NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

賽の河原

みなさんは

「賽の河原」

をご存知でしょうか?


日本独自の信仰で有名ですね。


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私YUITOは数字を中心とする統計・疫学が専門ですが、

国際保健という場で生きているので、

その民族独自の文化とケアの関連性を考察する

文化人類学(Anthropology)」の立場をとっています。


日本独自の文化には、

ケアの本質が秘められていることを

たびたび再認識させられています。


日本人が死ぬ際に渡ると言われている

「この世とあの世を分け隔てる三途の川」

(この概念自体が興味深いですよね。)

に「賽の河原」があると言われ、

日本各所にもこの「賽の河原」が実在します。


賽の河原では、

親より先に死んだこどもたちが

「先に死んで親を悲しませた罪は何よりも重い」

と鬼に責め立てられて、

自分の死んだときの年齢分だけ

石を積めと命令されます。


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自分の年の分だけ積むと成仏できるのですが、

(享年7歳なら7つ)

最後の一個を積もうとすると

(享年7歳なら7つ目)

鬼に金棒で石積みを壊されて、

また最初から石を積み、手から血が出ても

親が死ぬまで永遠にこれをさせられ、

苦行をなされるという言い伝えがあります。

(地方で微妙に異なります。)


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なので、命日やお盆には

親がこの賽の河原に行って、

こどもの享年分の石を積んであげて、

(青森では風車も立てます。)

無事に供養できるように助ける習慣があります。


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これはまさにコミュニティーが持つ

セルフケアとしてのグリーフケアであり、

亡くなったこどものために親が石を積むという行為や

家族みなで祈りを捧げるという思いが

残された親や家族のこころを癒し、

こどもの死という最も受け入れがたい事実に

やさしい物語を絡らませる事によって、

やわらかな癒しと大きな許しを提供しているのです。


おそらく乳幼児死亡率が高かった昔の日本で

自然と生み出された美しい物語なのでしょう。


特に飢饉や気候が過酷であった東北地方で、

このシステムは発達しています。


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三内丸山遺跡でも

こどもの亡がらが丁寧に埋葬されていた様子を

見る事ができます。


看護でいうグリーフケア

自然と提供されていたのでしょう。

素晴らしき文化とケアの融合です。


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仏教の四十九日や周忌も

定期的に故人を知る人を集めて、

故人を思いながら会話することで

自然とグリーフケアになっている

癒しの地域システムと考えることができます。


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文化人類学の父

レビィ=ストロースも神話という文化から

民族の価値観やその構造性を紡ぎだしたように

「日本の神話や言い伝えにも

 日本古来の地域ケアシステムが潜んでいる。」

と考えます。


コミュニティーとは本来

自分自身で自分自身のケアする存在であり、

セルフケア能力を持っているのでしょう。


それをうまく活かせると

とても効果的でこころ暖まる地域介入ができそうですね。


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また祈りや文化、神話までをも対象とできる

看護の懐の深さを体感するとともに

一生を捧げるべき学問であると感じています。


個人的な趣味として今は

アイヌの神話からケアシステムを抽出しているところです。


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ますます看護と日本が興味深いですね。


日本独自の看護を!!

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