外人入院2
3 ) Anxiety
3つは「不安」です。
自分が海外で入院したときは
病気がどうなるのかも心配でしたが、
それ以上に医療システムが全く違うので、
小さな事ひとつひとつが不安で
ささいなケアに救われた思い出があります。
もちろん日本で入院している
外国人の方も同じでしょう。
特に言葉が通じない場合は
何をするにも不安だし、
希望も言えないままになります。
自分自身の経験では、
INTERNATIONAL SOSで
サハリンから受け入れた患者が
英語が通じないことから
ストレスフルで不穏になっていましたが、
少し英語で会話して、
今の状態と今後の展開を説明し、
読み終わった洋書をあげたら、
すっかり落ち着き、
いきいきとリハビリに専念した例もあります。
細かな事でも良いので、
英語で話したり、
笑顔で返すだけでも
不安をかなり軽減することができます。
個人的に外国人の入院には、
・目が合ったら笑顔で返す
・現在の病状を説明する
・次に行うケアを逐一説明する
・本やDVDを差し入れる
・いつでも家族の面会を可能にする
という方法で不安を軽減することが多く、
レクチャーでもこの5つを指導しています。
同僚看護師は
「これは英語の勉強になる。」
と入院した外国人に積極的に話しかけて、
楽しみながら外国人をケアしており、
そういう考え方もいいなと関心していました。
<まとめ>
・海外での入院は大きな不安
・現状とケアを逐一説明することが大切
・本や家族などでストレス軽減する
・外国人へのケアをチャンスだと思う
4) Drug Dose
病院にいたころから
外国人の患者に対する薬の量や種類を
医師から相談されることが多かった気がします。
外国人は人種によって代謝が違うので、
アジア人以外の場合は、
薬の用量を増やすことが多いです。
原則は日本人と同じ体重換算で
薬剤用量を決定して、効果が弱ければ
ワシントンマニュアルなどの
(The Washington Manual of Internal Medical Therapeutics)
海外の教科書にある使用量を採用します。
- 作者: 高久史麿,和田攻
- 出版社/メーカー: メディカルサイエンスインターナショナル
- 発売日: 2011/03/10
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 56回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
The Washington Manual of Medical Therapeutics, Print + Online
- 作者: Dr. Hemant Godara M.D.
- 出版社/メーカー: LWW
- 発売日: 2013/07/08
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
痛み止めは日本の倍量使うことが多く、
特に外国人への抗生剤の種類と量は、
日本とスペクトルと容量の差があり
「熱病」(Sanford Guide)
を参考にして決定していきます。
- 作者: M.D. David N. Gilbert,Jr., M.D. Robert C. Moellering,M.D. George M. Eliopoulos,M.D. Henry F. Chambers,M.D. Michael S. Saag,戸塚恭一,橋本正良
- 出版社/メーカー: ライフ・サイエンス出版
- 発売日: 2012/07/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy 2013
- 作者: David N., M.D. Gilbert,Robert C., Jr., M.D. Moellering,George M., M.D. Eliopoulos
- 出版社/メーカー: Antimicrobial Therapy
- 発売日: 2013/04
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
自由診療であれば、
薬を外国容量で使用できますが、
診療報酬を使用するのであれば、
規定量しかお金が下りないので、
病院の事務方を相談することが大切です。
ただ経験的にアジア人であれば、
日本人と同じ薬剤量でも
ほとんど問題ないと考えています。
<まとめ>
・まずは日本人と同じ容量で様子を見ることが多い
・海外の教科書の基準を使うこともある
・特に痛み止めは多めに使う傾向
・アジア人は日本人とほとんど同じ
5) After care
最後は「今後のフォロー」をどうするかです。
これが一番大きな問題になります。
日本に住んでいる場合でも
病院以外の資源を有効活用できないので、
特に術後や重度感染症後、母子保健では、
住んでいる地域の保健師さんに電話して、
追ってサマリーをFAXして、
訪問をお願いすることが多いです。
発展途上国からの在留外国人の場合、
医療より福祉が必要なケースもあります。
旅行者の場合は、
英語で診断書とサマリーを記載して、
本人または家族に持たせます。
退院時に処方する薬は
海外でも販売され継続可能な薬
(特に降圧剤や抗生剤など)
を選択することもポイントでしょう。
最も問題なのは、
医療レベルがあまり高くない国へ
帰国するときです。
INTERNATIONAL SOSで来て、
「手術したはいいけど、フォローどうするのさ?」
ということがよくあります。
やや長めに入院させて
術後合併症がないことを丁寧に追ったり、
感染症後に点滴ができない場所に帰るので、
あまり使わないスペクトルの広い
内服抗生剤を処方することもあります。
退院後の生活状況と医療事情を想像して
その後のフォローを決定していくことが
大切であり、よい勉強にもなります。
<まとめ>
・退院後のフォローは状況に合わせて
・保健師につないで社会資源を利用する
・帰国後も継続できる治療と薬で
・医療がない所に帰る場合もある
外国人が入院または外来に来た場合に
どのような特別なケアプランが
必要になるのかということを
" PRADA "
というフレームワーク(思考の枠組み)
を使って解説してみました。
外国人が医療にアクセスしてきたときに
これは自分にとっての成長になる機会だと考え、
楽しみなながら良いケアを提供できると
きっと臨床がさらに楽しくなると思います。
"PRADA"
P = Pain & Privacy
R = Religion
A = Anxiety
D = Drug Dose
A = After care
参考にしてもらえると幸いです。