NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

ジャッジしない

この2年間の業績発表と業績評価も終わり、

次の3年間もハワイ州の公務員で契約しました。

 

クビにならなくて良かったです(笑)

 

いろいろなオファーをもらいましたが、

もう少しハワイで疫学者やろうと思います。

 

疫学者不足です。

誰か疫学者になりませんか?

 

今回は、疫学者から学ぶ人生訓

「ジャッジしない姿勢」

を紹介したいと思います。

 

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1) Medical Marijana Registry

医療大麻レジストリー」

 

日本では大麻は大きな法律違反ですが

アメリカでは普通に医療として使っています。

 

ハワイ州でも数年前から

医療大麻が解禁になり

(Medical Marijana)

ハワイ州保健局の疫学部門で

(Department of Health: DOH)

個人・医療情報を管理しています。

 

医師の診断書をもとに

疫学者が使用の適応を確認して

ハワイ州としての許可を出して

登録情報を管理・監査しています。

 

がんの疼痛コントロールから

精神疾患の治療まで幅広いです。

 

NPが普通の薬みたいに

医療大麻の使い方を指導しています。

 

看護師が医療大麻を教育・指導するのは

日本では、到底考えられない状況ですね。

 

医療大麻の管理情報が膨大な量なので

その統計処理の手伝いをしています。

 

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ハワイの新聞やテレビから

たまに取材を受けますが、

ぼくら疫学者は医療大麻に関して

特に意見はないです(笑)

 

善悪の判断は相対的なもので

場所や時代によって変わるものなので、

疫学者は基本的に善悪の判断はしない

"Non Judgement"「ジャッジしない」

という姿勢を大切にしています。

 

従って、特に意見もなく

淡々と医療大麻の統計を処理しています。

 

ネイティブハワイアンにとっては

大麻は漢方の一部なので、

法律違反ですが自家栽培も多いです。

 

それはそれで、いんじゃないでしょうか。

 

日本の七味唐辛子の黒いやつも

大麻の種(加熱済)だからね。

 

日常における大麻の使用は

オレゴン州から始まりカリフォルニア州

カナダでも解禁になっていますが

ハワイ州議会は慎重に様子を見ています。

 

医療大麻に関する研究は

バイアスかかった研究が多いのは事実です。

 

難治性けいれんなどには効果が証明され

必要な人には薬として届けるべきなので、

日本みたいな善悪の議論は一回置いておいて

客観的に評価する必要があると思います。

 

だから、ぼくら疫学者が

レジストリーを組んでアウトカム評価しています。

 

善悪の判断をしない

一番中立的な集団なので。

 

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日本ではよく法律が、とか言われますが、

「法律の中に、神はいません。」

 

社会を良くするための法律だったのに

いつの間にか時代遅れのものになり

逆に社会を制限してしまう法律になっています。

 

大麻規制法もそうでしょう。

薬として届けるなら、法律変えようよ。

 

保助看法もそうでしょう。

NP開始するなら、法律変えようよ。

 

善悪の判断や価値観にこだわるよりも

もっと客観的に評価すべきでしょう。

 

それがぼくら疫学者の仕事です。

 

みなさんも患者や他の看護師を

善悪で判断しないで下さいね。

 

それは善悪ではなくて

純粋に「違う」だけですから。 

 

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2) Syringe Exchange Program

「シリンジ交換プログラム」

 

さらっとハードなこと書いていますが、

さらにさらにコアな内容に行きましょう。

 

ぼくらは、定期的に

注射器を使用するドラッグユーザーに

(Injecting Drug Users:IDUs)

無料でキレイ針とシリンジを配っています。

 

しかもハワイ州の税金で。

 

つまり、みなさんがハワイにきて

アラモアナセンターやABC Storeで

買い物した時の消費税が一部

ドラックユーザーの針やシリンジ

になっているということです。

 

しかも、丁寧なことに

覚醒剤をあぶる器械や

(Cooker:調理器)

ドラッグを溶かす滅菌水まで

バンバン配っています(笑)

 

これです。

 

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これは有名な疫学研究に基づいて

ハワイ州議会の命令で行なっています。

 

"Harm Reduction"という理論で

「リスクを完全になくすより

 少しづつ減らすことを目指した方が

 効果的な行動変容になる」

と実証され確立された理論になります。

 

つまり、

 

「わかった。

 ドラックは続けていいから

 感染症拡大予防のために

 薬を打つシリンジと針は

 新しいのあげるから

 他の人と共有しないでね。」

 

というロジックです。

 

ドラッグを一気にやめさせるよりも

感染拡大につながる針の共有を

まずは減らしていこうというアイデアです。

 

この介入が効果的に

患者の予後改善と医療費削減につながることが

ハワイ州のデータでも証明されています。

 

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これもハワイ州保健局がやっており、

看護師ということで月に数回

ボランティアで外来にかり出されています。

 

外来始まる前に外を見てみると

ドラッグユーザーが

整然と並んで待っており

「すげーな。この環境」と

さすがに思ってしまいます。

 

会話はこんなかんじです。

青い部分のがYuitoです。

 

「最近どんなの使っているの?」

「ヘロインかな。安いやつね。」

 

「マジで?それ危ないでしょ。

 じゃ、刺入部を見せて下さい。」

「最近、赤くなって痛いんだよね。」

 

「あれ、これ、感染してるよ。

 キレイなシリンジと針あげるから、

 このまま、ちゃんとNP外来行ってね。

 はい、どうぞ。」

「マジで感謝だね、兄弟。」

 

