Marshall Islands
アクウェ!!
(マーシャル語のあいさつ)
マーシャル諸島に1ヶ月滞在していました。
久しぶりの古巣での感染症対応は楽しかったけど、
けっこうシビアな状況で、かなりショックを受けました。
マーシャル諸島(Republic of Marshall Islands)は、
日本とハワイの間に位置し、ハワイから6時間超の飛行です。
戦前は日本が30年間統治して、
戦後はアメリカが核実験しまくった
なんとも罪悪感を感じる島でした。
29個の環礁で構成される国で、
すごい地形だけど、しっかり国際空港もあります。
まず移動が大変で、週に数便しかない、
ハワイからグアムまでいろんな島に寄っていく
アイランドホッパーの飛行機で行きます。
CDCとWHOは、この地域で潜在的に
ジカ熱(Zika)が発生していると考えているが、
実際の状況とケースが把握できていないので
その調査の応援が本来の目的でした。
ただ、けっこうな発展途上国で、
A型肝炎(Hepatitis A)と流行性耳下腺炎(Mumps)
が爆発的にアウトブレイクしており、
急遽そちらの対応をすることになりました。
CDC、UNICEF、WHOの合同プロジェクトです。
個人的にはやっぱりCDCが疫学文化で大好きです。
こういう景色見れるのは、
疫学者って最高だなと思う瞬間です。
誰もたどり着けない大自然です。
そろそろ病院から出て、疫学者になりませんか?
無事に到着したが、 本当に蒸し暑い。
なんとマーシャルの大統領と同じ飛行機でした。
保健省とCDCクルー迎えに来てくれてくれます。
さっそく車内でブリーフィングして、自分の宿に向かいます。
疫学者の仕事を紹介します。
長いステイで、ホテルはしんどいので、
病院の裏にある私立教師用のアパートが宿となります。
まずは、部屋の大掃除をして、
自分が安心できる環境を作ります。
リスクをマネジメントしつつ、
安心できる環境を自分で作る。
サバイブする能力が一番大切です。
ただ頭が良い、英語で論文書けるだけでは、
到底到底、通用しない世界ですからね。
次に、歩きながら生活環境のアセスメントです。
南の島だけど、けっこう状況は悲惨で、
印象としては、アジアより
アフリカに近い公衆衛生でしたね。
日本が建てたマジュロ病院の管理部門に机をもらいます。
100床の病院で、看護師もJICAで入っています。
医療レベルも、かなり介入が必要でしたが、
今回の任務ではないので、口出しはせず。
右奥がベテラン疫学者の机で、
左のmacとコーヒーがあるのが岡田の机です。
ボスの女性疫学者がすごくて、
って言ってました。ええ!?
検査技師がバックグラウンドなので、
検査の精度などについて学べて勉強になりました。
多様性でシナジーする疫学が大好きです。
現在の状況のブリーフィングと役割分担です。
3つも同時にアウトブレイクしているので、
コテコテの状況に頭を悩ませます。
西アフリカで起きたエボラでもそうですが、
アウトブレイクは表面的な問題に過ぎなくて、
根本的な原因は、貧困や無教育などの社会環境の脆弱性です。
A型肝炎は疫学カーブが落ち着いて来ているので様子を見て、
ジカ熱はWHOとの政治もあるので、ボスの疫学者に任せて、
プロトコールを叩き込まれているので、
Emergency Operation Center(緊急対応センター)を設置し、
モニタリングの方法とアウトカム評価を設定して、
ホワイトボードで定期的にデータを更新して共有します。
数字での評価を最初に考えるのが
日本との大きな違いですかね。
疫学者も「感染症何%減りました」と
データで報告しないと給料出ないですからね。
耳下腺炎だと病院受診のケースと
学校の耳下腺炎による欠席を指標としました。
そもそもワクチン接種率が低く、
MMRワクチン(日本では使っていません)の在庫がない。
おたふくで致死性になる確率は相当低いですが、
麻疹をカバーしていない状況はけっこうヤバい。
日本から麻疹がパラオに持ち込まれて、
アウトブレイクで妊婦と胎児が死亡した歴史もあります。
ジカ熱対策で入っているUNICEF職員に相談しよう。
シナリオもいくつか考えて対応を練りますか。
シナリオA(最速・最善の対応)
シナリオB(最も起こりやすい状況)
シナリオC(最悪の状況とカバー)
日本大使館にもいちおう連絡します。
週に数回関係者を集めて、連絡会をして、
またアトランタ(CDC本部)にも報告します。
ウイルスのPCR検査はハワイに依頼することが多かったけど、
政治的なやりとりはグアムとすることが多かったです。
ダーティーな交渉もよくありますね。
ダーティーでダークな勉強も不可欠ですね。
アウトブレイクではコミュニケーションが大切で、
