NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

看護系大学院への道2

前回からの続きです。


2) 大学院へ行くべきか。


2つ目のメリットしては、

「看護系ネットワークに参加できること」

があげられます。


どの業界もそうだと思うのですが、

仕事は結局、ネットワークでまわっています。


特に、この業界は本当に狭いので、

ネットワークにつながることが

仕事を得る上で重要な要素になります。


大学教員募集の連絡が「頻回」に回ってきたり

ビジネスの案件で遠いところから依頼されたり、

また看護系雑誌や本に記事を書いている若手の著者は

ほとんど知り合いであるといった状況です。


もちろん、自分もこの見えないネットワークに

特殊な仕事を依頼することもあります。


専門的なことを言うと、

大学院進学(=教育)は時間とお金の「投資」であり、

「投資した資源が、将来的にどの程度で回収できるか?」

が意思決定において大きな因子となります。


自分は大学院の恐るべき高い高い授業料の50%は、

このネットワークや人脈への参加料であり、

将来2倍以上で回収可能な「最高級の投資」だと考えていました。


このネットワーク参加料に対して

金額的には100万円の投資でしたが、

仕事の依頼などで既に200万円以上の回収はできており、

もとは十分とれたと思っております(笑)


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自分は、集団でいることが好きではないので、

このネットワークとはいい距離感で、

淡いつながりとして、Log in & Keep しています。


ネットワークと同義語ですが、

モチベーションの高い環境に放り込まれることで

自分が必死に成長できることも大きな魅力です。


自分は新卒で大学院に入り、同じ研究系では最年少であり、

何よりもまわりの人材の多様性と能力に驚きました。


勝手な推測によると(笑)

当時の修士過程では30代が最も多く、

次に40代で、20代は少数派であったと思います。


看護教員、行政の課長、師長など

一定の看護師・保健師キャリアを積み上げて

現在第一線で活躍している人が多く、

逆に素人的な自分が目立っていました(笑)


大学以上の教育では、原則として主体性によって

自分で勉強することがほとんどであり、

大学院の授業にも期待していませんでした。


大学院では講義を受けた記憶はほとんどなく、

事前に文献読みまくりハンドアウトやパワーポイントを作り、

院生が発表して、ひたすら議論することが多く、

「視点や思考過程」を教育された気がします。


そんな中で、第一線で活躍している人と

一緒に議論できたので、かなり実力がつきました。


看護理論の精神看護への拡張性については

目の前にいる精神科CNS学生に聞いてみたり、

看護管理に旧体制ぶりについては

師長で看護管理専攻の学生にぶつけてみたり、

最高の意見を最速で手に入れる理想環境でした。


ただ環境はいろいろな因子に影響されるので、

大学院へ過度の期待するのはやめた方がいいと思います。


看護系大学院へ進学するメリットは、

・就職可能なポストが格段に広がる

・特に大学教員や一般企業は規則的生活で魅力的

・ネットワークに参加でき、仕事がまわってくる

・大学院進学は良質な投資対象であると思う

・一緒に勉強できる人材が最高の教科書

ということでしょうか。


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今度は大学院進学のデメリットを考えてみましょう。


漠然とした不安は、具体的なものにして、

それぞれのシナリオを組み立てると解消されます。


まずは、

「大学院に入ることが難しい」

ということがあると思います。


大学院入試は大学受験よりも簡単なので、

それは次の受験勉強の章に書きます。


また個人的な体験から。


サラリーマンの中流家庭で育った自分は、

大学まで公立であり、私立なんて考えてことすらなかったので、

私学の看護系大学院に入る人は、お金持ちで

生粋のエリートしかいないと勝手に思っていました(笑)


しかし、入ってみると驚きで、

ストレートの大学卒ではない「たたきあげ」が一定の数おり、

大学卒の自分がエリートと言われていました。


大学院に来ている人の教育過程は大卒が半分くらいで、

「専門卒で臨床後に大学に編入してから来た人」も多く、

「准看から正看を経て、放送大学で学士を習得した人」も複数おり、

「普通大学を出てサラリーマンから、看護の専門卒を経てきた人」まで

多種多様な人生の道があり、バイタリティーや人間性で圧倒されました。


というか、これは時代の流れで、

自分の世代は看護系大学なんて150校以上ありますが、

ほんの20年前なんて数十校しかなかったのですから、

世代による学歴の違いは、看護が高等教育化した歴史の現れでしょう。


苦労を重ねてキャリアップして来た彼らは、

今では大学で助教授になったり(早すぎでしょ!)

敏腕CNSとして活躍しています。(カッコいいな!)


