NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

ハワイから学ぶ健康

マイペースな更新で失礼します。

 

疫学者として中堅になり

プロジェクトマネジメントが多くて

海外出張ばっかりの日々でした。

 

外資系というか、完全に外資なので

成果を出し続けないと生き残れないのです。

 

しかし、

時差ボケがつらい年齢になりました(笑)

 

先週からは仕事も落ち着いて

夕方には友人とサーフィンできる

ハワイの日常生活に戻りました。

 

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そんな中で今回は

「ハワイから学ぶ健康」を取り上げます。

 

自分も仕事で50ヶ国以上行きましたが、

ハワイはやっぱりスペシャルな場所です。

 

透きとおる青い海に、オシャレな街並み、

笑顔で優しい人々に、いのちを感じる独特の雰囲気。

 

なぜかハワイに来ると元気になれるんです。

なぜかハワイに来ると幸せを取り戻せるんです。

 

この命題について

ハワイ大学での研究も交えながら解説します。

 

ハワイの人口は140万人しかいないのに

日本人観光客は年間150万人も来ています。

 

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ハワイに来ると、とても居心地よくて、 

身体的にも精神的にもリフレッシュできて

なんだか自分がとても健康になった気がします。

 

この謎を解くカギは

「ネイティブ・ハワイアンの価値観」にあります。

 

この島独特の環境や文化は、

彼らの価値観から生み出されたものだからです。

 

では、ハワイアンは何に価値を置いて

この環境や文化を継承してきたのでしょうか?

 

それは、4つのつながり

「Connections」であると言います。

 

  • 自分とのつながり=「マナ」
  • 他人とのつながり=「オハナ」
  • 自然とのつながり=「アイナ」
  • 先祖・子孫とのつながり=「クプナ」「ケイキ」

 

ネイティブ・ハワイアンたちは、

この4つの「つながり」をとても重要視しており

ハワイ語でも大切な言葉して扱われています。

 

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そして、不思議なことに、この4つのつながりは

「健康の定義」であると言い伝えられています。

 

これらは、ハワイ大学先住民族研究で

ハワイアンの長老たちに長年のインタビューと

参加観察などの統合的な質的研究をしたところ

どの地域でも「健康の定義」として抽出されたものです。

 

かれらにとっては、

健康とは、この4つの「つながり」であり

ひとつでも欠けると、健康でないと考えます。

 

つまり、ハワイアンにとっては

「健康=つながり」なのです。

 

  • 健康とは、自分とのつながりである。
  • 健康とは、他人とのつながりである。
  • 健康とは、自然とのつながりである。
  • 健康とは、先祖・子孫とのつながりである。

 

とても新鮮な感じがする反面、

日本人にはしっくりくる定義じゃないでしょうか?

 

自分は「なるほど。確かに!」という感覚でした。

 

これらは日本人が大切にしてきたけれど、

現在には失われた大切な価値なのではないか。

 

この島はネイティブ・ハワイアンが考える

4つのつながり(健康)によって成立しており

日本人が失った価値が今でも大切に残っているので

そのせいで日本人はハワイに強い何かを感じるのではないか。

 

最近は、そう考えています。 

 

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  • 自分とのつながり=「マナ」

 

一番大切なのは、

自分自身とつながっていることです、

 

一番つらいことは、

自分と自分の気持ちが

大きく離れてしまうことでしょう。

 

マズロー自己実現というか

自分が自分であるという感覚だと思います。

 

僕自身、先月はあまりにも忙しく

週2でハワイから日本に飛んでいたので

さすがに自分と気持ちが大きく解離しました。

 

疫学者としての成長が鈍化していることに焦り

さらに挑戦や失敗をしていない自分にも苛立ち

自分という感覚がとても曖昧な1ヶ月間でした。

 

身体的・精神的・社会的にはとても健康なのに

自分とうまくつながれていない息苦しい状況でした。

 

ハワイ語には「マナ(魂)」という言葉があり

「魂」そのものよりも「魂とのつながり」を示します。

 

これは一番大切な言葉で、

自分を自分たらしめているもの(ゴースト)という意味です。

 

自分はきっと一時的に、マナを失っていたのでしょう。

みなさんも、そのように感じた時ありませんか?

 

ま、考えるのを諦めて、ゆっくり東京散歩しながら

少年ジャンプを熟読したらマナを取り戻しましたが(笑)

 

何が言いたいかというと、

WHOによる健康の定義では、もはや

ぼくらの健康を定義できないということです。

 

ぼくら医療者は、ある意味洗脳されて

身体的・精神的・社会的に良い状態が健康だと考えています。

 

ただ、ぼくらが健康であるためには

これら以上の「何か」が必要なのです。

 

アメリカで働いている

疫学者が言うからホントです(笑)

 

そのひとつが「自分とのつながり」です。

 

みんな、ハワイに来ると

パワーをチャージできたと言います。

 

それは、忙しい環境から離れることで

自分を見つめ直して「自分とのつながり」を

取り戻したからではないでしょうか?

