7:1看護見直し
今回は具体的な内容を書いていきます。
現在は7:1看護という制度が施行されて
看護師争奪戦が未だに繰り広げられており、
看護師が仕事選びに困ることは少ないと思います。
ただ、様々なデータを解析していくと、
この数年以降は看護師が過剰になり、
希望する仕事や病院に就けないという状況に陥ります。
看護師が仕事を選ぶ時代から
看護師が仕事に選ばれる時代の到来です。
本当の意味でのキャリアアップが
必要不可欠となってきました。
ホントに!?と言われそうなので、
詳細を提示してみましょう。
今年の3月5日に自分は出張先のスタバで、
朝のコーヒーを飲みつつ、日本経済新聞を開くと
「診療報酬改定、7:1看護病床数を大幅削減へ」
という衝撃の1面記事に引き込まれました。
この日経新聞の記事です。
医療費抑制、効果は不透明 診療報酬の改定告示 :日本経済新聞
この記事では、
今回の平成26年度診療報酬改定で、
現在7:1看護を実践している病床数を
36万床から9万床減少させるという
政策方針が取り上げられていました。
つまり、
7:1看護を実践している病床が3/4になるわけで、
25%減ということになり、10:1看護に戻るということです。
(あくまで政策の中でそう考えています。)
7:1看護導入は、もちろん必要でしたが、
完全に政策誘導的なミスで、
・地方や在宅から看護師を急性期病院が奪った
・急性期病院でもないのに7:1を実践している病院が激増した
という大きな2点が問題になりました。
地方の看護や在宅は人が集まらなくなり、
都市部ではすさまじい看護師争奪戦が起き、
看護界はほとんどが疲弊して、
結局得したのは、看護人材派遣会社だけでした。
そして、必要のないところまで7:1看護配置を認めたことで、
国民の医療費を無駄使いしてきた面も否めません。
従って、今回はそれを是正しようと
無駄な7:1看護病床を削減する方針となったのです。
7:1看護を算定できる基準が厳しくなりました。
<7:1看護配置の新算定基準>
(1)平均在院日数
・一般病床 18日以内 ←(旧)19日以内
・特定機能病院 26日以内 ←(旧)28日以内
・専門病院 28日以内 ←(旧)30日以内
(2)看護必要度
・原則、看護必要度基準:15%以上 ←(旧)10%以上
(A得点:2点以上かつB得点:3点以上)
詳細はこちらの厚生労働省HPで。
※看護必要度も新しくなっています。
・平均在院日数が短縮された
・看護必要度による重症度の要求も上昇した
という2点が大きな改正点になります。
ただ、個人的な直観としては、
この2点だけで25%も減るかと言われると
そこまで減らない気がしますが。
公衆衛生的には、非常に正しい政策だと思います。
ただ1点、非常に怒り心頭しています。
この政策は別の意味から捉えると
「今はそんなに看護師いらないから
別の場所に移ってもらいましょう、
または、もとに戻しましょう。」
ということに他なりません。
つまり、
看護師で仕事からあぶれる人が出るということであり、
看護界からするとあまりメリットがない政策になります。
本来であれば、政治力学的に見れば、
7:1看護はどのような形態の病床でも必要な最低ラインであり、
すべての病床に7:1看護を認めるべきであって、
さらに重症な病床では5:1看護が必要だと、
新たな看護配置基準を政策として採用させるように
政治的な圧力をかけるべきだったのです。
看護協会や看護系議員は
いったい何のために存在するのでしょうか?
海外で仕事してて思いますが、
民主主義の中において、いくらキレイごとを言おうと
政治は結局、利権争いであり、
政治的力量が弱い団体が搾取されるのは世の常です。
では、政府の予測が当たった場合に、
どのくらいの影響が出るのか2つ試算してみましょう。
(1)病院の減収はいくらになるのか?