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大学院受験には原則大学卒の学士が必要とされています。

大学卒業ならスムーズに受験可能です。


専門卒であれば、大学に編入するか、

通信制大学で学士を取ることが必要となります。


放送大学が安く、臨床勤務しながら取りやすいみたいなので、

利用する人が多いと聞きますが、自分は詳しくはわかりません。


放送大学看護学士習得についてのHP

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あとは大学毎に受験資格を審査しており、

専門卒でもある程度の臨床経験や研究実績があれば、

学士と同等であるという評価を受けることが可能で

そのまま大学院に入学できる場合もあるみたいです。


ただ狭き門なので、気になる方は

学校に問い合わせてみるのが一番でしょう。


そう考えると、

大学院に入ることが簡単である、とは言えないが、

思ったほど難しくない、ことがわかると思います。


今年も専門卒の40代の教え子が、

働きながら2年かけて放送大学で学士を取り、

春からCNS課程の大学院生になりました。


50代で夜勤したくないとのモチベーションから

5年はがんばると負のモチベーションからの成功でした(笑)


まとめると

・大学院入試は思ったほど難しくない(次回参照)

准看護師から大学院を卒業してCNSになった人もいる

・専門卒なら、学士編入か通信制で学士が原則必要である

・よくわからなかったら、直接学校に聞くとよい

といったとこでしょうか。


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次に

「お金と時間がかかる」

という声も聞こえて来ます。


確かに、大学院は2年だし、

学士を手に入れることを考えると4年くらいかかります。


これはどうにも変えられません。


意外と知られていないですが、

大学院は働きながら3年間で卒業することも可能です。


これは以下の解釈によるものです。


大学院設置基準 第14条「教育方法の特例」

「大学院の課程においては、教育上特別の理由があると

 認められる場合には、夜間その他特定の時間又は時期

 において授業又は研究指導を行う等の

 適当な方法により教育を行うことができる。」


「社会人大学院生」と言って

フルタイムの学生が2年間で修了する内容を

働きながら3年で修了するというカリキュラムは

たくさんの看護系大学院に用意されていると思います。


自分の記憶では、

水曜の午後と土曜日に全教室共通の講義があり、

社会人は毎週水曜の午後と土曜日に休みを取り、

その時間に授業を受けて、その他の仕事で空いた時間に

担当教員に専門科目を指導してもらって単位を取り

大変ですが働きながらもスムーズに卒業していきます。


もちろん、職場から同意をもらわないといけませんが、

1年目に単位をある程度取ると、2年目以降は楽なり、

自分の時間に自分の研究を進めれるようになります。


働きながら、母親しながら、大学院修了するという

スーパーウーマンもいて、感心していました。


「やれば、なんとかなるのよ。」

すごい名言ですね。


不安なく大学院に入る人はいないと思います。

時間や生活費、将来のこと、不安だらけですが、

「大学院を修了しないと次がない。」

という思いで、みな必死に修了していきました。


世間しらずだった自分は、完全に大学院をナメていたので

幾度となく痛い目に合いましたが(笑)


働きながら3年で修了できるなら、

お金と時間は効率的ですよね。


かなり大変で、度胸が必要ですが。


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お金に関しては、

国公立では、入学金30万で授業料年間60万で

2年間だと合計150万くらいらしいです。


私立だと、

入学金40万で授業料年間120万円に加えて

施設使用量が年間15万円あり、

2年間で合計310万くらいになります。


もちろん、

学校により異なるので、調べてみて下さい。


いずれにしろ、高いですね。私立は2倍ですか。

それは倍率も高い訳ですね。


中流家庭で公立大学で特に学費が安かった自分は

親に話すと唖然としていましたが(笑)


しかも本代が高いし、研究費もかかり、

大学院在学中は金銭的にはかなり厳しい状況でした。


フルタイムの学生は、みな週に1回くらい夜勤バイトして

本代と研究費を稼ぐのが一般的ですが、

後半は論文に忙しくてバイトできなくなります。


大学院は本当に大変で、

「お金も時間もかけて

 なんでこんなに追い込まれているの?」

という事態に遭遇し、自分自身も

「こんなところに長くいられねぇ。

 けど、大金つぎこんでいるから修了だけはしないと。

 さっさと卒業してやるぜー!」

という負のモチベーションだけで修了しました(笑)


時間を節約するなら、働きながら3年間で

お金を節約するなら、国公立を選ぶ

ことがポイントでしょうか。


大学院に進学するデメリットは、

・大学院受験資格である学士を取るのが面倒

・最低でも2年間かかり、働けない状況になる

・働きながら3年間でも良いが、かなり大変である

・修了するのが信じられない程ひたすら大変

・160万円以上のお金が最低でも必要になる

ということで、自分の将来ビジョンと照らし合わせて

深く考えることは大切です。


いち看護師を続けるのなら、進学は不要だし、

それ以外の可能性を探しているのであれば、

大学院へ行くデメリットは、別の見方をすれば

「必要な投資」

であり、あと必要なのは「勇気」と「覚悟」だけでしょう。


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