ランチにたまたま入った中華料理レストランで、
さりげなく作ったチラシを発見して、うれしいです。
なんとしても早くワクチンを調達しないと。
事務方のアドバイスにより新聞でも説明します。
疫学カーブそのまま載せているのもレアですね。
ま、週に1回しか新聞発行されないけどね。
アウトブレイクしすぎて、もう感染する人いなくなって、
自然と落ち着いてきた印象です。新規感染はほぼ大人です。
環境はけっこう過酷で、インターネットはほぼなく、
水は雨水を蓄えたもので、停電も週に数回あります。
太平洋上の孤島で、野菜が育つ訳はなく、
生野菜ほぼない状態で、かなりしんどかったです。
すべて輸入なので、コーヒーすら高い。
ちなみに、マグロはタダ同然で、食べ過ぎました。
日本とハワイのマグロもここから来ています。
携帯も通話のみでSIMカード手書き。
離島は電話通じないので、ラジオで離島看護師と会話です。
デスクワークに飽きたら、病院散策です。
最近、やたら臨床に戻りたいです。
まずは、ICUで、日本が寄付した人口呼吸器を発見。
医師でも呼吸器を設定できる人は、数人でした。
アジアでは今、クリティカルケアが勃興しており、
日本のICU看護はアジアにすごい貢献できると思います。
英語がんばってくれー。
ICU(2床)は、いろいろと口出ししたくなりましたが、
今回は何も言わずに、院長にのみ改善要求しました。
次は、アメリカの核実験のヒバクシャと
その子孫たちのケアを提供している
177 Health Care Planです。
第五福竜丸知っていますか?
医療よりも大切なので勉強した方が良いです。
やっぱり救急外来が一番居心地良かったです。
出稼ぎのフィリピン人医師が多い中、
ハワイ大学卒業のアメリカ人医師、
Dr. Davidが楽しそうに黙々と一人、
アメリカ式ERを提供していました。
(写真、許可済み)
ホットドッグ早食いで3年優勝しているツワモノです。
お前は絶対出るなよ、と言われました(笑)
看護師もERだけ、よく教育されていて、
ハワイ大学に進学して、この病院のリーダーになってほしいです。
日本が作った初療室です。日本っぽい。
マイナーサージェリーもやっていました。
看護師が40代男性のSTEMI(心筋梗塞)を見つけたので、
「日本だとカテですぐに治せるんだよねー。」
といったら、非常に驚いていました。
カテがない中、治療する方が大変だと思いますが。
4歳、女子、発熱の肺炎疑い。
あれ、これ結核っぽいけど!?
こどもの環境は、けっこう悲惨でくらいましたね。
台湾が最近寄付した高性能CTスキャン。
たいぶ画像良かったけど、読める人があまりいない。
1ヶ月で感染症アウトブレイクの結果を出すのは、結構大変だけど、
医師たちの希望もあって、さらにHIV対策も同時に考えることに。
プログラミングでデータを分析して、レポートを書いて、
国連系に報告し、ART(抗HIV薬)を供給してもらいました。
日本の若手医師からアドバイスもらえて、マジで助かりました。
ジカ熱疑いも、すべてハワイの精密検査で否定され、
WHOのVector Control(蚊の専門家)もウイルス発見できず、
そのままサーベランス継続でまとまりました。
個人的には、ジカ熱はあると考えており、
症状が出にくいから受診もしないだろうし、
病院でもデング熱として診断されているのだと思います。
病院からワクチンと専門家を送り、収束できるといいな。
UNICEFがワクチン供給を約束してくれたけど、
なかなか手続きが進まずに、滞在最終日に来ることに。
なんとか、安心ですね。
2万人弱の人口で1200人超が流行性耳下腺炎になる
アウトブレイクは、かなりレアで深刻です。
根本的な社会課題を解決しないと、
また違うカタチで健康被害が出て来ます。
戦前の日本の統治にも責任があるでしょう。
やることなくて、夜9時には寝てましたね。
また週末は、近くのビーチでシュノーケリング。
ダイビングもひさびさしたかったけど。
南の島のラジオは、なぜかどこでも
レゲエをかけてくれるので、
音量調整できない中国製ラジオ
を聴きながら、家事してました。
けっこうハードコアな選曲だったね。
ということで、無事に1ヶ月の
マーシャル諸島の滞在も終了です。
途中でも右往左往するけど、
なんだかんだ最後はまとまる
いつもの国際保健疫学でした。
疫学者の仕事を知ってもらえたら幸いです。
UNICEFの研究員と一緒に見送りされました。
マーシャルの人は、すごい良い人で、
最後は歌とダンスで見送ってくれました。
長期的な公衆衛生カイゼン戦略も
恩返しにレポートとして今度送ります。
コモル・タタ
(マーシャル語でありがとう)
やっと日本で夏休みだけど、
その前にハワイで仕事がたくさんあります。
果たして、終わるのか!!