NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

看護系大学院への道1

ひさしぶりに東京でゆっくりしており、

六本木や浅草に行って、普通に観光しています。


東京はマジでカッコいいですね。

(写真は極寒時期の北海道です。)


また近いうちに長期の海外が始まりますが、

ネットが高速なうちに、長い話題を書いていきます。


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今回は、一番質問が多い

「看護系大学院へ進学するためには?」

という質問に答えていきたいと思います。


ここで示している

大学院とは修士課程(=博士前期課程)であり、

5年以上前の自分の経験を基盤としているので、

内容が少し古いこともご了承下さい。


(1) 自分自身の経験


まずは、自分自身の経験から。


ぼくは大学に進学した当初から

「国際的に活躍できる公衆衛生の研究者になる」

と決めていたので、専門領域は「看護」よりも「保健」でした。


ただし、公衆衛生の領域では、

絶対的に大学院へ行くことが必要であり、

大学卒後そのまま大学院へ進学することが一般的で

自分自身も大学3年生の時から大学院を考え始めました。


同じ領域の先輩たちは、

生物学的統計の教室に進学することがほとんどです。


ただ、自分としては

「すぐに海外のフィールドで研究をしたい」

「できたらマクロで専門的な視点で看護も学びたい」

という思いがあり、別の道を探し始めました。


当時は「公衆衛生大学院」は本当に少なく、

「看護系大学院」は応募の時点で臨床経験が必要であり、

話を聞きに行っても、応募できない状況でした。


どうしようもなく、

自分ではまったくラチが空かなかったので、

ひたすら率直に人に聞きまくる戦略を取りました。


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研究者として超尊敬するカナダ人の先生は

「卒後ストレートで大学院は世界的に普通だと思うよ。」

とさらっと言ってくれたし、

疫学者の公衆衛生領域の先生は

ユイトは自由な学校じゃないと無理だな。

 聖路加とか、いい人材育ててるよ。」

とぽろっと話してくれたことから、道が見えて来ました。


ほとんどの看護系の大学院募集要項には、

臨床経験何年以上と書かれており、

応募すらできない状況にショックを受けました。


確かに「看護は臨床の学問である」ことは理解できますが、

すべての人が臨床に出る必要はないし、

臨床経験はあった方が良いですが、

それだけで受験資格を狭くするのは良くないと思います。


自分みたいに抽象思考操作が得意で

あまりコミュニケーションが得意でない人は、

概念的な研究や研究のための研究を続けて

臨床と同じように科学的な看護としての成果を

出すことができるのにな、と当時は不満を感じていました。


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沖縄人と化していた自分は、

「聖路加?男でも入れるのかい?

 名前は聞いたことがあるけど、まったくわからないな。」

とネットで調べていると「国際看護」があり、

インド、エルサルバトル、インドネシア、ケニア

とけっこう自由な研究を行っており、

20代前半の自分は大きく心動かされました。


おそるおそる今のメンターのひとりである

国際看護担当の教授にメールで連絡すると

「新卒で大学院?大歓迎です。

 研究志望なら臨床行くよりも

 早く大学院を出なさい。」

という趣旨のアメリカナイズされた返信が来て、

アメリカ帰りはやっぱり違うなーとやたら感動して、

大学のメンターに相談して、受験したという流れです。


自分の経験をまとめると

・大学院に行くことが前提だった

・海外でフィールド研究を行っている研究室が少数だった

・新卒を取ってくれるところがほとんどなかった

ということで、道がひとつしかなくて

深く悩んだことはなかったです(笑)


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(2) 大学院に行くべきか?


これは究極の問いだと思います。

一緒にメリットとデメリットを考えてみましょう。


最初に声を大にして言いたいのは、

「大学院を出たからと言って、突然何かが変わることはない」

ということです。


すべては行動しだいですが、

「修士を持っていると、可能性が少し広がりますよ。」

その程度だということが言いたいのです。


修士を修了したからと言って、

偉いわけでもないし、デキルわけでもないということです。


結局、修士はカードであり、

そのカードをどう使うかはあなた次第です。


ただ、個人的には、

・可能性がほとんどない状況

・可能性が少しある状況

の2つはとても大きく違うと思います。


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その可能性とは、就ける仕事の種類だと思います。


まずはメリットのひとつとして、

「大学院を修了すると働ける現場が格段に広がる」

ことを一番の理由にあげたいと思います。


修士課程修了生の就職先は、学部に比べて多岐にわたります。


もちろん、専門看護師(CNS)は現場に戻るし、

教員になる学生や博士に進学する学生がほとんどです。


しかし少数ですが、

厚生労働省の官僚 !?

・医療系コンサル !!?

・製薬会社   !!!?

など、同級生として、

「そんな就職もあるのかい!!」と驚くくらい

意外な職場へとバラけていきます。


確かに、厚生労働省の医系技官の採用が余っていますよ

というメールが普通にまわってきましたが。


自分は修士修了時に

適当にインターンして、数年で会社作りますと言ったら、

「はい?、、、それは就職しないということですか?」

と進路担当に驚愕さえたのを覚えています(笑)


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・行政の専門技官

・医療会社における医療機器開発

・一般企業における専門職として就職

などは、原則「修士」が必要となり、

それがないと応募すらできません。


これは世間の普通の就職も大学卒が普通となり、

大学院を出て始めて「専門」と言える流れを受けて

現在のような状況になっています。


その他、ほんの一部ですが、


外資系企業における外国人の健康管理

パイロットなどの特殊健康管理

・健康アプリ開発会社でのアドバイザー

・健康食品会社での開発

・製薬会社での治験研究支援

国連系の事務官

訪問看護企業

ベンチャー立ち上げ


など「隠れ看護師」という仕事で

修士修了後に多岐にわたって仕事をしている人もいます。


これらの仕事では応募の最低学歴が「修士」であり、

自分で採用を見つけてくることも必要です。


特に国際保健における国連系組織などでは

「博士修了」が前提条件になってきており、

「博士」がないと本採用は厳しく、

「修士」でもインターンが厳しい時代になってきました。


まとめると、看護系大学院を修了すると

本人の能力によるところが大きいですが、

病院以外ので就職先が格段に増えることが

一番のメリットと言えるでしょう。


もちろん夜勤がなくて、平日出勤のみで、

年収は一概には言えませんが、

しっかりした就職先では、看護師の1.5倍くらいでしょう。


個人的には修士を終えると

大学で教員になって教育に関われるのも

大きな魅力だと思っています。

(大学はめんどくさいことが多いのですが。)


ちいさな可能性を大きな可能性にする

相当の努力と実力も必要ですが、

まずは、ちいさな可能性を

手に入れることが不可欠です。


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