NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

看護の未来

最近、看護のメディアがおもしろくないです。

 

転職サイト関係で誘導的な情報が多く、

雑誌も深い内容のものは少なく、さみしい限りです。

 

そして、なにせカッコイイ人材がいないです。

 

今日は、そんな看護界に失望している方に

再び、夢と希望を持ってもらうために、

「テクノロジーが切り開く看護の未来」

について話したいと思います。

 

  • バイタル測定がすべてワイアレスになる
  • 電子カルテは音声入力と画像入力になる
  • 生体センサーで失禁も転倒も予防できる
  • 看護師がアプリを処方するようになる
  • 最終的に病院という場がなくなる

 

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看護はテクノロジーと親和性が高く、

今現在の看護は、ここまで来ています。

 

ここでいう「看護の未来」とは

何も10年後の未来ではなく、

実際に今、試験運用されている技術です。

 

これからの世の中は

データサイエンスと人工知能の発展により、

# センサーに特化する企業

# データ分析に特化する企業

の2つが支配的なプレイヤーとなり

医療で爆発的な革新が起きると言われています。

 

GoogleAmazon

日本の病院や看護を管理する日も

そう遠くはないと思います。

 

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  • バイタル測定がすべてワイアレスになる

 

なぜ、ICUでは清拭の時に

12誘導心電図のコードが絡まり、

病棟では体温計で測った数字を

わざわざカルテに打ち込むのでしょうか?

 

これらは

完全に価値を生み出さない作業、

つまり、意味のない業務です。

 

看護師の仕事の約40%が

こういったバイタル測定や

記録の業務だと言われています。

 

これからは病院内でも頑丈なWifiが整備され、

すべてのものがワイアレスでネットと接続されます。

(Iot; Internet of Things)

 

具体的にどう変わるのか想像してみましょう。

 

たとえば、12誘導心電図は

心電図シールにバッテリーとセンサー、

データを飛ばす機械が内蔵されており、

ICUでは、ただシールを貼るだけで、

ワイアレスで24時間、

12誘導心電図がモニタリングできます。

 

もう清拭の時に

コードが絡むことが無くなります。

 

または最近では、

患者さんが着る病衣の繊維に

心電図のセンサーが内蔵されており、

病衣を着るだけで自動的に

モニターに心電図が送られます。

 

それらのデータはすべて

サーバーに保存されるので

記録する必要はありません。

 

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心電図だけでなく、

すべてのバイタル測定が

ネットにつながっています。

 

体温測定を考えてみましょう。 

 

今はなぜか体温計が患者で共有され、

出た数値は看護師がワザワザ打ち込みます。

 

新しいWifi環境では

患者一人一人に専用の体温計があり、

その体温計で体温を測ると、

測定結果が瞬時にワイアレスで飛び、

自動的に電子カルテに記録されます。

 

また血圧測定も同様に

血圧計を巻いて測定するだけで

自動的にネットで電子カルテに記録されます。

 

つまり、すべてのバイタルサインは、

測定するだけで自動的にカルテに記録されるのです。

 

なぜ精度の高いモニターがあるICU

データをそのまま保存・記録せずに、

看護師が、忙しそうに15分ごとに

バイタルを入力しているのか、

いつも疑問に思っています。

 

データは、そのまま保存すればいいし、

プログラミングで自動的にバイタル記録できます。

 

バイタル測定をすべてワイアレス化して、

測定行為からアセスメントという

より重要な思考へと資源を移動させる必要があります。

 

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日本ではこういう話をすると

安全性は?という謎の議論が出てきます。

 

手打ちでデータ入力するのと、

データで自動的に保存するのは、

どちらが、より正確でしょうか。

 

もちろん、自動化です。

 

さらに認証は、

すべて生体認証になります。

 

ぼくは今iphone7を使っていますが、

指紋認証でロックを解除しています。

 

職場ではPCの上に小さなカメラがあり、

そこに向かって、まばたきをすると

瞬時に自分のIDでパソコンにログインできます。

虹彩認証システム)

 

めんどくさい

ID、パスワード入力は一切ありません。

 

最近では、診察券はなく、

すべて指紋認証で患者認証しています。

(診察券忘れがなくて最高!!)

