NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

災害時の健康情報管理

現在、福島の原発からの放射線

野菜や水道水に付着し、

各テレビや新聞でも

「危険ですので、飲まない方が良い。」

「厳密な指標なので、摂取制限は必要ない。」

などと、様々な健康情報が飛び交い

自分も含め、一般の人は非常に困惑している。


本来なら健康情報を誰かがしっかりと

わかりやすいように伝えることが必要である。


海外では、この役割を

”Health communicator” と言い、

主に看護師がその役割を担っていることが多い。


日本語訳でなんと言うのかはわからないが、

「健康に関する情報をわかりやすく

 正確に一般の人や世間に伝える役割である。」


WHOの各事務所にも基本的にこの役割の人が配置され、

ほとんどの人が看護師で ”Health communication” の

修士課程を修了している。


最近だと世界中がパニックになった

豚インフルエンザ」に関する声明やメディア対応で

世間にEvidenceをわかりやすく伝え、

なおかつ冷静に対処する方法を教え、

その存在が非常に評価された職業です。


YUITOもCDCのインターン

「アフリカのある地域で、

 HIV罹患率と宗教が関連している可能性がある。」

という研究結果が出たときに、

「確かにEvidenceにはなりそうだけど、

 宗教というと世間に非常に混乱を与えるから

 違う言い方にした方がいいわ。」

とアドバイスをもらったことが印象的でした。


また、豚インフルエンザの時も、

このHealth communicatorが上司の疫学者に

「この感染拡大MAPはEvidenceとして、

 成り立つの?成り立たないの?どっち?

 私は世間に伝える義務があるんだから

 しっかり断言してよね。」

とものすごい剣幕で話していました。


Evidenceをわかりやすく世間に伝えて、

災害時に根拠を持って、冷静になることを伝える

非常に興味深い専門職だと身をもって感じています。


「専門的な内容を一般の人に

 わかりやすく正確に伝える」

という看護の新しい役割そのものが

特化した専門職で同業者として

非常に見習うことがありますしね。


実は、最近のAHA2010のサマリーレポートも

実は看護師がEvidenceをまとめて作ったもので、

Translational study approach とも言えます。


ちなみに、YUITOの研究は

“ It’s DRIP (Data Rich, Information Poor) study ”

(データはたくさんあるが、

 実際に使える情報がほとんどない研究)

と皮肉を言われたりもしました(笑)。


今回も放射線=怖いというだけでなく、

「今はこのくらいの数値で

 Evidence的にこれくらいの確立で

 人体に影響があります。

 こうするとそのリスクが減らせます。

 落ち着いて行動しましょう。」

と論理と感情の両方に配慮した

健康情報を発信する専門職がいると

災害時にでも一般市民が冷静に行動できると思います。


冷静な行動を言われても、

根拠がないと安心できないのは

みんな一緒ですよね。


日本でも早く”Health Communicator”が

世間で活躍することを心待ちにしております。


ちなみに ”Health Communication”に関する書籍はこちら