NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

フィリピン3

無事に中東到着です。

日本から11時間のフライトでした。


年5-6回往復しているので

もはや慣れましたが。


現在は自分が中東で拠点にしている

カタール国の首都ドーハ」(Doha,QATAR)にて

トランジット(乗り換え待ち)です。


まさかの8時間待ち。


アジア・中東・アフリカばかりなので、

ヨーロッパに行く観光客が

心からうらやましいです。


誰か北欧の統計の仕事とかくれませんかね(笑)?



さて、続きになります。


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まずは、調査地へ行くために

バスにて山を爆走していきます。


スタッフの車に乗らず、

現地のバスに乗ると移動や生活などが

本当の意味で理解できるので、あえてバスで移動です。


本来、砂漠やサバンナの調査では、

ランドクルーザーを2台くらい借りて

機材とスタッフをのせて爆走します。


荷物はスタッフの車にのせてもらって、

バスが山道を100km/Hくらい出して走るので、

あっという間にスタッフの車が見えなくなりました。


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熱帯雨林の景色が新鮮で、

「雨がふること」は、

健康に多大なインパクトを与えます。


年中、雨が降ることにより、

米や野菜がたくさん育てられ、

水も常に手に入る反面、

街の洪水や蚊の大量発生により

マラリアデング熱の流行を引き起こします。


個人的な印象としては、雨による

災害や疾患のマイナス要素を考慮しても、

やっぱり「雨が降る」ということは、

食料と水の面で大きなプラスになり

健康の大きく向上させると考えています。


1990年代までアジアとアフリカは

(当時はAsia & Africa = double Aと呼んだそうです)

そんなに保健指標が変わらなかったのですが、

この20年でアジアの保健指標が劇的にカイゼンし、

その原因は、

「政治的な安定」、「勤勉さ」、「水」

という3大要素だと習いました。


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生きた鶏を持ってバスに乗るこども

米袋を他の村まで運ぶ流通システム

ラジオでPSYのGentle manがかかると

バスの中でも踊り出し、こっちを見る文化、

(おれは日本人で、このインターンが韓国人ですよ!)

90分バスに乗っても80円の料金

きれいに着ている古着

バスに乗るだけで、

こんなにも現地の生活がつかめます。


公衆衛生分野には

さまざまな専門家がおり、

学校の先生や経済学者、

しまいには下着の専門家!まで

生活すべての視点で「健康」を考えており、

枠がなくて、インスピレーションがわきます。


国際保健をやっていると

この生活を包括的に捉える視点が

看護の視点そのままであることに気づかされます。


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とんでもない山道を登っていくと

その先に集落があり、診療所もあります。


発展途上国の医療システムは

大きく3段階に分けることができます。

(あくまで一般的に)


1) Dispensary


日本語でいう「診療所」でしょうか。


簡単な検査キットや縫合セット、

基本的な薬がおいてあり、

村に一箇所づつある

看護師がひとりいる簡素な医療施設です。


Primary Health CarePHC)の拠点であり、

病気になったらまずここに来るし、

けがをしてもここに来ます。


要するに初期治療の第一線です。


またワクチンを打ったり、

予防教育や生活指導なども行う

公衆衛生機関でもあります。


この山の診療所にも

本当にいろいろな症例が来ていました。


ここは入院設備はなく、そういう場合は

自宅に往診して経過観察とする

発展途上国では当たり前な

先進国では超シームレスに思える

医療を行っていました。


だって、

予防も診断も治療も在宅も

すべてひとりの看護師が

普通にこなしているのですよ!


マジで劇ヤバです!!


マラリアデング熱などの熱帯医学を

症状とバイタル、身体所見、ヒストリー

だけで診断・治療していく技術は

ほんと勝てないなと思います。


縫合もうまいし、

やっぱり経験した症例数が

圧倒的に違いますね。


今回は、

ひたすらデング熱の診断と管理について

こっちから質問しまくっていました(笑)


市民からも愛されている場所で、

政府と民間(主に教会資本)が半々くらいでしょうか。


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2) Health Centre


日本語の「保健所」とはやや違います。

診療所よりも少し大きな施設で、

バスで1時間の範囲くらいに1個づつあります。


レントゲンがあったり、分娩室があったり、

医師も少しいて複数の外来や処置室、

入院設備をもつ医療機関になります。


今回は診療所では手に負えない、

・骨折と伴う外傷

デング熱で血小板下がった患者

HIV管理が必要な患者

マラリアで入院が必要なこども

などが入院していました。

(ただ家族看護です。)


妊婦検診は診療所で行いますが、

分娩が近くなると、ここの助産師さんに通って、

ここで出産し、乳幼児検診などもここで行います。


ここでも看護師が外来を受け持っており、

専門的な治療が必要であれば、

併設している医師外来へ行きます。


医療人材資源が少ないので

誰も医師や看護師といった免許で規定せずに、

みんなで相談して、スキルミクスしていく

市民が効率的に健康になるシステムで動いています。


どこかの、何年もNPの議論して、

しまいに潰れた国とは大違いですね。


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3) Hospital


最後に病院となり、

手術や合併症管理が必要となる患者が入院する

高度な医療施設となります。


ほとんど

診療所 → 保健センター → 病院

と手に負えなくて紹介されてきます。


日本みたいにいきなり「病院」はなくて、

近いし安い、仕事も継続できる「診療所」

が大好きで一番人気があります。


病院自体も

・ District Hospital

・ Region Hospital

・ National Hospital

の3段階に分かれることが多いです。


日本のイメージでいうと

District=市、Region=県、National=国

となり、日本の医療システムと同じですね。


いま統計が手元にありませんが、

看護師がほとんど大学を出ていた気がします。


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山が終わったと思ったら

今度は場所を変えて、

海へ出て離島の調査をします。


もうおなかいっぱいの

セブ・パシフィック航空です。


8:00発のはずが、7:00すぎに発となり、

「予定時刻よりもそんなに早く飛ぶのかい!」

(もちろん普通に来た人は次の便です。)