 

仕事で自分を追い込んで

自分とのつながりを見失わないで下さいね。

 

  • 健康とは、自分とのつながりである。

  

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  • 他人とのつながり=「オハナ」

 

「オハナ」とは「家族」という意味で、

映画「リロ・アンド・スティッチ」で有名になりました。

 

ただし、ハワイアンが考える「オハナ」は

ぼくら日本人が考える「家族」よりも広い概念です。

 

公衆衛生の専門用語では

「Extended Family(拡張された家族)」と呼ばれ

一緒に生活している人や地域全体を示します。

 

親や兄弟、子供などの家族や親戚はもちろん

近所の関わりある人、自分の教え子まで、

「オハナ」と定義して、とても大切にします。

 

自分も、ハワイアンの教授からは

「Yuito, My son」と呼ばれています。

 

ぼくにとってのオハナは

同級生や後輩、友人や教え子ですね。

 

自分のこころ許せる人と

ご飯食べたり、飲んでいる時が最高の時間です。

 

音楽があれば、なお最高ですね。

 

ハワイでは、サーフィンしている時に

波待ちでローカルとの会話が最高に心地良いです。

 

このまま死んでもいいかなとよく思います(笑)

 

それくらい自分にとっては、

他人とのつながりが大切な価値であり

よく生きる、つまり健康における重大な因子です。

 

ネイティブハワイアンは、さらに濃いです。

 

車で1時間も運転してでも

大量の野菜を持って来てくれるし

地域では自分のために祈りを捧げてくれます。

 

これがとても長くて、複雑な儀式なんです(笑)

 

ハワイでは観光客でも

通りすがりに知らない人と目が合うと

ニコッと笑って「アロハー」と言ってくれます。

 

人とのつながりをここまで大切にして

自分も楽しめるのはハワイ独特の文化です。

 

日本もそうなってほしいと思います。

 

そうしたら、とても心苦しくなる

トイレの分娩や児童虐待も減るはずです。

 

健康とは、他人との関係で築く資源なのです。

 

  • 健康とは、他人とのつながりである。 

  

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  • 自然とのつながり=「アイナ」

 

ハワイの自然はとてもキレイです。

でも、それにはちゃんとした理由があります。

 

それはもちろん、自然を計画的に

しっかりと保全しているからです。

 

ハワイ州では、いくらお金を積んでも

ビーチだけは買えない法律になっています。

 

ハワイにはプライベートビーチがなくて

どこのビーチでも自由に泳ぐことができます。

 

「自然」はみんなで共有すべき資源で

ハワイ語では「アイナ」と呼ばれます。

 

ネイティブ・ハワイアンは

自然から生まれて、自然に還っていくと信じています。

 

さらに有名なフラダンスも

ハワイの島の歴史をダンスで表現したもので

ほとんどが「自然」に関する表現になります。

 

よく聞くと

「アイナー、アイナー」と歌っています。

 

ハワイアンにとっては、

「自然」がすべての中心に位置しているのです。

 

逆に言うと、ハワイアンにとっては、

環境破壊は、日常生活への脅威と同意語になります。

 

彼らは自然がないと、満足に生きれない

健康を維持することができないと言います。

 

ハワイアンにとって(日本人にとって) 

健康であるために自然は不可欠なのです。

 

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自分もサーフィンにハイキングと

自然が大好きなので

「自然なしでは、健康に生きれない」

という考えには賛同できます。

 

でも、「健康=自然」という考え方は、

そもそも日本人が持っていた感覚だと思います。

 

病院やオフィスで働いていると

休みの日には、自然を求めて

山や海に行っていませんか?

 

「自然って、ホントにいいな。」

「生きているって清々しいね。」

 

露天風呂で、いつもそう感じています(笑)

 

やっぱり、ぼくたち日本人にとって

健康を考える上で「自然」は

なくてはならない存在だと思います。

 

日本文化の原基形態を知るためには

沖縄とアイヌの人々を理解する必要があります。

 

辺境からこそ、中心が見えてくるのです。

 

沖縄やアイヌの人々は、

本来の日本人がもっていた感覚を

皮膚感覚として、とても大切にしています。

 

アイヌの長老たちは、

自然は自分の体の一部であり

自然破壊は、自分の体に対する侵襲

つまり「健康問題である」と論じます。

 

自分の体の境界線が、

自然へと拡張されているのです。

 

沖縄の辺野古も同じです。

 

海を壊して基地を作ることは

自分の体を無理やり傷つけられて

人工物を埋め込まれる作業なのです。

 

