CIA NURSE
今日は学生への授業中によく使う
看護の小ネタを少し提供します。
世界で仕事していると
・空港の検疫
・開発銀行系
・コンサル
・保健省官僚
・小学校
・大使館
いろんなところで看護師を見かけて、
「こんなところにも看護師!」
という驚くべき状況に遭遇して、
お互いに超仲良くなり、いろいろ議論しています。
日本では病院で働く看護師のイメージがほとんどですが、
世界的には病院以外の「地域で働いてる看護師」が非常に多く
健康を専門とする「数の一番多い」専門職として
住民からの信頼は医師よりも厚い現状です。
アフリカでは保健省大臣(日本でいう厚生労働大臣)に
看護師を置いてHIV管理で大成功をおさめている国もあるし、
看護起業における戦国時代の到来を招いています。
(負ける気しないけどね。)
紛争地におけるプロジェクトでは
開始初日にそれぞれの専門チームリーダーが
(軍事、衛生、統計、情報、疫学、臨床、ロジなど)
8-10人くらい初対面で集合して、
今回の目的と方法についてブリーフィング(会議)を行います。
どういう方法で安全に調査を行うのかを確認し、
それぞれ危惧していることや連携についてバンバン発言します。
その中で情報担当が参考人として召喚する
「明らかに現地情報に詳しすぎる現地人看護師」が登場して、
現地のリアルな情報について共有するパターンがあります。
タイムリーな情報、完璧なプレゼン、
ほとんどのチームリーダーが唸るレベルの情報です。
ブリーフィングの休憩時間に
「お前は本当はいったい何者なんだい?」
と自分が笑いながら聞くと
「私はただの現地で働く看護師よ。」
と普通に返してきます。
「どうしたら、そんなに情報が得れるのか?」
「どうしたら、そんなに英語がうまいのか?」
「どうしたら、そんなにプレゼンが的を得ているのか?」
どう考えても、
特殊なトレーニングを受けたからでしょう(笑)
明らかにただ者ではなく、
怪しい臭いがプンプン臭ってきます。
本人は否定しますが、その人は業界で有名な
「CIAに雇われてスパイとして働く看護師 = CIA NURSE」
に他ならないのです。
これ、マジです。
CIA NURSEという仕事もあるのです。
看護の仕事の可能性は「無限大」ですね。
ちなみに、アラブの巻物を頭に巻いて、
真っ黒でヒゲモジャで小汚い自分も
「実はおれも看護師なんだよね。」
と言うと
「まさか、ウソつかないでよ。」
と簡単に流されます。おい!!
「日本人」と「看護師」には
到底見えないのが寂しいところです。
では、「CIA NURSE」がいるのは
本当の話なのでしょうか?
実はアメリカでは、非常に有名な話として知られており、
未だに大きな問題となっているのも事実なんです。
話は、2001年9月11日の同時多発テロまでさかのぼります。
ご存知の通り、この後アメリカはアルカイダのトップである
「ビンラディン」を最重要人物として指名手配します。
ビンラディンもプロであり、かなり潜伏がうまく、
パキスタン近辺にいるとの有力な情報があるものの
10年近く経っても足取りがつかめない状況が続きます。
しかし、その状況は
ひとりのCIA女性捜査官の執念によって打破され、
さまざまな情報の結果、ビンラディンが潜んでいる
大きな豪邸をついに住宅街の中に見つけることができたのです。
ただ完全にガードされており、いくら上空から観察しても
通信役の下っ端がたまに見える程度で
なかなかビンラディン本人がいる確信が持てません。
確実な証拠がない限りは他国の領地を襲撃することはできません。
そこで、あらゆる仕掛けでこの家を捜索していきます。
あまりにも長いので省略しますが、下水の便まで調べたらしいです。
そこで困ったCIAがついに
「CIA NURSE」
を使った作戦を展開していきます。
まずは、この住宅街に時間をかけて、
「偽の予防接種キャンペーン」を展開していきます。
ビンラディンが住む住宅街の小児に関して予防接種を行えば、
自動的にビンラディンの孫も予防接種を受けたいと思い、
家に看護師を入れて、予防接種を受けさせてくれる戦略だったのです。
もちろん、CIAでトレーニングされたスパイ看護師なので、
注射の隙に、ビンラディンの孫のDNA組織を採取して、
CIAに持ち帰ってビンラディンのものと照合して
潜伏の信頼性を少しでも高めようと考えたのです。
「看護師はとても住民に信頼されている」
ということを利用した作戦でした。
文献としてもいろいろな本で
この状況が描かれています。
このビンラディン襲撃を映像化した
有名な映画があるので、TSUTAYAやGEOで
是非DVDを借りて見て下さい。
一瞬だけ、このCIA NURSE作戦が
映像として出てきます。
普通に映画としても最高におもしろいです。
なんせノンフィクションですからね。
ゼロ・ダーク・サーティ コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2013/09/03
- メディア: DVD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
ぼくたちがどういう環境で
仕事しているかもイメージしやすいと思います。
アメリカで、このCIA NURSE作戦が
有名になった本はこちらです。
引き込まれて一気に読んでしまいました。
洋書で日本語訳はないみたいです。
