NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

NPの歴史

日本のNP制度は依然として不安定で、

最近はネットで調べてもよくわかりません。

 

NPから診療看護師へ!?

特定看護師から特定行為へ!?

本来のビジョンとアウトカムの評価方法を

誰かに、詳しく教えて頂きたいです(笑)

 

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今回は、アメリカの

「NP (Nurse Practitioner)の歴史」

についてシンプルに

まとめてみたいと思います。

 

今、診療看護師として働いている人、

これから診療看護師になりたい人は

必読な内容になっています。

 

まずは、Main Pointsです。

 

  • NP確立には、アメリカでも20年かかっている
  • NPは、医師不足と医療費高騰から生まれた
  • NPは、データと政治戦略でイノベーションと認知された

 

まず、日本でもNP、NPと議論していますが、

アメリカでは、NPの権限は州ごとに異なります。

 

全米NP協会によると、

(AANP; American Association of Nurse Practitioners)

医師のスーパービジョンが必要な

"Restricted Practice"(限定的実践)から

自分の責任で診断や治療ができる

"Full Practice"(完全な独立実践)まで

基本的に州によって規制があります。



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自分が今いるハワイ州では、NPは基本的に

「手術以外なんでも自分でできる」と言われている

"Full Practice"です。

 

自分でも、これが一番ナチュラルなNPだと思うし、

AANPもこのスタイルを希望しています。

 

カルフォルニアにいた時は、

病院によって、様々でしたね。

 

ま、カルフォルニア州は広いので。

 

また、NPも専門特化されていて、

日本の開業医みたいに地域の診療所で

基本的な医療(Primary Care)を提供する人から、

大きな病院で小児科外来やっているNP、

救急外来やICUで働いているNPまで、

多様性に富んでおり、一概には語りにくいです。

 

アメリカNPの前提でした。

 

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  • NP確立には、アメリカでも20年かかっている

 

そうなんです。意外ですよね。

今の日本と同じ議論がありました。

 

今でこそ、NPは確立されており、

ハーバードのビジネススクールでも

「破壊的イノベーション」として

取り上げるくらいに認識されています。

 

NPがイノベーションとして議論されている

Christensenによる論文

Harverd Business Review (Sep-Oct, 2000)の

"Will Disruptive Innovations Cure Health Care?"

は、マジで読んだ方がいいです。 

(今度、解説します。)

 

もちろん、ここにたどり着くまでは

壮絶なストーリーがあったわけです。

 

では、NPの歴史に入っていきましょう。

 

時は、第二次世界対戦が終わり、

アメリカも戦後復興してきた1950年後半です。

 

NPは、ある医師たちがアドバイスしながら、

診療所における一般的な医療(Primary Care)を

看護師たちに任し始めたことがキッカケです。

 

この先駆的な医師たちは、

# 医師の専門分化が進みすぎて、

  基本的な医療を提供する人材が不足したこと

# 特に僻地での医師不足が深刻だったこと

から、経験のある看護師に

「非正規的な教育コース」

を設立して、現場に送り出すようになります。

 

特に、1965年にはアメリカで

# Medicaid(低所得者や障害者向け医療保険

# Medicare(高齢者向け医療保険

が開始され、医療にアクセスする患者が

一気に増えたことが追い風になったと言われています。

 

その年にはNPの非公式的な教育も統合されて、

# 健康増進 (Health Promotion)

# 疾病予防 (Disease Prevention)

# 家族医療 (Family Medicine)

という軸で、地域の健康を担う役割となります。

 

日本でいうと、

開業医と保健師を合わせた役割ですかね。

 

そして、

医師サイドと看護師サイドの両方から

猛反発にあいます(笑)

 

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特に看護界からの反発はすさまじく、

「それはもはや看護実践ではない」

「あいまいで間違いを導く行為」

「医師による看護への侵略だ」

と非常に過激な公文章を出しています。

 

今の日本とまったく一緒です。

看護師の敵は、看護師ですね。

 

