NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

女性の働き方

最近「女性の働き方」が

大きな話題となっています。


先日、安部首相は国連にて

「女性の活躍」について講演したし、

Facebook COOのSheryl Sandbergが

女性のキャリアについて書いた本

「LEAN IN(一歩前へ)」が売れに売れています。


国際保健において日本は

女性が結婚・出産・育児などのライフイベントによって

仕事を辞めてしまう国として有名です。


視点を変えれば、

夫の稼ぎだけで家族が食べていけるだけの

経済力が日本に「あった(過去形)」

ということですが。


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平成23年の人口動態調査によると、

日本人女性の平均初産は29.9才であり、

(今年のデータでは30才に突入する予定)

世間のイメージよりかなり初産が遅い

という事実がわかります。


結婚関連の業者とYUITOが行った

看護師を含む首都圏で働く

キャリアを積む女性を対象とした解析では、

・30才で婚活

・32才で結婚

・33才で第一子出産

・36才で第二子出産

という平均的なモデルが抽出されています。


看護師などの

女性がキャリアを積む必要がある仕事の場合、

30才前後までは男性と同じように

「仕事のスキルアップ」が生活の中心となるのでしょう。


看護師は生涯にわたって働ける仕事なので、

キャリア初期の基礎形成が大切だと感じており、

それが行動として表れているのだと考えています。


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日本の女性の労働環境はまだまだですが、

ここ数年で以前よりはカイゼンされ、

合計特殊出生率は1.39まで上昇しています。

(15-49才のひとりの女性が生涯に産む平均こども数)


韓国に呼ばれた際も

看護女子大学生からは

「看護師としての専門職キャリア」と

「結婚・出産を中心とした女性としてのライフ」を

日本ではどう両立しているのか

質問されまくった覚えがあります。

(男の自分に聞いてどうすんだ!と思いましたが。

 きっと日本の状況を知りたかったのでしょう。)


女性の労働環境について考えたのは、

今年の3月始めにドバイの本屋で

「LEAN IN」が山積みになっており、

それを何気なく手にとって

英語版で読んだのが最初でした。


Lean In: Women, Work, and the Will to Lead

Lean In: Women, Work, and the Will to Lead


上級職につくキャリア女性に関する

働き方と女性の幸せを両立するポイントが

興味深いストーリーとしてまとまっており、

けっしてフェミニスト本ではなく、

看護師と女性の生活の両立に悩んでいる人、

女性キャリアを考えたい人にオススメです。


ぼく自身のキャリア形成についても考える機会となり、

男性にこそ読んで欲しい本です。


日本語版は

買ってはすぐ人にあげて、現在は5冊目です。



韓国での議論とこの本の内容をもとに、

まったく個人的に考えた

「女性看護師のキャリア」

について記述したいと思います。


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1) カンペキを捨てる


「男性はこどものおむつ交換をするだけで

 良い父としてほめられるのに、

 女性は仕事で保育園のお迎えに遅れるだけで

 できない母として自己嫌悪に陥る。」


女性に対する社会的な圧力は

非常に大きなものがあり、

仕事も母親もカンペキにこなすことが

あたりまえに要求されてしまいます。


男性が非常に強い力をもっている韓国では

さらに女性への文化的な圧力が強く、

「育児できないなら仕事をやめろ!!」

と夫側の家族から直接言われるらしく、

看護大学生は働く前から不安いっぱいでした。

(韓国のこどもへの教育熱は異常です。)


きっと

「キャリアも家庭もカンペキでなくていい」

と思うことが、

幸せな女性キャリアのスタートなんだと思います。


仕事も家庭もカンペキにこなす

「スーパーママ神話」にのっかってしまうから

仕事と家庭を二項対立にしてしまい、

「仕事か?家庭か?」で悩んで

答えの出ない命題に捕らわれて

動きづらくなってしまうのでしょう。


仕事も結婚も出産も

キャリアをイメージすることは大切ですが、

実際そうはうまくいかないでしょう?