7:1看護配置によって、
病棟に何人の看護師が必要かという計算は
けっこう複雑な式計算で、今回は省略します。
原則として、
看護独自の診療報酬はほとんどなく、
看護は毎日の入院基本料に含まれています。
看護行為や看護の質はあまり問わずに、
どんな質の看護師でも一定の「数」がいれば、
1ベッド当たり入院にかかる基本料として、
一律に提供される費用のことです。
<入院基本料:14日以内>
・7:1 看護 = 15,660円
・10:1 看護 = 13,110円
ぼくたちのデータによると、経営の良い病院だと
1ベッドあたり毎日3万強以上を売り上げているので、
その売り上げの約50%程度は看護師による入院基本料となり、
大きな収入源になっていることは明確な事実でしょう。
ただ看護師の行為は診療報酬上、
「質」ではなく「数」でしかカウントされていないので、
あなたがいくらがんばっても、
あなたがいくらデキル看護師でも、
給料があがらないのはこの診療報酬制度によるものです。
現在の診療報酬制度において、
看護師として経営にインパクトがあるのが、
(1)コスト削減
・資材の効率化
・合併症予防
(2)在院日数の短縮
・早期離床
・退院調整
という2軸の看護介入であり、
かなり病院経営が安定することがわかっています。
(詳細は企業秘密ですが。)
本題に戻りましょう。
7:1看護から10:1看護に戻すと
「1日1ベッドあたり2550円」
のマイナス収支になることがわかります。
100床の病棟で、1年間365日とすると
2550円×100床×365日=9300万/年の減収になり、
日本の平均的な病院を350床とすると
約3億2500万/年の減収になると予測できます。
話はさらに複雑で、
看護師が減った分で人件費はかなり減りますが、
重症患者が見れなくなり、加算や検査による減収が見込まれ
総合的に350病床で約2億円の減収になると予想しており、
病院経営はかなり厳しくなることでしょう。
重症患者をしっかりとって、
7:1看護を継続していく方法が無難であると思います。
(2)看護師はどのくらい移動するのか?
これもまた複雑な計算になりますが、
基本的な部分は省略させて頂きます。
日本は200-300床くらいの小中規模病院が多く、
統計により350床の病院で病床稼働率90%を
日本の平均として計算していきます。
<看護師の必要人数:350床で稼働率90%>
・7:1 看護 = 約228人
・10:1 看護 = 約160人
最低限、病床稼働において
この看護師数が必要という計算になります。
実際は、ここに含まれない外来や手術室などの看護師、
質を担保するための余剰看護師が必要となりますが、
移動にはあまりインパクトがないので省略可能とみなします。
すると350病床の病院が
7:1看護→10:1看護に変更すると
「228人 - 160人 = 68人」
の看護師が必要なくなり転職を余儀なくされます。
かなりの数で驚きますね。
あくまで計算上ですが。
厚生省の試算によると、7:1看護病床数は
36万病床から27万病床まで9万病床削減するので、
全体としては何人の看護師が放出されるのか
計算によって予測してみましょう。
先ほどの350病床で看護師が68人放出されるので、
1病床あたり、68/350人(=0,1943人)放出される計算になります。
従って、27万病床削減されると、
68/350人 × 90,000 = 17,486人
(1病床あたりの放出) (削減される病床数)
結果として、
「約1万7000人が解雇され、他の場所に移る」
という試算になります。
これは、
1年分の新卒の国家試験合格者の約35%に匹敵する数であり、
看護師が仕事と病院に選ばれる「看護師過剰の時代」
の到来を予期する事実だと考えています。
ちいさな診療報酬改定のニュースですが、
7:1看護病床が9万床削減され、10:1看護に戻ると
・病院が年間約2億円以上の減収になる
・約1,7万人の看護師が放出され、再就職が必要となる
という未来が訪れることが予測されます。
実際に、ここまでの影響はないと思いますが、
看護師過剰の時代になったという流れは変わらないと思います。
選ばれる看護師の時代の到来です。
さて、みなさんはどうやって
自分のキャリアアップをすすめていきますか?