NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

日本医療2

2) Health Policy


日本の医療制度を

海外でプレゼンする際に、

最も理解してもらうことが難しく、

かつ、あらぬ批判を受けるのは、

日本人が当たり前だと思っている

「国が医療をコントロールしている」

という暗黙の大前提です。


日本は診療報酬制度を採用しており、

日本どこでも誰が行っても

同じ医療サービスは同じ料金となります。


これは国の統制によって、

「高品質、低価格」のサービスが

市場に安定的に供給できると同時に、

医療サービス提供側としては、

今まで1000円だったサービスが

ある日突然800円になることもあり、

大きなリスクも抱えています。


従って、日本における医療を理解する上では、

「国の医療政策を理解して

 今後の国の動向を予測すること」

が最も大切であり、

日本の医療課題と医療経済を理解する

大きな助けとなります。


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また医療政策は、

キャリアアップする領域を決める上でも

一番大切な要因となります。


政策として重要視されていない領域を

選んでキャリアアップしても、

診療報酬評価(給料)にはつながらず、

厳しいキャリアップと経営を

強いられることとなり、

重労働低賃金の生活に陥ってしまいます。


この機会に

日本の医療政策を知り、

今後日本の医療がどこに向かうのかを見極め、

自分のキャリアアップ領域を考えてみて下さい。


もちろん、

「何をしたいかではなく、

 何が求められているか。」

を中心に考えて行動していくことが

キャリアアップとビジネスの原則です。


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まず最も大切なのが、

「健康日本21(第2次)」

という日本の公衆衛生政策です。


これは、

2013年4月から2022年までの10年間も!

日本の「健康」の進む方向性を示したものであり、

医療だけでなく、予防や栄養、地域など

「健康に関するすべて」を規定している政策です。


詳しくはこちら

健康日本21(第二次) |厚生労働省


今年度から新しい政策となり、

前の政策を引き継ぎつつ、

新たな基本的方針としては、5つの柱があります。



1) 健康寿命の延伸と健康格差の縮小


健康格差が加わり、地域差を解消するために

地方の保健医療体制の強化がメインとなり、

都市部と大きな差がある領域に焦点が当たります。


社会経済的に脆弱なグループへの言及があるものの、

その具体的な行動内容は少ない印象があります。


2) 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底


「徹底」という言葉から

一番強い意志が伝わってきます。


今後は、日本も世界も

NCD = Non Communicable Diseases

(非感染症 = およそ慢性疾患)

コントロールの10年となるでしょう。


もちろん、「予防の徹底」のために

地域や生活習慣を専門とする「慢性期看護」に

焦点が当たる事は間違えないです。


ただし、慢性期看護も介入の効果がまだまだ弱く、

しっかり介入のoutcomeを示す必要があります。


この「地域格差とNCD予防」という領域で

Evidenceとして" NP "が

かなり有効だと思っていたのですが、

骨抜きになってしまい、

今後の動向が注目されます。


3) 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上


メンタルヘルスや高齢化など

「生活」を中心において

健康を捉えて直しています。


特に、

高齢者の保健は非常に具体的な目標で

NCDと同時に高齢者の保健医療も

今後10年で解決すべき大きな問題

と認識している厚労省の心が読み取れます。


4) 健康を支え、守るための社会環境の整備


「地域での健康」をさらに強調してきました。


もちろん、誰しも医療や保健の答えが、

「地域」にあることは知っていますが、

まだ革新的に「地域」を変える方法がなく、

自由で新しい思考で

「地域」について議論し、

様々な介入を行っていく必要があります。


今後は行政よりも、

在宅系が地域を作っていくと思いますが。


5) 健康に関する生活習慣及び社会環境の改善


今までと同じ方針です。

年々着実に良くなっています。


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詳しい内容は

厚労省のHPで確認すると

本当に読みづらい文章ですが、

日本の健康の動向が理解できます。


「生活」と「地域」ということが軸となり、

このビジョンは10年間耐えうるものであるが、

実際どうやってカイゼンしていくかが

今度の大きな課題であり、

そこで看護が新たなイノベーション

生み出せるかが、

10年度の看護の存続を決定するのだと感じています。


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次に大事なのが、

病院での治療を中心とする医療政策である

「5疾患5事業+在宅」

(lectureで勝手に使っている名前)