仕事も結婚も出産も

イベントが起こってから考えて、

ある程度手を抜いて

「仕事も家庭もとっていくキャリア」

がこれからのスタンダードになると思います。


LEAN INでも

「キャリアは、はしごでなくて、ジャングルジム」

あがって、さがって、まわって、

スピードは遅いけど、いろんな景色を見れて、

気がつけば、キャリアとしても高いところにいて、

結果的に「幸せ」にも満ちているんだと述べています。


まずは「カンペキを捨てましょう!」


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2) メンターをもつ


看護の場合は昔から女性の職場だけあって、

今の50-60代の女性看護職が

行ってきた仕事と家庭の両立は

ものすごいエピソードに満ちあふれています。


「休日もこどもをつれて大学に来て、

 研究室で勝手に遊んでもらって、

 その隙に論文書いたのよ。」


「夜勤の時はこどもにバナナを持たせて、

 夫の会社の受付にこどもを置いて、

 ゴメンと言って、走って病院に向かったわ。」


給料は、全部保育園代になったという

ほとんど社会的な支援がない状態で、

よく「看護」を続けてきたなと

本当に本当に尊敬します。


看護界には

「仕事と家庭をうまく両立させてきた人」

がたくさんいると思うので、

自分の身近なそういう人を

「メンター」として活用して、

自分のキャリアを相談することが

一番のキャリア支援になると考えています。


ぼく自身も

・大学時代からの沖縄の女性メンター

・大学院時代からの聖路加の女性メンター

・海外で活躍する外人の男性看護師メンター

・まったく同じ領域の男性疫学者メンター

など、たくさんのメンターがいます。


写真と手書きの手紙を送って近所を報告し、

年に1-2回あって、今の状況と今後のイメージを

せきららに話して、アドバイスを求めます。


バイくらいダメだしをされるときもあるし、

そこ褒めますか?みたいな謎の展開もあります。


それぞれ全く違うことを言うので、

半分くらいしか言われたことを採用しませんが、

「客観的にみてもらう」

ことは何にも代えがたいことだと思います。


「キャリアも人生もマラソン」であり、

常にアドバイスしてくれるコーチが不可欠です。


有名な人にメンターを頼むよりも、

身近にいる自分を理解してくれる人に

頼むのが一番だと思います。


メンターたちは、

「おまえの将来に期待してるんだよ!」

とお金もとらずに快く相談に乗ってくれて、

ごはんもおごるはずがおごられ、

いつも手紙を楽しみにしてくれています。


女性の場合も

家庭のことも含めて相談できる

同じ環境を通った身近な女性看護師を

メンターにして定期的にアドバイスをもらうと

キャリアもかなり楽になると思います。


韓国は女子同士のメンター制度はかなり定着しており、

アメリカ留学したいからアメリカに留学した先輩を、

家庭を楽しみたいから家庭をやりくしている教授を

それぞれメンターとして活用させていました。


すなおに、

「キャリアで相談したいのですが」

と話すことがスタートだと思います。



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3) 本音のコミュニケーション


最後は

「素直に伝えて、かかえこまない」

ことが大切だと思います。


日本にいて不思議なのは、

こどもが熱を出して、仕事も休むときも

「本当に本当にすいません」

みたいに謝れることが多いことです。


こどもが熱をだして休むのは、

母親看護師として当然の権利なので、

そんなに謝る必要はないと思います。


産休も育休も当然の権利なので、

もっと堂々ととるべきだと思います。


「なんで休むの?」

「他のスタッフに迷惑がかかるでしょ?」

と文句をいう師長や部長がいたら

(日本にはたくさんいるらしいですね。)

こっそり教えて下さい!


「マネジャーの仕事は

 スタッフを幸せにすることが仕事だろ。

 文句を言うくらいならお見舞い持って行け!」


「母親としてがんばっているんだ。

 他のスタッフが心地よくカバーできる

 環境を作るのが管理者の仕事だろ!」


と、そいつをハッ倒しに行きます!!


経営的に言えば、女性を雇用する際は、

「結婚、妊娠、出産、育児」

を前提として雇っているので、

産休や育休、結婚休暇、軽いシフトなどは

当然の権利なので、

文句を言われる筋合いはないと思います。


なので、ライフイベントについても

普通にマネジャーに報告すればいいし、

「仕事と育児の両立が、最近しんどいですよね。」

と本音のコミュニケーションで

現状を上司に素直に伝えることが

働きやすい環境を作るコツだと思います。


また自分たちの世代では

夫が育児することももはや普通ですが、

パートナーである夫とも本音のコミュニケーションで、

LEAN IN曰わく、

「パートナーを教育する」ことも重要でしょう。


仕事先でも家庭でも

本音のコミュニケーションで現状を伝えて、

資源を利用することも当然の権利なのです。


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女性看護師からキャリアを相談されることも多くなり、

自分が考えるポイントを3つ書いてみました。


勝手な意見ですが、

少し参考になれば幸いです。


賛否両論はありますが、

女性のキャリアに興味があれば、

ひとつの意見として

「LEAN IN」も読んでみて下さい。


よく女子大学の講義で言っていますが、

「女性で看護師であること」

は本当にすばらしいことだと思います。


自分なんて、

紛争地に行ってもリゾートでも

せっけんで全身を洗い、

美容アイテムは

「ひげそり」だけで生きています。


けど、

女性は化粧を含めオシャレできるし、

服装も雰囲気も華やかだし、

こどもも生めるって、

しかも男性と同じように

看護師として立派にキャリアを積めるなんて

どんだけ選択肢広くて人生楽しめるの!!

マジで素晴らしいことだらけじゃん!

としか言えません。


野郎の自分なんて

一生仕事しか選択肢がないわけですから。


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最近、友人のCA(客室乗務員)が、

「私たちは年収300万と少しだし、非正規雇用なの。

 だから、みんなCAというブランドと若さがあるうちに

 合コンに行きまくって、結婚相手を必死に探すの。

 じゃないと、私たちの未来がなくなっちゃう。」

と言っていました。


一方、友人の看護師は

「看護師って給料も悪くないし、

 結婚相手も選びすぎちゃうんだよね。

 やっぱり自分より年収が高い人がいいとか。

 けど、ひとりでも余裕で生きていけるしな。」

(看護師の年収を超える男性は約30%もいませんよ!)

と逆のことを言っていました。


某雑誌で

男性が結婚したい女性ランキングにおいて

CAを抜き去り、看護師が1位となった今、

(おそらく経済的な背景によるもの?)

女性看護師の時代にとなり

女性看護師のキャリアも

しだいに確立されていくことを期待します。


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