 

ワイアレス化した病棟では、

看護師たちはiphone電子カルテ代わりに

ポケットの中に忍ばせて使います。

 

点滴やバイタルサインの認証は

患者も看護師も指紋です。

 

つまり、

いちいちバーコードをスキャンしたり、

看護師が実施記録を打ち込まなくても、

患者さんの指紋認証がバーコードの代わりで、

看護師の指紋認証で実施記録となります。

 

すべてが正確かつスピーディーになるのです。

 

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そして、電子カルテです。

 

先ほど、話したように、

バイタルサインは自動的に記録され、

瞬時にチャートで可視化できます。

 

また看護記録は、

すべて音声入力で文字となり、

打ち込みを一切しないので、

iphoneで事足りるわけです。

 

主観的情報(S情報)は、

患者さん自身に

iphoneに向かって話してもらい、

音声ソフトが自動的に文字化します。

 

S)「痛みも減って、食欲もでてきました。」

 

そして、今度は看護師が

客観的情報(O情報)を音声入力していきます。

 

O) 本日は、術後3日目で、自力歩行している。

 創部の痛みは、コントロール良好である。

 

さらに

創部の状態は撮影して画像で保存して、

呼吸状態やリハビリは動画で保存して、

チーム全体で共有できるようになります。

 

むしろ、日常生活では

ケータイで最大限に写メを使っているのに

病院では、なぜか写真の方が正確なのに、

「創部は、浸出液が減少して、発赤は・・・」

と文字にして記録しているのかが理解できません。

 

この技術もワイアレス化と同じように

音声・画像・動画で記録することにより、

価値のないカルテ打ち込みという労働を、

看護本来がすべきアセスメントや介入という

患者のアウトカムをより大きく改善する行為へ

劇的にシフトすることができます。

 

考えてみて下さい。

バイタル測定と記録がほぼない勤務です。

今の業務量が約半分になると思います。

 

もちろん、iphoneなので、

患者さんのナースコールと話したり、

看護師どうして電話して

作業をより効率化することもできます。

 

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  • 生体センサーで失禁も転倒も予防できる

 

最近、日本でも、看護と工学を

融合させようとしています。

 

ただ、考える方向性が間違えていて、

なぜか行為が起きた後すぐに

察知できるセンサーを開発しようとしています。

 

失禁がすぐにわかるセンサーや

立ち上がったら感知する転倒防止マット。

 

こういうセンサリングではなくて、

その行為が起きる前に感知するセンサーが必要です。

 

排泄に関しては、技術が完成していて、

パンツに膀胱内尿量を感知するセンサーが内蔵されており、

排尿が近くなるとセンサーで看護師に教えてくれます。

 

トイレ誘導が成功する確率は劇的に上がり

患者さんもオムツを履かなくてよいので、

自尊心も保て、リハビリもスムーズになります。

 

機械学習で自動的に個人データを分析できるので、

24時間後には正確に予測できるようになります。

 

排便も同じように、今浣腸をかけた方が良いのか、

明日出る確率が高いのか、瞬時に計算してくれます。

 

また転倒も同じように、

プログラミングが自動的に

カルテの中から情報を解析して、

個人個人の転倒リスクを正確に計算してくれます。

 

そして、病衣に内蔵されたセンサーで

転倒につながりそうな行動を早期に感知できます。

 

こうすることで、

リスクのない人への介入が少なくなり、

ハイリスクに的確に介入できるようになるので、

無駄な作業が減り、また予防介入が的中します。

 

ここでも業務が大幅に削減され、

# すべての患者に転倒予防をする

# 体位交換を全員2時間毎にする

などの謎の行為がなくなります。

 

もちろん、看護必要度

電子カルテ内にあるデータから

自動的に算出してくれるので、

あの毎日書く、無駄な業務が無くなり、

患者の重症度がリアルタイムでわかるので、

看護師の配置を1時間単位で調整できます。

 

「データを見ると午後から

 整形が忙しくなりそうだから、

 午後は整形に応援に行ってね」

 

という流れで、

病院全体で看護業務の最適化ができます。

 

実際、今あるテクノロジーを使えば、

看護師の業務は1/5になると計算されています。

 

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  • 看護師がアプリを処方するようになる

 

すごい時代ですよね。

 

これからは看護師が患者に

アプリを処方する時代になります。

 

処方というのかどうか疑問ですが。

 

研究でオバマ元大統領が生まれた

母子保健センターによく行くのですが、

看護師が妊婦さんを集めて

みんなでスマホをイジっているので

「ケータイで何してるの?ゲーム?」

と聞いたら

「これ私たちが作った妊婦教育用のアプリ。

 その使い方を講習しているの。」

と返され、驚きに驚きました。

 

アプリで気軽に看護師とチャットできるし、

アプリに陣痛間隔も入力できるので、

病院側も陣痛の進行を遠隔でモニタリングできます。

 

マジでマジですごい時代だし、

こういうテクノロジーをあっさりと使う

アメリカの看護界は、やっぱりスゴイです。

 

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アメリカでは、アプリの処方は普通で、

肥満や高血圧の人にはNPが外来で

エビデンスのある専用アプリをダウンロードさせ、

使い方を教えた後に電子カルテを同期しています。

 

それらのアプリは、

体重計や血圧計とBluetoothで接続可能で、

自分で測った測定値が自動的に記録され、

また食事なども写真で入力していくと

アプリが適切なフィードバックを与えて、

個人にあった行動変容を促すシステムです。

 