このグレー状態のまま進み、

なんと20年の月日が流れ、

1970年代後半になってようやく、

「患者と医師が満足できる初期医療である」

と認識されて、州ごとに登録が始まり、

NPが正式に認められます。

 

そうなんです。

なんとアメリカでも

20年もの歳月がかかっているのです。

 

この先駆者たちの意思の強さは凄まじくて、

今でも伝説として語られていることもあります。

 

双方に批判されながらも、

正しい行為と信じて、実践を行い、

結果として認めさせる。

 

日本の診療看護師にも見習ってほしい

リーダーシップと社会的正義ですね。

 

とくに先駆的な医師たちの懸命な教育が

今のNPを作り出したのは、非常に印象的です。

 

だから、日本もあと10年はかかると思います。

自分たちで積極的にシステムをデザインしていかないと。

 

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1980年代になると

医師数は満ちてきたものの偏在が目立ち、

医療費も高騰してきて州の財政を圧迫します。

 

そこで、NPたちは、ここぞとばかりに

科学的なデータを出し始めて存在感を示します。

 

看護教育でも博士課程が確立した時期で、

科学的にNPがいかに費用対効果として良いか、

またNPの教育や政策も論文で公表していきます。

 

たとえば、同じ治療なら医師よりもコストが安い、

予防でいくら医療費を防いだか、などです。

 

最終的には

医師の偏在と医療費の高騰への解決策として

NPが注目されるようになり、市民権を得ていきます。

 

そして、先駆的な医師たちのサポートがあり、

NP評価に関するデータが整ったところで、

1994年に臨床医学一番の雑誌

New England Journal of Medicineに

一本の論文が掲載されます。

(New England Journal of Medicine,

   Vol 330, No,3, 211-214, 1994)

 

なんと表題は、

「医師へ処方すべき良薬は、NPである」

 

MADDDD!!!!!!!!

 

「一連の研究をまとめると

 NPはPrimary Careに関しては、

 医師と同等かそれ以上に優れている

 と結論づけざるを得ない。」

 

この雑誌は当時、超保守的と言われる

医師権力の権化のような雑誌です。

 

そこがこの論文を掲載したことにより、

「アカデミック」にNPが評価され、

やっと医学界やアカデミックでも

NPが確立された時期になります。

 

この論文の趣旨は

「NP反対派の医師も看護師も黙れ!」

という内容で、ここでも大揉めになっています。

 

ここでのポイントは

# 医師の偏在

# 医療費の高騰化

という社会的な背景が、

NPを確立できた大きな要因だったことです。

 

これって、もしや!?

そう、今の日本です。

 

今の日本では、僻地では医師が依然少なく、

また医療費も高齢化により年々高騰しており、

この2つへの解決策が求められています。

 

そこで、今の日本医療において

ひとつの解決策になると考えられるのが

診療看護師ということになるでしょう。

 

だから、アメリカにおける

NPの歴史から学ぶことは多いと思います。

 

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そして、時は1990年代になります。

 

NPがスタートして30年以上たち、

NPの数が増えて存在感を示します。

 

すると、その専門性と医療費抑制が

医療システム全体に貢献し、

連邦政府から評価されるようになります。

 

1991年には医療システム全体への

NPによる貢献が認められ、

Medicare、Medicaidなどの

政府が払う医療保険において

NPへの医療費支払いが大きく増額されました。

(専門看護師や助産師などのAPNも)

 

日本でいうと診療報酬の点数が

大幅に上がったということです。

 

では、なぜ1980年代から1990年代において

こんなにもNPは飛躍的にも評価され

イノベーションとして認知されたのでしょうか。

 

そこには2つの背景があります。

「政治戦略」と「データ戦略」です。

 

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ますは、政治的戦略についてです。

 

実は、看護師と国会議員が連携して、

アメリカ式ロビー活動をして、

この医療費支払い増額を認めさせています。

 

医療システム全体に貢献したのだから、

もっと自律と認め、もっと金払えと。

 

ここに、凄まじいブレーンがいました。

 

それは、世界一有名なハーバード大学政治学

(通称;ケネディスクール)で学科長にもなった

看護師のSheila Burke教授です。

 

Sheila Burke | Harvard Kennedy School

 

この人、神です(笑) 

 

臨床で看護師やって、

有名な政治家のブレーンやって、

そしてハーバード大学の教授ですからね。

今でも医療政策の権威として超有名です。

 

この人を中心として、NPを確立するために

国会や政治家にいろいろと政治的に関わり、

多くの偉業をなしとげています。

 

だれか、一緒にProf. Burkeを

クラウドファンディングで日本に呼びませんか!?