「ちゃんと滅菌蒸留水使って注射しろよー。」

 

なんとも不思議な会話ですよね。

 

これは、善悪のジャッジはせずに

患者に関心を寄せて会話することに

重点を置いたコミュニケーションです。

 

心配してんだから、

何かあったら、いつでも来いよー

というメッセージです。

 

すると不思議なことに何回か話していると

「やっぱり肝炎の検査受けた方がいいの?」

「できたら、そろそろドラッグやめたいな。」

と、ポロっと言ってくれるので、

その機会に専門のNPに紹介していきます。

 

善悪の判断をするよりも

少しづつお互いに理解しあって

アクセスを保証することが肝心です。

 

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日本だと覚醒剤を使ったというと

マスコミが一気にたたき、

また警察も出てきますが、

彼らに必要なのは刑の執行でありません。

 

他者からの理解と専門的な治療が必要なのです。

 

ジャッジするよりも

違う価値観をもつ「ひとりの人間」として

関心をもって接することが効果的なのです。 

 

ちなみに自分はまったく

看護師や疫学者には見えないので、

ハワイ州の疫学部長に

「お前の外来見てたけど、

 どっちがドラッグユーザーかわからないな。

 あはははー。」

と最大限のお褒めの言葉をもらいました(笑)

 

ジャッジしないという疫学者の姿勢と

関心をよせるいうと看護師の姿勢のおかげで

強面の人たちの人気外来になっています。

 

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3) Family Planing Services

「家族計画サービス」

 

ハワイも観光地である

アラモアナやワイキキ以外では

かなり治安も悪い地域も存在します。

 

ボランティアを行なっている地域も

雰囲気はフィリピンのスラムに近く

地域の絆が強く排他的な地域になります。

 

その地域の母子保健センターでも

多様な背景の症例がたくさんきます。

 

かわいいのは、学生ですね。

 

避妊に失敗した女子高生が来たら、

「それはマジであせるねー。」

と緊急避妊ピル(Morning After Pills)を

助産師と一緒に処方しています。

 

また男子中学生がモジモジして、

コンドーム(無料!)をもらいにくるので

大量にあげて、使い方を大声で説明しています。

 

まさに、オールラウンダー看護師(笑)

 

中学校で性教育することもあり

若年の性交渉が良いとか悪いとかではなくて、

しっかりとリスクマネジメントを伝えています。

 

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他にも14歳の妊婦や

パートナーがわからない妊婦、

人口妊娠中絶の希望者も来ますが、

一切、ジャッジはしません。

 

「とりあえず、来てくれてありがとう。

 最大限、安全に配慮して、その意思を尊重するね。」

 

と深い詮索もせずに、本人の希望を聞いていきます。

 

みんな深刻に悩んで来るので、

 

「おれの人生より、よっぽどマシじゃん!

 おれなんて、先日、ウンコした後に

 家にトイレットペーパーがないことに

 気づいたからね。愕然としたね。WOW。」

 

と、超くだらない話して、安心させています。

 

看護師のアートですね。

 

人生それぞれの物語があるし、

自分の幸せは自分で決めるべきだからね。

 

「ま、なんだっていんじゃんねー。」

と言うと、他の看護師に怒られますが(笑)

 

最近は自分がフォローしていた

覚醒剤を使用していた妊婦」を

ピアカウンセラーとして雇っています。

 

このピアカウンセラーが

覚醒剤を使っている他の妊婦に

「私も妊娠中は覚醒剤、我慢してたんだから、

 あんたも妊娠中くらいは、我慢しなさい!」

と大声で指導していて、

「説得力、ハンパないなー」

と横でクスクス笑っていました(笑)

 

こういう自由さ、大好きです。

  

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最近思うのは、

「みな善悪を厳しく

 ジャッジしすぎではないか」

ということです。

 

少しでも間違えたことと言ったり

少しでも違うことをしたりすると

社会的正義感と強い同調圧力が一気にかかる

なかなか息苦しい時代になってきました。

 

他人に常にジャッジされながら

生きるほどつらい状況はないでしょう。

 

だって、他人の善悪と自分の善悪は

まったく違う判断基準なのですから。

 

失敗や非同調が許されず、

少しでも集団と異なる人は

さっさと仲間はずれにしてしまう

なんとも悲しい世の中になって来ました。

 

いま必要なのは、多様性です。

 

大麻覚醒剤、若年の妊娠も

多様性と捉えて、否定するのではなくて

どうしたら良い状況にできるのか

いろいろオープンに議論すべきです。

 

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特に看護師ですね。

 

他の看護師が使えないとか

あの患者がダメだととか

いちいちジャッジしすぎです。

 

その前に自分を振り返りましょう。

他人は自分と違うものです。

 

疫学者から

"Non Judgement"

「ジャッジしない姿勢」

を学んでみて下さい。

 

ジャッジしないと心が寛容になり

自分のストレスも減り、楽になりますよ。

 

疫学者は、

単に他人に興味がないだけですが(笑)

 

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大きな仕事も終わったので、

今日はサーフィンして

明日の便で日本に帰って

東京と沖縄で春休みします。

 

東京と沖縄を観光します(笑)

 

「正しく生きる必要はない」ので

ひたすら友人と飲みたいと思います(笑)

 

ハワイから沖縄に

観光にいくのも変な話ですが。

 

いろんな人に直接感謝を伝えて

自分の原点を再確認してきます。

 

"No Judge"

 

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