しかも病院や診療所からも

遠隔でそのデータを見れるので、

異常値が出ても瞬時に察知できます。

 

アプリ代は、月2000円以上と高いのですが、

薬より安く効果的なので、医療保険適応です。

 

患者さんは血圧手帳や血糖手帳に

しっかり記録して外来に来るけど、

医師と外来で3分話しただけじゃ

個別的なアドバイスできるわけはなく、

ほぼほぼ行動変容につながらないでしょ。

 

自分のデータをアプリや健康デバイスに提供すると

それらが自動的に最適なフィードバックをしてくれる

セルフコーチングという行動変容の理論です。

 

この方が明らかに効果的でしょ。

もはや、看護師・保健師いらず。

 

特にスゴイのが、「糖尿病管理」です。

 

血糖センサー付きコンタクトレンズ

24時間血糖測定してデータをiphoneに送り

iphoneジャックに特別なプラグつけるだけで

正確な血糖測定機に早変わりします。

 

もちろん、血糖管理アプリに

データはすべて記録されるので、

自分で自分を管理できるようになります。

 

スゴイ時代になりました。

 

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  • 最終的に病院という場がなくなる

 

ハワイ大学にいるGoogle関係者に、

「あ、Yuito、病院はね、

 最終的には必要なくなるから。」

とサラっと言われて、度肝を抜かれました。

 

その根拠を聞いていくうちに、

圧倒的な思考の違いに完全に打ちのめされました。

 

やはり、ぼくら医療者は

今までの医療に洗脳されすぎていて、

今の医療の延長線上でしか

新しい医療を考えることができません。

 

想像力の欠如です。

 

だから、今の医療に洗脳されていない

まったく異なる分野の人が

今後の医療を創っていくと確信しています。

 

日本でも遠隔医療ベンチャーが勃興中ですが、

そもそも診療報酬の制度上でやっているし、

確実に今の延長上、想像の範囲内ですからね。

 

イノベーションの定義は、

「連続的な変化でなく、非連続的変化」

で、圧倒的な破壊的想像です。

  

数年前まで、ランニングしながら、

無料でストリーミングで音楽聴けるなんで

誰も想像しなかったでしょ?

 

Googleいわく、

# 予防医療で患者を劇的に減らせるじゃん

# そもそも病院に行かなくても医療できるじゃん

とのことです。

 

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今では、ネット環境とロボットのおかげで

手術もモニタリングも遠隔でできるので、

患者さんの家の横に手術用トラック止めて

看護師だけで麻酔管理と手術介助して、

ダヴィンチみたいなロボットで

遠隔で外科医の手術を受けれます。

 

そのまま家にあるものにアプリをインストールして、

家のパソコンとテレビをモニター画面にして、

看護師を数日常駐させたら、自宅がICUになります。

 

これで医療費も安くなり、

患者も家で安心、早期にリハビリ可能となります。

 

Googleはそろそろ本気で

予防医療へシフトしようとしており、

病気を大幅に減らす自信がかなり強く、

病院が成り立たなくなると力説しています。

 

彼らは、そもそも病院を廃止したと仮定して

予防医療や遠隔医療について行動しています。

 

病院を無くしたと仮定して議論するなんて、

ぼくたち医療者には到底思いつかない発想です。

 

ただ、確かにそれは実際に可能だし、

予防医療含め、それは社会にとって非常に良いことです。

 

医療者も現代のテクノロジーとの融合を

本気で考るべき時代になりました。

 

なぜ日本の病院はあんなに

テクノロジーを取り入れるのが遅いのでしょうか。

 

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今回は、

「テクノロジーが切り開く看護の未来」でした。

 

  • バイタル測定がすべてワイアレスになる
  • 電子カルテは音声入力と画像入力になる
  • 生体センサーで失禁も転倒も予防できる
  • 看護師がアプリを処方するようになる
  • 最終的に病院という場がなくなる

 

ぼくはアメリカに来て

テクノロジーやビッグデータ

人工知能プログラミングに圧倒され、

一回看護と公衆衛生を捨てる決断をしました。

 

だから、今はゼロベースで、

イチからこれらを学んでいます。

 

やはり、最先端の研究者と

同じレベルで議論できないと

いつまでたっても看護は

テクノロジー音痴のままなのでしょう。

 

新しい世代には早めに看護を捨てて、

こういう新しいテクノロジーの世界に

飛び込んでいってほしいと思っています。

 

そしたら、10年後に看護から

世界を変える爆発的なイノベーション

いくつも起きると信じています。

 

さて、今回の記事で、

再び、看護に希望が持てるように

なりましたか?

 

個人的には、Nursingは本来、

Hip HopやReggaeと同じくらい

カッコイイ領域なのになと思っています。

 

さ、なんかアプリでも作るかな。

 

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