationがあるし、

生活情報や家族情報、プロブレムリストもあって、

「本当にユイトのカルテが助かるよ」

「アメリカのNPでも、これは見たことない」

「研修医、こういうカルテを書きなさい!」

と「神カルテ」と認定されたことですね。

 

自分としては、

上級実践とあたりまえのレベルでしたが。

 

あとは、英語でジャーナルに

症例報告の論文を出そうと思っていたので、

それもあって、丁寧に書いていました。

 

ICUでもアメリカ式に

循環、呼吸、代謝など機能別に項目を作り、

プロブレムと介入を書いていました。

 

包括的なカルテを書けない上級実践看護師は、

何も考えていないのと同じです。

 

上級実践が医師と対等だと思うならば、

看護記録という概念は忘れて、

医師以上のカルテを書くべきです。

 

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5)朝のカンファに参加する

 

ほとんどの病院で、朝の医局カンファがあるし

研修医がいる病院では、

朝に症例検討会をやることが多いと思います。

 

上級実践看護師は、

必ず医師カンファに参加すべきです!

 

そして、どんどん症例発表して、

また議論して信頼関係を深めるべきです。

 

初めて参加したのは、

上司の救急医と話している時に、

たまたま医局の朝のカンファの話になり、

論文とか症例をやっているよー、とのことで

自分も勉強のために参加したい

と言ったのがキッカケです。

 

最終的には、がっつり症例発表や

医師向けにレクチャーやっていましたが(笑)

 

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はじめは、日勤の前、7時前くらいに医局に行って、

一番後ろに座って、楽しそうに聞いていました。

 

すると、だんだん存在が認知されて、

看護部とか論文の話になるので、

ユイト、どう思う?」みたいな感じで質問され、

こちらも看護師として、

「この症例、どう管理したらいいの?」

 と議論することで、

医局でユイトは味方だと思われるようになり、

かなり信頼性関係が構築されました。

 

すると、ICU勤務の日とか、

「呼吸器離脱は、ユイトに任せる」

みたいなオーダーで、

上級実践の権限拡大につながりました。

 

自分だけ、手技いろいろできる

特別区みたいなカタチでした(笑)

 

そこでは、大学院修了で

修士の学歴は必須でしたね。

 

また有名な医学雑誌である

"New England Journal of Medicine"

"Lancet", "JAMA"が自分にとって、

少年ジャンプとともに

毎週読むべきものとなっており、

それが医局にあったので、

かなり頻繁に医局に出入りしていました。

 

日勤終了後に、勝手に医局のソファーで、

ごろーと足を放り出して、医学雑誌を読む(笑)

 

すると、医師が集まってきて、

「おもしろい論文あった?来週発表なんだよねー」

と聞いてくるので、

「じゃ、教えるから、今からビールおごってよ。」

と論文コピーして、解釈少し教えて、

飲みに連れて行ってもらっていました。

 

いい青春の思い出で、

医師と看護師を超えた弟分的な関係でしたね。

 

すると性格上、

「俺は研修医よりも、うまく症例発表できる!」

との思いを止めることができずに、

発表ローテーションに組み込んでもらい、

月に数回、症例や論文を発表していましたね。

 

最終的には、論文の読み方を教えて

研修医に学会発表させるカリキュラムを作りました。

 

研修医に統計や研究デザインを定期的に教え始め、

最終的には上級医たちが興奮してくれて、

内科部長が一番前に座り、後ろでは循環器部長が

熱心に自分のレクチャーをビデオで撮っている

なんともやりずらい(笑)伝説のレクチャーとなりました。

 

自分を自由に受け入れてくれた職場に感謝です。

看護部は無視しました(笑)

 

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また別の職場では、

アメリカ帰りの医師から参加しろと言われたので

朝の研修医会議に参加して、研修医の発表する症例に

上級医と一緒に鑑別診断をあげたり、

看護的な視点で栄養管理の戦略を指摘しました。

 

一番多かったのが、Evidenceに関することでした。

ちなみに、議論はすべて英語でした。

 

ユイト、肺炎球菌性髄膜炎に対して

 最初の抗生剤を落とす前にステロイド入れると

 神経予後良くなるという論文あるけど、

 どう解釈する?臨床に使った方がいい?」

 

「あれは、HIVで免疫落ちた人が対象だから、

 一般化はできないと思うね。

 けど、効果がないと否定はできないから、

 副作用も少ないし、やってもいいのかな。」

 

「じゃ、採用!救急のボスに伝えといて。」

 

 (お互いに、あの論文で通じるは相当マニアです)

 

 という流れでした。

 

従って、これを読んでいる

上級実践看護師がいるなら、

今週中に医局カンファに参加して下さい。

 

そして、

数ヶ月後には研修医を超えるレベルで

症例発表や論文発表をすること。

 

医者の許可がうんぬんと

言っているヒマがあるなら、

医局に自分から出入りして

自分で信頼関係を構築して、

医局の一員と認知されて

医局の中からシステムを変えなさい。

 

思っている以上に医師は味方です。

ぜひぜひ実力を見せてつけてやって下さい。

 

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思った以上に興奮して、

長い文章になってしまいました。

 

データが重くて申し訳ないです。

後半は、また後日。

 

無性に臨床に戻りたくなりましたー。

 

今の上級実践看護師の一番つらいのが

システムやモデルがないので、

自分で積極的にそれを

作らないといけないことです。

 

法律や看護部、病院システムが

うまく機能していないから、

上級実践がうまくできない?

 

それは自分の実力がないだけです。

 

だって、システムを再編するのも

上級実践の実力のうちでしょ?

 

この働き方は想像を超えていたでしょうか?

実力で早く、このレベルを超えて下さい。

 

自分も、ここまで来れたんだから、

上級実践看護師はもっともっと、できるはず。

 

期待しております。

 

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