NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

准看リスペクト

日本看護系大学協議会によると

現在、全国265校もの大学に

看護師養成課程が設置されています。

 

すんごい数ですね。

急激に増えすぎな気がしますが。

 

自分の世代も

看護の大学化がほぼ完了した頃で、

授業では普通に質的研究や量的研究を学び、

看護師と保健師まで習得できたので、

正直、学歴的な苦労はあまりわかりません。

 

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ストレートで大学院へ行った身分なので、

同級生になった中堅看護師や師長から

昔は看護で大学なんて数えるくらいだったし、

専門出身や准看出身の人たちは、

働きながら苦労して大卒とって

やっと大学院に入学したと聞かされて、

かなり驚いたことを覚えています。

 

大学院で必須であった看護教育の授業で

なぜか准看護師教育のプレゼンを担当させられ、

興味ないなー、と思いながら調べていくと、

GHQの圧力から医師会の利権との対立まで

なんともドロドロした長い歴史があり、

今の看護の課題は、歴史から来ているんだーと、

興味深く、准看護師を考えるようになりました。

 

ということで、今回は

准看護師に関する個人的な思いを書きたいと思います。

 

個人的な思いは、以下の3点です。

 

  • すべての准看護師に最大限のリスペクトを送ります
  • 准看護師の多様性は興味深く、大好きです
  • 長期的に、准看護師は看護師へ統合されるべき

 

理論とか提言ではなくて、

自分の感情とナラティブです。

 

先ほどの話に戻ると、

エリート教育を受けた世代である自分は、

# 准看護師は廃止すべきだ

# 看護師教育はすべて大学化すべきだ

と声高にプレゼンしていましたし、

実際にそうあるべきだと思っていました。

 

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大きな転機は、この2年後に訪れました。

 

北海道の臨床で働いていた自分は、

大学教員より授業がうまくなりたいとの思いで、

僻地の小さい看護学校に教えに行っていました。

 

北海道は広大で旅行気分で楽しかったし、

教えながら自分が勉強できるのも好きでした。

 

まだ臨床経験もあまり積んでいない時期だったので、

もっぱら解剖生理学、公衆衛生学などが担当でした。

 

教えるというより、学生と一緒に考えるスタンスです。

 

すると、科目的に教えれる人材が少ないので、

しだいに准看護師学校や正看護師になる学校に呼ばれ、

そこで、楽しい経験をたくさんしました。

 

「思い出話1」

 

ある学校では、学生の年齢層が

自分の母親とほぼ同じ(50代、60代)という

スーパー楽しい状況もありました。

 

「あら、うちの息子と同い年じゃないー。」

「先生、冥土の土産に正看護師免許ちょーだい。」

「老眼でメガネかけても、黒板の字が見えづらいの。」

「あたし糖尿病で、先生が今説明した薬飲んでるわ。」

 

搾りたての牛乳、あめ、みかん、シャケ一匹など

様々なものをもらいましたね(笑) 

 

あの世代は、

どうして人に食べ物をあげたかるのでしょうか。

 

その年齢で勉強しようと思うこと自体がすごいし、

人間的に懐深く、若造の自分を可愛がってくれました。

 

滴下数の計算(分数)がなかなかできずに、

1日中そればかりやったこともあります。

 

朝から晩まで、みんなで国家試験の問題を解いて、

70歳の学生が正看護師に合格してくれたのは、

ぼくの大きな自慢であり、人生の宝物です。

 

准看の彼女たちのほとんどは、

老健や老人ホームで働いており、

「だれも光を当てようとしない日本の医療」

を影でしっかり支えていました。

 

この事実を知った時ほど、

現場を知らないエリート(自分)は

クソだなと思ったことはありません。

 

看護や人生について

いろいろと教えてくれた彼女たちに感謝です。

 

だから、ぼくは

  • すべての准看護師に最大限のリスペクトを送ります

 

誰も光を当ててくれないけど、

今現場にあなたがいるから、

この世界がキレイにまわっています。

 

ぼくは、その事実を知っています。

 

感謝しかないです。

ありがとうございます。

 

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 「思い出話2」

 

また、前科者の若者を

看護師にしたのもいい思い出です。

 

