NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

NP・CNSの本1

遅咲きな桜も散り始め、

新年度もようやく落ち着く季節でしょうか。


今年度からは後輩や友人たちも大学院進学を果たし、

自分もさらに進化しなければと刺激を受けています。


そこで、今回は

「簡単な大学院の話とオススメ本」

の話を書きたいと思います。


まず海外では、看護系大学院修士を修了すると

NP・CNS・MSN(看護学修士)に関係なく、

" Advanced Nurse Practitioner (ANP) " (上級実践看護師)

として認識されます。


研究系の修論コースだろうと、実践系の臨床コースだろうと

「看護は実践に基づいた学問である」と定義しているので、

大学院を終了したナースはANPとして活躍することを

期待されるのです。


中東の看護協会で会議したときも

「YUITO、あなたはANPなんでしょ。大学院出ているんだし。

 じゃ、ちょっと呼吸器管理の指導してみてよ。」

「確かにぼくはANPですが、今回は調査の件で来たんですよ。。。」

という展開になってしまいます。


海外だとANPだと年収が200万前後変わり、

R,N = $70000(看護師=年収700万)

ANP = $90000(上級実践看護師=年収900万)

という枠組みでの採用となり、

ANPは、さらにNPやCNS、研究などの専門性を

考慮して病院のニーズをマッチングをして年収を決めます。


日本はマジでひどい国なので、

修士をとっても看護師の給料も役職も変わらないですが。(笑)


この話をして信じる外人は皆無です。

「YUITO、冗談よせよ。日本はそんなバカじゃない。」

とよく言われて、笑われます。


大学院を出て、フラストレーションをためながら

ただのいち看護師として働いている同志の方、

ぜひ一緒に日本の摩訶不思議な看護界を変えましょう!!


さて、本題に戻りますが、オススメの本を紹介しながら、

個人的に思う大学院の本質を書きたいと思います。


1) 人間として


医学・看護教育の不思議は、

「できる人は教育しなくても勝手に伸びて行く」ということを

教員の誰もが知っているのに、

それを言ったら教育の意味がなくなってしまうので、

あまり大きな声で言わないことです。


やはり「人間性」ということになってしまうのです。

デキル人ほど、「人間性」が完成しており、「向上心」が高く、

自分からすすんで「幅広い読書」をしています。


そして、世界のどこでも著名な人にオススメ本を聞いても、

この2冊は必ずと言っていいほど出て来ます。


大学院という時間があるうちに「哲学書」を読む

習慣をつけると人生の役に立つと思います。


まずは、V,E,フランクルの「夜と霧」です。

YUITO自体も人生で本当に行き詰まったときに

この本に救われてここまで来れました。


ユダヤ人虐殺のホロコーストに関する本で、

強制収容所に強制連行された精神科医が、

極限の状況で「尊厳」について考察した本です。


人生とは、生きるとは、愛とは一体何なのか、

自分の全人格を大きく揺さぶられる本です。

そして、極限の状況なのですが、美しい文章で、

なぜか自分が持っている本じだいが

非常に美しく清らかなものに見えてきます。


「人生に何かを期待するのではなく、

 人生から何を期待されているのかを考えながら生きる」

という思考は自分の原点です。


YUITOも可能なら今年中にアウシュビッツ

旅行に行こうと考えています。


新盤で読みやすいのはこちらです。

夜と霧 新版

夜と霧 新版


個人的には読みにくいが重厚な旧盤が好きです。

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録


次は、ミルトン・メイヤロフの「ケアの本質」です。


この本は、看護師ではない哲学者が

「ケアすることの意味」について考察し、

「ケア」と「人生」を同じ並びで語った本です。


看護ってやっぱりケア提供者の人生や人格に影響する

という漠然な直感をゆっくりとした文章で、

かつ論理的な概念としてまとめた名著です。


「人の成長を信じる」ことこそがケアであると

何度もゆっくり説いていきます。


YUITOも大学時代に多くの教員からすすめられて、

それが嫌で嫌であえて読まなかったのですが、

友人の読書家のエリートビジネスマンに

「お前の仕事は本当にすごいな。

 おれの人生で最も大切になったよ、この本は。」

と言われて、

遅咲ながら読んだら、まさにトリハダでした。


看護に全く関係ない読書家のみなさんに

非常に好評で、看護の概念を言語化して

世間に知らしめて行く必要性が理解できます。


「人の成長を絶対的な信頼を持って見守り、

 それがケアであり、自分の成長となる。」


自分にはまだまだ到達できない目標です。


ぜひ看護とはケアとは何なのか考えてみて下さい。

ケアの本質―生きることの意味

ケアの本質―生きることの意味


2) プロフェッショナルとして


日本の看護師は「専門職」だと教えられますが、

では一体「何が専門職なのか」は誰も丁寧に教えてはくれません。


それは「アウトカムという責任と自分と社会への倫理」だと

個人的には考えていますが、みなさんはどうでしょうか?


大学院を修了するということは" Professional "として、

社会的な責任と貢献がANPのように求められてきます。


非常に孤独で大きな敵に

つぶされそうになることも多いでしょう。


だけど、そこでその大きな壁を乗り越えるための力

となるのが、" Professional "としての自己規定だと思います。


プロフェッショナルとは何なのか。

プロフェッショナルの条件とは何か。


すべての本質はこの本に書いてあります。

ドラッガーの「プロフェッショナルの条件」です。


有名なドラッガーですが、

この本は「自分に対するマネジメント」が主で、

プロフェッショナルがどう評価され、

どういう姿勢を持てば良いのかシンプルに書いてあります。


そして、フランクルと同じように

(名著はほとんどつながってきますが。)

「何のための人生であり、何のための専門職か。」

を自分で考えるという哲学的な本でもあります。


一日でも早く看護が「知的労働者」として認識され、

「首から下を使う肉体労働者である看護婦ではなく、

 首から上を使う知的労働者である看護師へ」と

現場と社会的な認知が一新されることを願っています。


プロフェッショナルとしての姿勢と倫理の原則です。


上記の3冊は10年後、20年後に読んでも

自分の深い部分にさらに効いてくると確信しています。


大学院という場で、

「自分の人生の目的な何なのか。」

をゆっくり考えることが

看護を学問として学ぶより

よっぽど重要だと思います。


やっぱり人生で最も大切なのは「本」でしょう。

感想お待ちしております。


長くなったので、

また区切って書いて行きますね。