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NEW NURSING

世界で活躍する疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

アメリカ医療

次はアメリカです。


ただアメリカといっても、

これまた広いし、領域も細分化され、

全体を掴む事がさらに難しくなっています。


専門が「疫学」なので、

アメリカとは公衆衛生(Public Health)分野

での関わりが多く、そこから見た

今のアメリカ医療の動向のうち、

最近よく話題になる2つの話を共有したいと思います。


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個人的には

「10年前に比べて、

 アメリカ医療がそこまですごくなくなった。」

という印象を持っています。


確かに、

「一部」の病院や大学、医療者は

スーパーすごすぎて、次元が違いすぎて、

驚きを超えて、泣きそうになります(笑)。


特に、

教育背景がバラバラな移民系アメリカ人でも

しっかりとコースワークを受ければ、

立派な医療者になれ、

できる人をさらにできるようにする教育システムは

まだまだ世界一だと思います。


しかし、

アメリカ医療全体としては

課題が山積しています。


自分自身も学生時代に、

NPやCRNAの話を聞いて、

「なんだ。そのすごい制度は!」と

ものすごい感動していましたが、

今ではアメリカ人の師匠と

「もうアメリカ医療もダメだね。

 この数字はもう発展途上国だ。」

とアメリカの公衆衛生的な課題を

落ち込みながら議論しています。


今アメリカでは

「医療費と医療の質」が

本質的な問題となっています。


アメリカの普通の家庭では、

医療保険に平均月10万以上支払っており!

(雇用主が少し負担してくれるが)

6人に1人が保険未加入者という現状で

先進国中でも最悪の指標となっています。


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1) Re-NP


そこで医療費抑制政策の一環として、

再びNPにスポットライトが当てられて、

" DNP "として修士から博士課程になり、

看護系大学もNPプログラムを

全面に打ち出しているところが多くなっています。


公衆衛生分野としては、

あたりまえのPHCPrimary Health Care)を行うために

(予防活動や地域ケア、基本的な初期医療)

Health Centre に軸を置くNPの役割に期待しているし、


ビジネス界は、

イノベーションのひとつとしてNPを捉えており、

低価格である程度、質の担保された医療を受けれる

システムとしてのNPに期待を寄せています。


先日、アメリカの医療機器ビジネスマンと

会話したときも、看護への興味が強く、

「NPの奨学金へ、たくさん寄付したよ。

 これからはNPが成長産業になるよ。」

とNPへの期待を熱く語っていたのが印象的でした。


ただ、専門看護師(CNS)などが不人気になり、

NPやCNS、CRNAなど上級実践看護師(APN)が

たくさんあり、わかりにくいということから、

統合やシステム再考の議論も進んでいます。


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2) Quality Improvement


アメリカは医療費のGDP比は

日本の2倍なのですが、

医療の質は日本の方が良い事も多く、

「費用対効果(質)」が

良くないという現状があります。


日本もそうですが、

ERやICUを中心とした急性期医療(Critical Care)は

医療の質の測定が難しいのですが、

しっかり質を測定して、その数値をもとにカイゼンする

「質のカイゼン運動(Quality Improvement)」

が、スゲー流行?しています。


現在はそれぞれの病院が指標を作り、

それを基に介入効果を評価している段階で、

医療安全や合併症、患者満足度、コストなど、

臨床評価指標(Clinical Indicator)は

多岐に渡っています。


ビジネス界でいうと

「ベンチマーキング」や「リーンマネジメント」

に近い概念です。


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もちろん、チームで行うのですが、

医療の質に一番インパクトを持つのは看護師なので、

看護師が中心となって、このシステムを使用しています。


また、そうすることによって、

「看護師のケアが

 実際にどのくらいインパクトをもっているか」

を数値として明確化できるのです。


「測定しつつ、カイゼンして評価する」

というのは公衆衛生では基本中の基本ですが、

それがやっとCritical Careに浸透して、

システム思考へと拡大した看護の役割と相まって、

医療の質を向上すると同時に、


看護のアウトカムも客観的に評価できるようになり、

「看護がいかにすごいことをしているか。」

を数値をもって提示可能となり、

他職種からの看護への評価も向上すると予測しています。


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先進国の医療を議論する際には、

「経済」と「ビジネス」の概念や理論を使用する事が多く、

特に、看護・医療の人は

この2つにめっぽう弱い印象があります。


結局、医療も経済の一部であり、

看護・医療はビジネスなので、

資本主義のこの世の中を生きるためには、

教養として、「経済」と「ビジネス」を

勉強する必要があります。


もし、知らないと、だんだんと

ビッグブラザー(大きなシステム)に搾取されて、

「経済的な自立」=「自由」を奪われてしまいます。


しかし、逆にアメリカでは、

この「経済」や「ビジネス」が看護への追い風を送り、

思わぬ領域から看護が評価されているのは、

アメリカ医療の新しい動向だと感じています。


アメリカ医療には、

たくさんの動向があると思いますが、

そのうち興味深い2つを取り上げてみました。


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