定時性を超えたスケジュールで、

早め早めに移動することの大切さを実感です。


発展途上国では、たった5分の遅れが、

5時間の遅れになることもしばしばです。


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今度は西の方から南へ移動します。

(本当はもっと移動していますが、省略)


温かいし、海も山もあるし、

自然がキレイなフィリピンが

だんだん好きになってきました。


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空港に着くと、現地スタッフがおり、

そのまま港に連れて行かれ、

昼ごはんを食べたあとに、

今度はボロボロの船で島へと向かいます。


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どんだけ遅いんだ、と思う船に揺られて、

全身びしょびしょになりながら島を巡ります。


教科書的にはタガログ語と英語が

フィリピンの公用語になりますが、

実際は現地語がまだまだ使われており、

民族もたくさんいるので、

具体的な言語化はできませんが、

性格や言葉の違いが興味深かったです。


かれらも山の民、海の民で

全然違うんだよ、としきりに話していました。


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今回、一番興味があったのが

「看護師の人材移動(Migration)」です。


アメリカの学会に行っても

フィリピン人ナースはたくさん見るし、

中東でもフィリピン人ナースはたくさん見るし、

世界を一番股にかけて仕事しているのは

「フィリピン人ナース」で間違えないでしょう。


詳細は不明ですが、フィリピン政府関係者によると

100万人以上のフィリピン人ナースが

海外に出稼ぎに行き、母国にお金を送金している

という、ものすごい現実があります。


つまり日本の看護師と同じ程度の看護師数が

フィリピンで教育された後に

海外で外資を稼いでいるという状況なのです。


看護師による海外からの送金が止まったら、

フィリピンは国家として経済的に行き詰まる

とも言われています。


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もちろん、英語がスゲーできるので、

日本にはまったく目をくれずに、

アメリカに向かって、

怒濤のサバイバル精神を発揮して、

成り上がっていくわけです。


鶏を飼っている

電気がほとんどない家で育った人が、

親戚からお金を借りて看護大学に行き

お金とチャンスをつかんでアメリカに行き

年収600万以上を稼いで家族に送金して、

電気もテレビもある家を建てるというのが

フィリピン的サクセスストーリーなのです。


電気ないところで育った人に

日本人もアメリカ人もサバイバル精神では

まったく歯が立たないでしょう。


かれらは本当の意味で

家族を背負い「命がけ」で看護しているのです。


ちなみに一番多い出稼ぎ先は

アメリカではなくて「サウジアラビア」で、

クリスチャンであるのに、

厳格なイスラムの中でよく働いているな

と感心してしまいます。


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日本は本当に閉鎖的ですが、

なぜ日本人でなければ、

なぜ日本語が話せなければ、

日本で看護してはいけないのか

理解に苦しみます。


看護師国家試験のEPA合格率をみていると

他国の人の人生を踏みにじっているようで

大きな憤りを感じるとともに、

それでは日本看護自体が

世界から取り残されてしまうという

危機感に圧倒されてしまいます。


国家試験も英語受験可能として、

現場で日本語をマスターすれば良いのでは?

むしろ日本の医療者こそ英語を話すべきでは?


ASEANの看護人材流動システム構想で

アジアの会議から呼ばれますが、

完全に日本の看護界は無視されています。


日本看護は今まで本当に頑張ってきたのに、

これから先、アジアの看護リーダーとなる道を

自ら閉ざしているのです。


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統計をみれば、

高齢化がすすんだ20年後の日本では、

このままの日本の看護人材規模では、

質が担保されたケアをすべての人に提供することは

物理的に不可能なことは明らかです。


なので、

もっと外国人看護師を積極的に受け入れて、

日本で働いてケア人材になってもらうとともに、

日本の看護を学んで帰ってもらって、

長期的にみて、お互いがWIN=WINとなり、

日本がアジアにおける看護リーダーとなる戦略を

一刻も早くとるべきなのです。


フィリピン人もインドネシア人も

マレーシア人も何人も関係なく、

「日本で働いて看護を学びたい!」

と思える魅力的な看護環境を作り、

それが実行できるように

ビザ緩和と国家試験緩和をするべきなのです。


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いまの日本看護に最も必要なのは

「多様性」であり、

外国人看護師を受け入れることによって、

日本看護界として得られるメリットは

計り知れないくらい大きいと思います。


職場に普通に外国人看護師がいて、

医療英語を教えてくれたり、

日本の看護を教えてあげたりしたら

本当に楽しい職場になると思いませんか?


看護人材の国際的な流動を

どうやって進めていくのか

アジアや中東各国からは案件がたくさん来ますが、

逆行している日本の未来はどうなるのでしょうか?


リーダーシップなき日本の看護に

リーダーシップを持った新しい人材が

生まれてくることを期待して

まだまだがんばって書いていきます。


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