となります。


これも

従来の「4疾患5事業」に

「うつ」と「在宅」を足した加えたもので、

今年度から施行され、

正式には「医療計画」と言います。


病院で働いている方、

または病院でキャリアアップを考えている方には

一番身近な政策となります。


詳しくはこちら

医療計画 |厚生労働省


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1) 5疾患


これは、

統計上死亡率や有病率の高い疾患で、

医療費や社会資源の損失が大きいもの

に焦点を当てています。


# がん

# 脳卒中

# 急性心筋梗塞

# 糖尿病

# うつ


「がん」は死因が1位であり、

治療成績の地域格差が大きいと言われ、

人材育成の一貫として、がん系認定看護師教育を含め

巨額の医療費と研究費がおりています。


脳卒中」は動脈硬化により

脳梗塞が劇的に増えており、

要介護の一番の原因となっているので、

介護予防を意識したものとなっています。


もちろん、「急性心筋梗塞」は、

医療費が最も高いことに加え、

働きざかりの壮年期に起きる事が多く、

労働力の損失という意味でも

経済的な損失が最大に大きな疾患になります。


さらに「糖尿病」は、

あらゆる疾患のリスクを跳ね上げ、

糖尿病性腎症で透析導入となれば

医療費は高く、長期的な負担となります。


「うつ」は、

前から指摘されていましたが、

各方面からの大きな声に押される形で、

やっと政策的な根拠を得ました。


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2) 5事業+在宅


そして、

疾患ではなく事業としても

5つの重点政策となっています。


# 救急医療

# 災害医療

# へき地医療

# 周産期医療

# 小児医療



「救急医療」に関しては、

医療崩壊で騒がれた時期もあり、

まだまだたらい回しも続いており、

システムの整備が待たれる領域です。


「救急医療」と「へき地医療」の

2つの政策の後押しもあって、

ドクヘリ近年たくさん飛ぶようになり、

「周産期医療」も同様、

地域格差医療崩壊解決に向けての

政策対応というかたちになっています。


「災害医療」はこの政策が施行され、

早期に災害システムを強化したことにより、

東日本大震災でも全国からの有効な対応が

集まるという実績を作りました。


「小児医療」は

日本は新生児医療に関しては、

世界的にものすごいレベルに達していますが、

特に5歳以下の死亡率が

先進国の中でも非常に高く、

限られた資源を有効活用するために

小児救急を含めたシステム全体の整備を促しています。


「在宅」も

政策的には前々から重要とされていましたが、

なかなか進まないので、さらに明記されました。


同年代の若い人材が

訪問診療や訪問看護ステーションを立ち上げて

がんばっている姿は勇気をもらいます。


政策的な支援を受けて、

在宅から医療全体を

しいては日本全体を

革新的に変えてくれることを期待しています。


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この「健康日本21(第2次)」と「医療計画」が

今年度から政策施行され、今後10年の

日本の医療全体の方向性となります。


ただ、医療だけでなく、

「ひとの生活」を社会保障全体で

将来を考えていく必要があります。


ちなみに、

「消費税が8%、10%とあがること」が決定され、

医療者のなかでも消費税反対の意見が多いですが、

実は

「消費税増税分の財源が急性期医療に使われること」

は知っていましたか?


最後に

国の社会保障ビジョンを見たいと思います。


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「保健」「医療」「福祉」「年金」など

生活する上での基盤と成るサービスを

社会保障 ( Social Security )」と呼びます。


社会保障費は国の財源支出の50%以上を占め、

年間一人当たり80万円もかかっています!


特に医療と介護の増加は大きく、

今後も長期的に続くことは確実です。


その解決方法として、

増税分を社会保障の医療や介護

に重点的に使おうという方針となっています。


詳しくはこちら

社会保障・税一体改革で目指す将来像」

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「迅速な急性期医療→そのまま在宅へ」

という流れが書いてあり、

さらなる高度急性期医療の充実や

急性期人材(特に看護師)を2倍にするために

財源を使うと書かれていますが、

これ以上の急性期はあまり必要ないでしょう。


むしろ、

急性期を過ぎて退院できるのに、

リハビリをする転院先がない、

医療を継続してくれる24時間在宅がない

という問題の方が大きく、

「在宅強化」に集中的に財源を使った方が

急性期医療がスムーズに行くと考えます。


一般病棟のように

準急性期を見れる在宅サービスを

整備することが有効な方法だと思います。


まだ政策決定はされていないので、

費用対効果をしっかりと判定して、

有効な政策になることを期待しています。


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長くなりましたが、

よくレクチャーやプレゼンで話している

「日本の医療全体」

を簡潔にまとめてみました。


日本の全体の医療を考える機会になり、

キャリアアップの参考にして頂けたら幸いです。


FREE from the SYSTEM

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