フィリピン4
無事に中東での仕事も終えて、
また帰国の路についています。
中東の紛争関係の人は
ヨルダン国の首都アンマン (Amman, JORDAN)
をセーフスポット (Safe spot) としています。
Queen Alia International Airport で
いつもカタール航空機を見るたびに、
「今回も無事に帰れる!」
と叫びたくなります。
本当の意味で
命をかけて世界と戦っています。
中東はまた今度として、
フィリピンの続きを書いていきましょう。
そんなわけで海と山を爆走ながら、
住民の健康状態と医療機関のサービス状況を
量的データと質的データの両方を使って、
Surveyしていきました。
1) 住民の生活
統計的にフィリピンは、
1日1$以下で生活する人が
東南アジアの中でも有数に多い国です。
首都マニラのゴミ捨て場で生活する
スラム街のこどもを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、雨と海と山があるので、
水と食料に困ることはあまりなく、
それなりに豊かにゆっくりと暮らしています。
東南アジアはどこも同じ感じでしょう。
食事については、
田舎だとコーラが20円くらいで、
定食が40円くらいで食べれます。
移動もバイクで10円くらいで、
自分自身も1日$1=100円で
普通に生活できていました。
お金だけでは
生活の豊かさは測定できないのです。
家も家族の手作りで、
トイレは離れに穴掘り式のがあり、
井戸水の上水道で下水道はなく
料理も炭のかまどでしたが、
自分も楽しく清潔に生活できました。
服は台湾から流れてくる古着で、
お母さんがスコールが来る1分前に
洗濯物をささーっと取り込んでいて、
その気候にあった生活文化も継承されています。
電気は発電機を日没から3時間だけ動すので、
みんなでいっせいにケータイを充電して、
風呂や洗濯、勉強などは明るいうちに
すべてこなすのが発展途上国流です。
こんな写真みると、ないものねだりで、
日本よりよっぽど幸せじゃないかなと思います。
日本人は働きすぎで
看護師はお金はあるけど忙しくて、
本当に大切なものを見失いがちです。
自分自身もこういう地域に行くたびに
本当の豊かさとは何か
いつも深く考えさせられます。
自分もやることないので、
午後3時からビーチで寝転んで、
冷えてないビールを片手に読書してました。
あとは散歩ですね。
完全に恐がられていますが。
看護も国際保健も
ひとりの人間として「人生の勉強」ができるので、
とても素晴らしい仕事だと思います。
2) 健康の現状
衛生状況と栄養状態がかなりカイゼンし、
予防接種や初期医療などが一般的となり、
フィリピンの田舎でも小児や感染症による死亡は
かなり減ってきた印象がありました。
(詳しい解析データ待ち)
新たな健康問題としては、
都市部での交通外傷による死亡と障害
Non Communicable disease(慢性疾患)
今後の課題となるでしょう。
(これは別のデータ待ち)
都市部では交通ルールはもはやなく、
車やバスが100km超えで暴走して、
毎日交通外傷が頻発しています。
外傷医やTrauma-ICUの資源があるのですが、
なんせ救急車到着が現場到着まで1時間くらいかかり、
たいがいDOA (Dead on Arrive)で
救命困難例ばっかりでした。
外傷に関しては、事故の予防啓発と
救急搬送システムを整える必要があり、
日本の公的な救急搬送管理システムを輸出できたら
画期的な国際貢献になると思います。
またフィリピンは昔からさとうきびが取れ、
料理の味付けに砂糖を使う文化が定着しており、
糖尿病の潜在的有病率はかなり高いと思われます。
なぜか牛肉にも砂糖をかけて食べる!
しょっぱいし甘いし、味がよくわからん!
学校の健康教育においても
手洗いなどの衛生教育が確立された段階で、
まだ栄養教育まで達していない現状です。
保健省の政策的な影響で
診療所の看護師が少しづつ
地域で糖尿病の教育を行うようになってきました。
見えなくて痛くない糖尿病の怖さを
イメージで理解させるのは本当に大変です。
先進国でも行動変容するのは難しく、
教育が未確立で、腹一杯が基本な発展途上国では、
行動変容まで辿りつくのは、さらに難しいです。
今何か、新しいイノベーションが待たれています。
ひとつ明らかなのは行動変容するためには
必ずコミュニケーションが必要ということです。
3) 医療の現状
生活する分には問題ないのですが、
医療を受けるとなると、
市民感覚からすると医療費が高く、
Self medicationが基本となります。
「症状→他人に相談→薬局」
という流れになり、カイゼンしないと
「病院受診→処方箋→薬局」
という医療受診となります。
自分はどこの国や街にいっても
薬局に行って、自分自身で薬を買って、
お金や製品の質を確認することを習慣にしています。
質問しまくり、ただの不審者ですが
貴重な情報をいっぱい得ることができます。
フィリピンでは
薬はインド製のジェネリックがほとんどで、
日本では処方箋がないと買えないような薬まで
普通に買えて、質も悪くないものばかりです。
アジアでもアフリカでも
市民から普通に抗生剤の名前とか
鎮痛薬の成分などがスラスラでてきて、
医療が高くて受けられないと、
自分で判断し情報を得る能力が
自然と発達するのだと感心します。
日本では逆に医療が安く受けられるので、
すべて医療者にお任せで
健康に対する主体性がなく
風邪やこどもの不機嫌で
夜中の救急外来受診も多いですね。
やっぱり健康に関する新たなコミュニケーション方法
(New Strategy for Health Communication)
が今後のイノベーションの柱となりそうです。
最終的には
「予防」と「医療保険」という話になり
今回のフィリピン政府が管轄している
PhiliHEALTHの適応をどう拡大していくのか、
また同時に医療保険の経営をどう安定させるのか
という主題にたどりつくわけです。
PhiliHEALTHは誰でも入れる(はず)
国民健康保険的なもので(政府の会社が経営)
掛け金も少なく、医療費も約半額になるものです。
こどもと感染症を基本としたシステムでしたが、
妊婦やケガにも拡大して、
今後の長期的なビジョンを立案している最中です。
今度の大きな医療の課題となることは間違えないです。
医療や保健サービスを提供するPublicと
ビジネスや経済に精通したPrivateのPartnershipにより
医療システムを万人に医療が提供でき、
かつ保険として永続できるものにする
Public Private Partnership(PPP)が
今後のスタンダードとなると信じて、
民から医療を変えると仮説を立てて、
今自分はビジネスの場にいます。
簡単にですが、
今回の調査での印象をまとめてみました。
EvidenceではなくてImpresssionかよ!?
と思う人も多いと思うかもしれません。
しかし、
今までのEvidenceはあたりまえのことを
ただ証明したにしかすぎないものばかりです。
次の10年の新しいエビデンスは
今のまさに現場の中にあり、
現場の人の印象が
次のEvidenceが生み出すと強く確信しています。
現場で働いている人の印象や直感である
「これって、実は意味あるんじゃない?」
というところから研究が始まり、検証され
次のEvidenceとして確立されていくのです。
だから、わざわざ現地に行って、
現地の人と生活をともにして、
自分自身というフィルターを通して、
新しい何かを探しているのです。
交通事故も食事文化も薬の値段も
やっぱり現場に行かないとわからないものなのです。
音楽も医療も人生も
やっぱり現場に答えがあると思うのです。