それは環境問題を超えた「健康問題」なのです。

 

ぼくも病院から出て、ハワイに来て

改めて自然と健康について考えさせられました。

 

ぼくら医療者は、

いつの間にか病院や医療の考えに縛られて

「自然と健康の関係性」を過小評価しているのです。

 

  • 健康とは、自然とのつながりである。 

 

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  • 先祖・子孫とのつながり=「クプナ」「ケイキ」

 

ハワイは、沖縄と同じように

ある意味で時空を超える時があります。

 

たとえば、子供が悪いことをすると

「先祖のみなさんに向かって謝りなさい!」

と怒るし、地域の長老会では、

「子孫たちによい環境を残すために議論しよう!」

と地域で頻回に会議を行なっています。

 

つまり、ネイティブ・ハワイアンはいつでも

既に亡くなった先祖やまだ生まれていない子孫と

つながっている、同じ空間に生きているのです。

 

ハワイアンでは、長老たちの権限は絶対で

高齢者は「クプナ」として敬われています。

 

食事は、まず高齢者「クプナ」に渡されます。

 

また、ハワイは子供にとてもフレンドリーで

「ケイキ」というハワイ語もよく見かけます。

 

こども「ケイキ」は誰よりも優先されます。

 

そして、ハワイアンたちは

「クプナ」と「アイナ」の先に

見えない先祖と子孫を見ています。

 

先祖から受け継いだものを

次の世代に受け継ぐことを

自分の人生の役割だと規定します。 

 

ぼくら若い世代の日本人には

なかなかわかりにくい感覚ですね。

 

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個人的な具体例を挙げましょう。

 

自分の母は、青森県白神山地という

世界自然遺産に認定されるくらいの田舎出身です。

 

仕事でアフリカからアジアまで

相当コアな先住民族の調査に行きましたが、

母の「お盆」が一番ディープでした(笑)

 

マタギというキコリの集落の出身で

家には先祖代々の写真がかかっている仏壇があります。

 

お盆には、ナス、キュウリに、ランタンと

これだけ忠実にお盆を遂行している人も稀です。

 

墓参りも自分の墓だけでなくて

親戚一同の墓に線香や水をやり始めるので

炎天下の中でエンドレス墓参りとなります。

 

きっと、母親にとっては

お盆は先祖とのつながりを確認できる

唯一の機会であり、大切な価値なのでしょう。

 

だけど、青森弁で話しながら墓参りしている母の姿は

とても輝いていて、何より健康であるように見えます。

 

つまり、母にとっては先祖とのつながりは

自分の人生にとって大切な価値であり、

よく生きる=健康であるための重要な要素なのです。

 

救急で一番つらかったのは、

重症になった子供に親を対面させる時でした。

 

子供とのつながりが、ほぼ一瞬で失われる

小児疾患や事故の残酷さに圧倒されました。

 

疾患や事故よりも、

このつながりの断絶に言葉を失いました。

 

先祖や子孫とのつながりは

僕らの生活の根底にある大きな流れなのでしょう。

 

当たり前だと考えていた流れが突然寸断された時に

ぼくらは初めて、その大きな苦しみに気付くのです。

  

  • 健康とは、先祖と子孫とのつながりである。

 

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ということで

「ハワイから学ぶ健康」でした。

 

地味な記事ですが、

正直、この3年間ハワイで働いて

一番、衝撃を受けた内容でした。

 

健康は「つながり」なんですね。

 

  • 健康とは、自分とのつながりである。
  • 健康とは、他人とのつながりである。
  • 健康とは、自然とのつながりである。
  • 健康とは、先祖・子孫とのつながりである。

 

ハワイがもつ不思議な魅力を

やっと言語化できた機会でした。

 

ぼくら医療者はいつの間にか

自分たちの価値観に洗脳されてしまって

その価値観を相対化する機会を失います。

 

WHOにおける健康の定義では

「もはや」自分たちの健康すら定義できない

と教えてもらったのが、自分の中では、

大きなインパクトで、価値の相対化になりました。

 

忙しすぎて、健康を見失っている

自分への戒めも兼ねて、この記事を書いています。

 

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ハワイに来たことがない人には

ハワイに来ることを強くオススメします!

 

観光地としても、文化を感じる旅としても

やっぱりハワイはスペシャルだと思っています。

 

逆に、健康の専門であるみなさんに

なんでハワイに来ると健康になるのかを聞きたいです。

 

青く透き通る海で浮かびながら、

夕日に染まるダイアモンドヘッドと

家に帰るウミガメの家族を見たら

悶絶して自分の存在が自然と一体化します(笑)

 

近いうちに、ハワイで夕日でも見ながら、

ぼーっと一緒にビールでも飲みましょう。

 

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