読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

日本の看護研究への「2つの提言」

いつも海外で仕事していて思うのは、

「日本の看護研究は世界的に通用するのか?」

という海外からの視点による評価です。


自分自身も中東で仕事して5年が経ち、

政府関係のファンドも含めて

「アフリカ・アジア」や「医療」に関してアドバイスして、

さまざまな投資案件について議論しています。


投資判断は、お金に関するシビアな議論なので、

「数値 = エビデンス」の提示が必ず求められて

医療よりもよっぽどEvidence Basedな世界です。


その中で残念ながら

「日本の医療」や「日本の看護」が投資対象として

議論されたことはありません。


日本の医療はすばらしいが、規制だらけで

アジアに比べて成長スピードがはるかに遅いし、

日本の看護は存在感すらなく、

「投資されない=未来がない」

と言われているようなものです。


f:id:yuito33:20131120144813j:image


この世の中は資本主義であり、

「投資以上の成果を提出する可能性」

がある分野が劇的に発展していく流れは

今や暗黙の世界共通ルールであり、

どんなに文句を行っても変わらないルールになります。


ルールに文句を言うより、

ルールをどう使っていくかを考えた方が懸命でしょう。


この流れで日本の看護研究に言いたいことは、

「いつまで看護研究として

 インタビューやアンケートばかりを行っていくのか?」

ということです。


もちろん、

質的な研究が非常に大切なことは

誰よりも理解しているつもりです。


ただ、具体的にいうと

「日本で10人を対象に行った質的研究が

 世界的に評価される可能性はあるのか?

 世界的なインパクトとなり得るのか?」

ということなのです。


英語での記述は大前提としましょう。


日本にいる数人の質的研究における「天才」の除いては、

その研究の99%は世界的には価値が

ほとんどゼロだと判断されるでしょう。


残念ながら、それが現実です。


そして、この低い成功確率に

誰が投資したいと思うのでしょうか?


その中で「日本の看護研究」について

2つの提言をしたいと思います。


f:id:yuito33:20131120183539j:image


1) ラボを持った看護研究室を増やすべきである。


海外での研究に対する投資を分析して

看護と関わる分野に焦点を当てて見ると

・ゲノム

・ロボット

再生医療

・IT

脳科学

という領域に莫大な投資が行われていることが

自然な流れとして理解できます。


Googleは常時血糖測定できる

コンタクトレンズの特許を取ったし、

最近のシリコンバレーベンチャー

ヘルスケア(健康産業)狙いで、

数々の大きな投資を引き出しています。


これらは健康を専門とする看護師には

将来的に仕事を奪う敵となる可能性が高く

常にベンチマーキングする必要があります。


ただ、この危機感を日本では聞いたことがなく、

日本看護界もいつの間にか利権の上で安泰に

「自分の仕事がなくならない」

と思い込んで生きており、そんな状況に

「逆」に危機感を感じずにはいられません。


将来的にぼくたちの仕事を奪う脅威は

同業者の医師や介護師ではなく、

テクノロジーという他の産業そのものなのです。


f:id:yuito33:20131120153322j:image


そこで、やはり必要になってくるのが

Labo(実験室)でしょう。


シリコンバレーでも投資として受け取ったお金は

ほとんどが開発費として、特にLabo開設に使用されます。


もちろん、Laboから新しいテクノロジーが生まれるので、

Laboという開発の場がないことは致命的となります。


日本の看護界は実験医学やLaboに対して、

よくわからない否定的な価値観を持っており、

「それは医者がする研究でしょ?」

「実験をして看護にどう生かすの?」

という「昭和的な発言」をします。


もはや研究方法は医学と同じでいいと思うし、

何も知らないからこそ、否定的になるんだと思います。


海外では遺伝看護師が普通に試験管をふるし、

最近はICUで大きな問題になっている筋力低下に対して

(Critical Illness Myopathy)

採血や尿検査、筋電図、筋生検でデータを集めて、

Ratで確証実験している看護師チームもあります。


生物学的・実験学的な研究デザインを使用した

筋力低下によるQOL低下を防ぐという看護独自の視点で

本当に有意義な研究だと思います。


ぼくも臨床でエコーを当てますが、必ず

「それは医師の仕事でしょ?」

という看護師がいて、思わず笑ってしまいます。


患者のためなら医師・看護師関係なく

「スピディーにできる人がやる」

ことが大切であって、「スキルミクス」という考え方です。


同じ理屈で生物学的・実験学的な研究デザインも

「医師の研究でしょ。」

と看護から今まで盲目的に切り離されていたのでしょう。


時代は、だいぶ変わったのです。


f:id:yuito33:20131121100400j:image


この分野で、世界的に有名なのは

東京大学の真田弘美先生でしょう。

東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野


実験系看護だけでなく、理工学的展開まで行っており、

最近洋書で、これらをまとめた本を出しています。


MAAAAAAAADDですね。

NUFF RESPECTです、POW POW。


買おうと思ったら

発売日まもないのに品切れです。


日本の看護研究で数少ない世界をリードしている人材ですね。

マジで最大限に尊敬しています!!


