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NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

看護教育の高等化

日本でまったりと夏休みをする予定が、

断れない仕事ばかり入れられて、

「台湾が見える沖縄の離島」から

北方領土手前の北海道の最端」まで、

結局仕事に明け暮れた夏でした。


今さらながら、

なぜ日本は東南アジアより暑いのか、

なぜ日本はこんなにも南北に長いのか、

不思議でなりません。


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そして、完全に意識の外にあったブログですが、

様々な質問やコメントありがとうございました!!


責任を持って、

少しずつ質問やコメントへの返答を行っていきたいと思います。


まずは、

「看護師の教育が高等化すると、市民の健康が向上するのか?」

という質問に答えていきましょう。


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その答えは、

「大学を修了した看護師が増えたことによって、

 患者の死亡率が有意に低下して、市民の健康レベルが向上した」

というのが、2000年代始めに

Evidence-basedにさまざまな角度から証明されており、

現在の世界的な公衆衛生の常識になっており、

自分自身の仕事の理論前提にもなっています。

(フツーにPublic Healthの教科書に載っていますよ-。)


もしかして、日本では常識でない?

知られていない?のでしょうか。


わかりました。

簡潔に解説しましょう!


背景としては、

1980年代からアメリカにて看護教育の大学化が確立し、

1990年代ごろから大学化のアウトカム評価が行われ、

2000年代はじめに大きな研究が論文として出ています。


このような看護教育の高等化が

市民の健康を有意に向上させたという研究は、

PUBMEDで検索すると、ダーと出てくるので、

ぜひ一読をオススメします。


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教育のアウトカム評価は

理論的にもやや複雑な研究デザインを必要とし、

学士を持った看護師は、

・専門職としての行動ができる

・患者の安全を担保できる

・効果的なコミュニケーションができる

という

「論理的な問題解決の思考」を持ってケア展開できる

という特性を示した論文も多いです。


ただ、疫学者としてこれらの論文を評価すると、

EVIDENCEとしては非常に弱いことは否めません。


しかし、2003年にアメリカで、

「学士を持った看護師が増えると、

 外科病棟での患者死亡率が有意に減少する」

というBIG PAPERが出たのです。


つまり、看護教育の大学化によって、

看護師が高等教育と受けると

それが「患者の予後を改善する=命を多く救う」

ことにつながるというのです。


それがこちらです。

" Education Levels of Hospital Nurses and Surgical Patient Mortality "

JAMA, September 24, 2003-Vol 290, No. 12, 1617-1623


RESPECTしているPAPERですので、

ぜひ読んでみて下さい!!


こちらからFREEで読めるはずです。

Educational Levels of Hospital Nurses and Surgical Patient Mortality | Sep 24, 2003 | JAMA | JAMA Network


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完全に政策的な提言を含む論文ですが、

インパクト重視のアイデアが興味深く、

デザインと統計解析でも信頼に値する論文で、

当時学生だった自分はえらく感動したことを覚えています。


しかも、1流雑誌のJAMAに原著で乗り、

医学界からの賞賛も大きかった論文です。


個人的にも中東などで看護師教育の高等化の進める際に、

各国政府や医師会に提出している論文になります。


シンプルな論文なので政府関係者などの

他の領域の人からも理解させれやすく、

インパクトもあるので

政策にのっかりやすい論文になります。


内容を簡潔にまとめると

1999年にアメリカのペンシルバニア州で、

医療データベースを使用して

160病院の23万2342人のデータを解析の対象としました。


それぞれの外科病棟における

・患者の死亡率や合併症による救命失敗率と

・医師や看護師、患者の属性

の関係性を評価してみると、


「患者死亡率や救命失敗率には

 看護師の経験年数は関係なく、

 大学以上を卒業している看護師の割合が

 多い病院の方が、死亡率が有意に低かった」

という結果を示しています。


ちゃんと患者背景などで統計学的に補正しており、

(できる限りの補正をしっかりしていてスゴイ!)

Variables on Patient Mortality and Failure to Rescue


0R = 0.95

95%CI = 0.91-0.99(ギリギリ!)

P value = 0.008

という結果を導いています。


要するに

「大学を出ている看護師が10%増えること毎に

 患者の死亡率は5%下がっていく」

ということなんです。

(ここはかなり乱雑な結論ですが。)


ざっくりとした研究で、

政策的な臭いがぷんぷんしますが、

超ヤバイEVIDENCEですよね。


ここらへんのEVIDENCEをもとに、

韓国 → 看護教育すべて大学化

タイ → 看護教育をすべて大学化

日本 → ????

ということになっているのです。


現在、日本の看護教育の大学化が進んでいるのも

EVIDENCE BASEDに政策決定した結果だと思いたいですね。


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特に、

・死亡率と看護師経験年数が関係なかった

という箇所の方が

個人的にはすばらしいと思います。


看護は、経験より思考でしょ。

日本の看護界は早く経験年数崇拝を捨てて下さい。


この研究の解釈として間違えてほしくないのは、

大学卒業という学歴が問題なのではなく、

「しっかりした体系的な思考」

を学んだ教育機会が患者の死亡率を減少させる

ということなんです。


ぼく自身も臨床現場では、

たたき上げの看護師から看護の本質を学びましたし、

今でも日本に帰って来た際には

准看護師から正看護師への進学課程で

より多く授業を行うようにしています。


学歴ではないけど、

すべての看護師が自発的に

最高の教育の機会を得れると良いですね。


というか、それが

患者に死亡率を下げ

人々のいのちを救うのです!


看護師が思っている以上に

看護師の可能性は大きいのです。


いのちを救うために

今日も勉強に励んでいきましょう!


BEST EDUCATION FOR ALL NURSES!

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