 

いつまでも看護が政治に振り回されるのではなく、

看護から政治に提案して、システムを認めさせることは

日本のNPや在宅医療を考えるうえで必須でしょう。

 

日本でも看護師の国会議員は4人もいて、

議員歴も長く、そろそろ機は熟したのではないでしょうか。

 

kango-renmei.gr.jp

 

個人的には、男性看護師として

石田まさひろ議員を応援しています。

 

いつかインタビューしてみたいです。

 

www.masahiro-ishida.com

 

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次は自分の専門であるデータです。

 

政治戦略に合わせて、1990年代後半には、

NPと医師の無作為化比較対照試験(RCT)が行われ、

それぞれJAMAとLancetの超一流雑誌に掲載されます。

 

有名なのは、RCTは次の2つです。

 

診療看護師は辞書使ってでも必ず読むように!!

 

1)診療所における初期治療では

  医師でもNPでもアウトカムに差がなった

  (Primary Care Outcome in Patients Treated

          by Nurse Practitioners or Physicians: JAMA,

          Vol 283, No,1, 59-68, 2000)

 

2)救急外来における外傷患者(重度除く)では

  医師でもNPでもアウトカムに差がなった

 (Care of minor injuries by emergency nurse practitioners

     or junior doctors: The Lancet, 354,1321-1326, 1999)

 

実は、この論文の研究デザインや解析は

自分でも「これはダメでしょ。」と思う内容です。

 

目的は、科学的で妥当性が高い研究を目指すというより、

「アカデミックとルールに従って、NPを評価した」

という、政治的なインパクトを目指しています。

 

だって、新薬の評価もRCTが必要でしょ!?

 

だから、しっかりとアカデミックのルールに従い

NPを評価するためにRCTを組んだことは

評価に値するし、最終的な不可欠なことです。

 

果たして、

日本でこういうRCTを組める人材はいるのか

という話にもなってきますが。

 

ここでも保守的な医師側(特に開業医)から

いろいろと反対を受けますが、

このRCTと前出の政治的な決着をもって、

NP制度完成となります。

 

ちなみに、2000年後は、

NP、CNS(専門看護師)、CMF(助産師)と博士の看護師で

免許がゴチャゴチャしてきたので、

APN(Advanced Practice Nursing;上級実践看護師)

という概念で包括と統合を目指していきます。

 

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ということで、アメリカのNPの歴史について

シンプルにまとめてみました。

 

  • NP確立には、アメリカでも20年かかっている
  • NPは、医師不足と医療費高騰から生まれた
  • NPは、データと政治戦略でイノベーションと認知された

 

「日本の診療看護師のシステムが不安定で先行き不透明」

というのはなくて、

看護全体としてデータと政治を戦略的に使い、

「自分たちでシステムを作り、認めさせる」

リーダーシップこそが、今まさに必要な能力です。

 

学ぶべきは「政治戦略」と「データ戦略」です。

 

自分たちからアカデミックにデータを示して、

さらに、無理やり政治に乗せないと、

いつまでたっても不安定のままです。

 

診療看護師のアウトカムを

「何年後に、何でどう評価するのか」

というデータ戦略を、今から明確にしないと

ずっとデータがないまま、批判され続けて、

結局、また自律性のないシステムにされてしまいます。

 

とくに、医療費の費用対効果に関する研究、

最終的にはRCTによる非劣勢試験が必要でしょう。

 

長くなりましたが、役に立つ情報だったでしょうか?

どうなる診療看護師!?

 

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