Manhunt: From 9/11 to Abbottabad - the Ten-Year Search for Osama bin Laden
- 作者: Peter Bergen
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2013/05/02
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ぼくはマニアなので、
気になる事象があると、様々な方向から検証するために
同じ事象を異なる視点から描いた本を
複数読んで、できるだけ客観視する指向性があります。
このビンラディン襲撃も別の視点から検証したいので、
この実際に襲撃に関わった兵士が書いた洋書も読みました。
ぼくはこの本の方が大好きで、
ビンラディンを襲撃した世界最強の特殊部隊員が
実際のその経験を書いたものです。
DEVGRU(SEALs Team SIX)の訓練や思考法が手に取るようにわかり、
ビンラディン襲撃に特殊な犬を連れて行ったり、
その際に最新のステルスヘリが墜落してしまったことも
詳細に書いており、極秘の内容公開に最高にしびれました。
アメリカでも売れに売れていました。
これも日本語訳ないです。
個人的には、本はこっちがオススメです。
No Easy Day: The Firsthand Account of the Mission That Killed Osama Bin Laden
- 作者: Mark Owen,Kevin Maurer
- 出版社/メーカー: Dutton
- 発売日: 2012/09/04
- メディア: ハードカバー
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
ちなみにミリタリーベース(基地)で
普通に犬を見かけるようになり、
特殊部隊は「犬」を使って、行動しています。
世界は市民が知らぬ間に変わり、
そんなことが普通に行われている世界になっていたんです。
で、作戦はどういう結果だったのか?
それはDVDで見て下さい(笑)
実は、CIA NURSEが予防接種を打とうと用意している際に
ビンラディンの息子が出てきて、「ダメだ。帰れ。」と言い、
結局、DNAサンプルは採取できずに失敗に終わります。
作戦自体は失敗に終わりますが、
敷地内に入れた数少ない機会であり、
襲撃に関してかなりの情報を得たと言われています。
CIA NURSEの成果ですね。
かなりのトレーニングしたと思われるし、
CIAには看護師スパイ教育担当の看護師がいると
ぼくは確信しています。
どんなトレーニングを受けているのか気になりますね(笑)
看護師が「スパイ」って、CIAさすがの発想です。
その後、確信が得られないまま、オバマ大統領の判断で
" Operation Neptune Spear "(海神の槍作戦)が行われ、
特殊部隊が秘密裏にパキスタン領土に侵入して、その家を襲撃して
" Geronimo "(ビンラディンのコードネーム)を殺害して、
死体を回収して、911のひと区切りになったと言われています。
これで概要をどうぞ。
ぜひ、週末は最高のノンフィクション映画
" Zero Dark Thirty "をお楽しみ下さい!
ゼロ・ダーク・サーティ コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2013/09/03
- メディア: DVD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
実は、話には続きがあります。
アメリカ軍の強襲が行われ、
ビンラディンが殺害された後に、
このCIA NURSEによる予防接種が
CIAによる作戦だということが広まり、
この住民は基本的な医療に対して、
大きな不安を頂くことになったのです。
つまり、すべての看護師が
CIAスパイに見えるようになってしまったのです。
従って、住民は信頼できないので
病院にも行かないし、予防接種も受けない、
という悲惨な状況になり、
ポリオが劇的に流行して
去年は多くの小児の命を奪ってしまったのです。
これにはWHOも激怒して、
一時期WHOのHPにこの悲惨な状況を
CIAへの当てつけとばかりに大きく掲載していました。
今はNGOなどが協力して介入していますが、
未だに住民の拒否反応が強く、状況は打破されていません。
WHO EMRO | Pakistan | Countries
やはり、住民から信頼される看護師を
スパイとして利用してしまった代償は
あまりにも大きすぎたと言えるでしょう。
ぼくの友人のパキスタン人看護師は
未だに激怒しています。
アメリカも責任を感じて、資金を出しているので、
早く状況が改善することを心から祈っています。
いかがでしたでしょうか?
世界ではすごいことが起こっており、
こんな小ネタたくさん持っています(笑)
病院勤務に飽きた看護師みなさん、
CIAに転職なんていかがでしょうか?
世界には、かなりのCIA NURSEがいると言われています。
あなたの周りにいる先輩看護師や友人看護師も
もしかしたらCIA NURSEかもしれませんよ!?
よく思い出して下さい。
あの人は、やたら休暇に海外に行ったり、
いつもPCイジったりしていませんか?(笑)
本当に気をつけて下さい。
CIA NURSEには。
世界は市民が知らぬ間に変わり、
そんなことが普通に行われている世界になっているんですから。