彼は若いころに悪さをしまくって、

刑務所に入りましたが、

出所してすぐに母親をがんで亡くし、

自分の行動を悔い改めるとともに、

母親に何もしてやれなかった悔しさから

看護師なろうと決意したのです。

 

突然、予備校に来て、 

「オレって看護師になれますかね?」

と聞くので、事務から呼ばれた自分は、

「そりゃ、そうだよね。」

と彼と一緒に法務省へ確認の電話を

かけることからスタートしました(笑)

 

いろいろ調べてもらって、

「服役して罪を償っているので、

 看護師になることは可能です」

という答えをもらい、

a、b、cから勉強し直して、

准看護学校に晴れて合格しました。

 

その後は、老健で働きながら

夜間の正看学校に行き、

「なんで、介護保険料取られるんだよ!」

と怒っていたので、

「それは40歳になったから。そこ国試出るからね。」

と教えてあげて(笑)、

まわりの若い学生についていくために

意外と必死に勉強して、ついに国試も合格しました。

 

ぼくの方が感動して、泣きまくっていましたが、

本人は、給料が上がることを喜んでいました。

 

自分の青春時代で、大切な思い出です。

 

これほどの多様性を受け入れてくれる

准看護師制度には本当に感謝しましたね。

 

准看護学校には、

大卒の学生やサラリーマン、シングルマザーと

人間的に成熟した人も多く、自分が勉強になります。

 

チャラチャラした大学生よりも

人生抱えて准看を目指している学生の方が

よっぽど教えがいがあります。

 

だから、ぼくは

 

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「長期的な課題」

 

個人的には准看護師制度には

非常に思い入れがありますが、

患者の生命予後を考えると

# 准看護師は廃止すべきだ

# 看護師教育はすべて大学化すべきだ

という主張は変わりません。

 

多くの国際的な研究によって、

看護師の教育年数が長くなればなるほど、

患者の死亡率が減ることがわかっています。

 

もちろん、個人差もありますが、

全体しては看護師教育を

2年より3年、3年より4年とした方が

患者へのケアの質はよくなり

予後が良くなるという結果が出ています。

 

実際には准看護師の2年間教育で

現場に出す教員もジレンマがあると思うし、

「違う免許で同じ仕事内容、けど給料は低い」

という、ゆがんだシステムは変えるべきです。

 

実際に、台湾やタイは大学化を進めているし、

イギリスも准看護師養成は終了しています。

 

日本でも神奈川県、福井県沖縄県では

准看護師養成を終了した代わりに

正看護師養成所を増やして、

看護師不足が起きないように配慮しています。

 

特にTVキャスターで、

長年准看護師問題を考えてきた

神奈川県の黒岩知事は、

医師会の理不尽な猛反対にも負けずに、

准看護師から正看護師養成への

教育改革を成し遂げています。 

 

ちなみに、黒岩知事は

ナースプラクティショナーにも詳しく、

そこらへんの医師・看護師よりも

的確な発言をしているので、

興味がある方はググってみて下さい。

 

なので、医師会みたいに理不尽に

ただ准看護師養成反対への反対を唱えるのではなく、

「どうしたら様々な社会的背景を持つ人材が、

 正看護師になる教育へもっとアクセスできるのか」

という問題に置き換えるべきでしょう。

 

働きながら行けるように夜間でもいいし、

生活費と学費への大きな奨学金が必要でしょう。

 

准看護師から正看護師になる教育でも

さらにアクセスしやすい環境を作るべきでしょう。

 

  • すべての准看護師に最大限のリスペクトを送ります
  • 准看護師の多様性は興味深く、大好きです
  • 長期的に、准看護師は看護師へ統合されるべき

 

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思い出話になりましたが、

たまたま関わった准看護師教育から

多くの大切なことを学びました。

 

地方の老人病院などの

本当の現場も知らないのに、

偉そうに理想のみを並べる

エリートだけには、なりたくないです。

 

准看護師は、タフな環境にも関わらず、

キャリアップをよく考えていると思うし

(というか、考えざるを得ない状況)

大学院にも准看護師からの人がいて、

認定看護師や専門看護師になった人も数多くいます。

 

新しい未来の看護は、

准看護師を含めた看護の多様性が

創っていくと信じています。

 

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