ポータブル・スキル
日本の医療現場では、
管理者・教育者が50代・60代であることが多く、
若い医療者と価値観が異なりすぎて、
世代間衝突となっているケースが多々見られます。
特に、看護管理者・看護教育者のなかには、
「最近の若いものはダメだ!」
と、ひたすら連呼する方もいますね。
それは、自分が時代についていけなくなり、
自分の立場をなんとか保持・正当化するために
若い世代を批判するのかな、と勝手に分析していますが。
看護部長・看護系教授が
30代や40代と若い人になれば、
超楽しい職場になりそうだし、
イノベーションがガンガン起きそう
と考えているのは、ぼくだけでしょうか。
特に、ぼくらの時代では、転職が当たり前です。
ずっと同じ職場にいるのは、
あんまキャリアにならないし、なんせつまらないし、
女性なら結婚や出産もあるだろうし、
自由に移動・転職できるのが看護の魅力だと思います。
その流れで、若い世代には転職を前提とした上で、
「他の病院でも使用可能な = ポータブル」スキル
をたくさん身につけてほしいと考えています。
- ポータブルスキルを身につけろ!
医療・看護では、
「自分がどんな医療技術(スキル)を持っているか」
が自分の価値を決めるといっても過言ではありません。
例えば、
# 静脈ルートが確保できる。
# 膀胱留置カテーテルが挿入できる。
# 人工呼吸器が管理できる。
といった感じでしょうか。
(本当はもっと詳細な内容が必要です。)
おそらく病棟の基本的なケアだけでも
100〜200個程度のスキルが必要だと考えています。
特に、海外での就職では、
CV(履歴書)の他に、Skill Sheet(スキルシート)
を添付することがあります。
自分もオリジナルのSkill Sheetを作成してあり、
採血などの簡単な手技から、
敗血症ショック(Septic shock)の管理まで
自分がデキル事が一つ一つ丁寧に記述してあります。
実際、けっこうなボリュームで、10枚程度あります。
このシートを使って、
採用や給与を交渉することが多い、と言われています。
呼吸器がみれると、けっこう給料あがるという噂が・・・
例えば、自分自身も現場にいるときは、
胸腔ドレーンをみれるようになりたいと
がんばって準備する物品をノートに書いて覚えたし、
シュミレーターで練習したり、
先輩受け持ちのドレーン入っている患者みたりして、
いざ本番に臨んだものです。
ただし、ここで注意してほしいのは、
「その病院だけでしか使えないスキルは、
将来のキャリアにまったくつながらない。」
ということです。
どこの臨床現場を見ても、不思議に思うのは、
「その病院ならでは、あまり意味のない謎のルール」
が、やたらと多いことです。
その行為が安全かつ確実にできれば、
ある程度、個人個人のやりやすい方法で良いと思いますが、
ローカルルールを強要されますよね。
ぼくの場合、胸腔ドレーンの固定のしかたで、
病院のやり方、本と比較すると非効率だなー
と思いながらも、しかたなく従っていました。
その病院にいる間は、
ローカルルールは大切にしてもよいと思いますが、
それが他の病院でも有効だと考えないことです。
つまり、その手技の
どこが普遍的なポイントで、
どこがローカルルールなのか
しっかり見極めることが大切です。
今行っているスキルの
ポータブルな部分とポータブルでない部分を
判断する作業が非常に大切であるということです。
それは、写真付きの本でチェックしてもよいですし、
友人と「うちの病院ではさー」と議論してもよいでしょう。
みなさんが「これ、おかしいなー」と日々思ってることは、
その病院特有で、世間からすると「おかしい」確率が非常に高いです。
また最近は、セット化されているものが多いので、
セットの中身に何が入っているのか覚えることも
今後転職した際に生きていく知識となると思います。
転職先では、違うキットを使用していたり、
またまたキット自体を採用していなくて、
必要なものをひとつずつ用意する状況かもしれません。
ぼくの時代は、
CVC(中心静脈カテーテル)セットはなかったので、
CV入れるとき、よく三活のキャップ忘れていたのも
なつかしい思い出です。
ぼくらの世代は、
3〜5年で次の目標に向かって、
どんどん転職していく時代になったと感じています。
ただ、システムが旧体制のままで、
その病院でしか使えないスキルが、
あたかも他の病院で通用するかのように教えられ、
実際に強制的に行われているのが、事実でしょう。
だから、ぼくたちは、
「他の病院でも使用可能な = ポータブル」スキルを
自分で判断して、積極的に身につけていくことが、
転職してもスムーズに働けるコツになり、
最終的には自分のキャリアにつながると考えています。
絶対的に正しい事はないので、
時折、自分のスキルも書き出して、
本や他人と比較して相対化する必要があるでしょう。
ということで、
- ポータブルスキルを身につけろ!
でした。
にしても、いつになったら、
医療の世界は若返るのでしょうか?