天皇皇后両陛下に会って、

看護研究について解説したという伝説も残っています(笑)


f:id:yuito33:20131120224208j:image


ただ最近は、日本でも急性期領域では

実験系医学とコラボして、

生物学的研究を行っている若手も増えたし

日本看護科学界雑誌でも5年くらい前から

これらの研究が原著として掲載されるようになりましたね。


看護の行為はもっともっと

Ratなどで実験をしたり、生体データで評価する必要があるし

医学と同じレベルで会話ができるような

強いエビデンスとなる研究を行う必要があるし、

そのために実験室(Labo)を持つ

看護系研究室が増えなければならないと思います。


そうすれば世界的に評価される、

インパクトを与える看護研究になり得るし

そのLaboで生み出されテクノロジーやエビデンスは、

投資対象として最良のものになるでしょう。


ちなみに先日、中東の病院に

指導に来ていたアメリカ人ナースは

「私は週3日はLaboで脳神経細胞の実験研究をしていて、

 週2日はICUで働いて、脳梗塞の患者にケアしているの。

 その研究成果を還元するためにね。

 つまり、脳細胞を保護するために血圧管理やリハビリを

 行っているの。とっても楽しいわよ。あはは。」

と言っておりました。


世界レベル、ハンパない!


f:id:yuito33:20131121110650j:image


2) 大規模RCTを組んで、アジアのリーダーとなるべきである。


もうひとつ思うのが、日本人は文献レビューして

エビデンスをまとめるのは非常に得意であるが、

自分から大きな研究を組んでエビデンスを作りに行くことは

非常に弱くて、とても残念だなと思います。


アメリカやヨーロッパの看護師から

「日本の看護って何しているの?」

「日本でも看護研究やっているの?」

と頻回に聞かれます。


それくらい存在感がないということです。

(元ICN会長の南先生と災害の兵庫大学は存在感大ですが。)


例えるなら、ぼくらが韓国の病院がどんなカンジで、

韓国の看護師や看護研究がイメージできないのと

同じ感覚だと思います。


所詮、Far East(極東)で島国、日本語なんです。


しかし、

これだけの人材とこれだけの患者がいて、

質が均等でかなりコンパクトな国なので、

大きなRCTを簡単に組めると思っています。


f:id:yuito33:20131121222216j:image


それこそ、看護協会などがデータベースを作って、

倫理審査もまとめて代行して、研究を行いやすい環境を作れば

いきなりn = 10000以上の臨床RCTが組めて、

これだけのPowerがあれば、

あらゆる看護やケアの疑問が3年で白黒決着付くし、

一流雑誌にバンバンpaperを載せることも可能だと思います。


・世界的に評価される

・医師と同じレベルで議論する

・国際的なガイドラインに採用される

にはやはり大きなRCTを組まなければなりません。


日本でしっかりしたRCTを組んで成果を出せば

今度はそのまま隣国のアジアに展開することが可能で、

Korean, China, Taiwanなどと、すぐに多国間多施設研究が可能で、

それこそ世界的に評価される、

インパクトを与える看護研究になり得るし

投資対象としては成果と介入に大きな期待ができるので、

投資を日本看護界に呼び込むことが可能となります。


できそうで、できないのはなぜなのでしょうか?


こんな小さな島国の内側で競っていても

足を引っぱり、何も生み出さないだけです。


それよりも看護界がみなで一致団結して

他分野も巻き込んで" ALL JAPAN"として

外の大きな敵と戦わないと、小さな国の未来はないでしょう。


f:id:yuito33:20131120151326j:image


今回は日本の看護研究への2つの提言してみました。


1) ラボを持った看護研究室を増やすべきである。

2) 大規模RCTを組んで、アジアのリーダーとなるべきである。


いつも思うのですが、こういう話を実行しようと思うと

誰が窓口になり得るのでしょうか?


日本看護全体として20年後を見据えた

「看護研究のアジェンダ」を制定して、

ビジョンとリーダーシップを明確にする必要があると思います。


そうすれば投資対象として

少しは議論できる要素になるのですが。


日本の看護研究が

世界的な存在感を出せる日を心待ちにしています。


f:id:yuito33:20120411173602j:image