NEW NURSING

ハワイの疫学者が日本の医療について議論する記事です。

NEXT Health Care

次世代の医療へ

看護とイノベーション

仕事も少し落ち着き

今週はサーフィン三昧でした。

 

仕事が終わった夕方に

キレイな海で友人と話しながら

夕日の中でサーフィンできるのは

何事にも代えがたい大切な時間です。

 

ハワイは再開発も進んでいるので、

ぜひハワイに遊びに来て下さい。

 

そして、その時には

忘れずにビールをおごって下さい(笑)

 

いい地ビールありますよー。

 

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今回のテーマは、

「看護とイノベーション」です。

 

前回、日本に帰った際にも

多くの上級実践看護師と

このテーマを議論していました。

 

ここ数年は、企業や学会から

「看護とイノベーション」について

講演依頼を受けることも多くなり、

その場でまとめたことを書きます。

 

上級実践看護師の役割は、

「現場でイノベーションを起こすこと」

につきると思います。

 

そこには「7つの原則」があるので、

原理・原則を理解した上で行動に移して、

現場で多くの命を救ってほしいと思います。

 

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1) イノベーションを起こすのは「人」である。

 

とてもとても、あたり前ですが、

意外と忘れがちな内容です。

 

イノベーションを起こすのは、

結局、「人」、「人」です。

 

だから、人が一番大切なのです。

 

人材(人財)をないがしろにしている限り

決して、イノベーションは起こりません。

 

だから、

「人を育てること」が必要で

「人に投資すること」が

一番有効なイノベーション戦略なのです。

 

イノベーションを考えるならまず、

「人」に焦点を当てるべきなのです。

 

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また、たった一人、もしくは数人のチームが

全世界を変える破壊的な革新を起こします。

 

例えば、

iphoneを生み出したSteve Jobsであり、

Googleを生み出した天才的集団です。

 

ごく一部の先見的なリーダーや精鋭集団が

一気に多くのイノベーションを起こします。

 

革新的な未来をイメージして行動する人が

結果としてイノベーションを生み出すのです。

 

他人の意見に左右されてはいけません。

 

自分の正義や未来を信じる人のみが

イノベーションを生む機会を得るのです。

 

看護と臨床疫学という

イノベーションを生み出したのは

ナイチンゲールという「人」です。

 

革新的な未来を想像(創造)して、

八方美人にならずに自分の理想を貫いて下さい。

 

それがいつの日か

イノベーションと呼ばれる日が来るのです。

 

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2) イノベーションマネジメントから生まれる。

 

イノベーションはある意味

偶然からしか生まれません。

 

結局、確率論です。

 

ただ、その偶然の確率を

マネジメントによって

最大限にすることはできます。

 

むしろ、

イノベーションを生み出すための

マネジメントを積極的に行わないと

イノベーションは決して生まれません。

 

マネジメントは

イノベーションの機会を最大にもできるし、

また逆に、機会をつぶすことも可能です。

 

すべては「人」と、その「環境」なのです。

 

上級実践看護師は、

イノベーションが起きやすくなる環境を

積極的に創り出す必要があるのです。

 

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自分が働いているがんセンターでも

MBAがマネジメントしているので、

イノベーションを生み出す仕掛けが

様々なところに戦略的に設定されています。

 

例えば、研究所には

サーフィンやランニング、ヨガのための

シャワー室やトレーニングルームが

常に開放されているし、

心地よいベランダには

昼寝用のソファーが置いてあるし、

室内は木の素材を多く使って作られ

自然を取り入れる設計になっています。

 

自由でリラックスできる環境は

職場に行きたくなるし、発想が刺激されます。

 

専門以外のことをする義務もあるので

低所得者向けの母子保健センターで

週に1日は、ボランティアしています。

 

毎週金曜日は接点のない部門と

無料でランチする機会も提供してくれます。

 

出勤時間の決まりはないし、

波がいい日には昼休みにサーフィンすると

みな革新的で自由だと賞賛してくれます。

 

世界一「海に近い」

がん研究センターなので(笑)

 

これらは

イノベーションを生み出すための

投資としてあえて行なっているのです。

 

イノベーションを生かすも殺すも

「マネジメント」しだいです。

 

看護もイノベーションを生み出す

体系的なマネジメントを

戦略的に提供してほしいものです。

 

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3) イノベーションには、形があるとは限らない。

 

マネジメントの父

Peter F Drucker(ドラッガー

も言っていますが、

イノベーションは決して

形のあるものだけではないのです。

 

イノベーションについて学びたい人は

まずは、この本を読みましょう。

 

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】

 

 

iphoneGoogleなど

一見、見えやすいプロダクトのみが

イノベーションだと勘違いしてしまいますが、

イデア、つまりソフトも

イノベーションたり得るのです。

 

例えば、

ドラッガーは、新聞や教科書をあげています。

 

新聞という毎朝に情報が届く「システム」が

社会で情報を共有できる第一歩になりました。

 

新聞という「もの」に注目しがちですが

毎朝に情報を提供するというシステムが

実は「イノベーション」だったのです。

 

また教科書という

標準化された教育が確立されたおかげで

世界中の学生が質の担保された内容で

効率的かつ効果的に学習できています。

 

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そこで思うので

「看護という行為」もまた

人類の歴史における

「最大のイノベーション

ではなかったのか、ということです。

 

看護には明確なカタチがなく

ある意味、人間の中で共有されている概念です。

 

身体的・精神的・社会的な意味で

健康と生活を包括的に捉えて

その人とともに協働して

ケアを展開していくシステムは、

つまり、「看護」は、

まぎれもなく人類が生み出した

イノベーションのひとつなのです。

 

また、ICUというシステムも

イノベーションと認知されています。

 

診療科に関わらずに、集中的な治療やケアが

必要な患者を同じ病棟で管理するという

イデアこそがイノベーションなのです。

 

もちろん、今日のICU

百害あって一利なしなので

ICUというシステムは

一刻も早く無くすべきです(笑)

 

もう一度確認しておきます。

 

イノベーションは決して

カタチあるものだとは限りません。

 

イノベーションはそもそも

イデアであり、概念なのです。

 

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4) イノベーションは、

 基本的な組み合わせから生まれる。

 

イノベーションにある大きな誤解は

0から1を生み出すことだと

強く信じられていることです。

 

イノベーション

突然何かを作り出すのではなく、

新しい組み合わせによって生まれるのです。

 

イノベーション

どちらかというと

1+1=10にするイメージです。

 

手元にあるものをうまく組み合わせると

大きなインパクトを持つものに変わるイメージです。

 

結局、

iphoneは電話と電子端末の組み合わせだし、

Googleも検索アルゴリズムとネットの組み合わせです。

 

イノベーション

オーストリアの経済学者である

Joseph A Schumpeter(シュンペーター)の

新結合(Neue Kombination)の英語訳に由来します。

 

つまり、

"New Combination = Innovation"

なのです。

 

いくつかの新しい結合が

「破壊的で非連続的な革新」

つまりイノベーションを生み出します。

 

興味ある人はシュンペーター

「経済発展の理論」を読んでみて下さい。

 

難しいので、オススメはしません(笑)

 

 

 

難解で線を引きながらでないと読めないですが、

今の看護に示唆に富む内容になっています。

 

イノベーションを生み出すためには

いろいろな領域と交流や議論をして

新しい結合を生み出すことが必要です。

 

そして、

まったく関係ない領域とのコラボが

次世代のイノベーションになり得るのです。

 

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看護はもっと、

他の領域と新結合すべきなので

もっともっとオープンになって、

他の領域からの参加者を増やし、

また看護の人材をどんどん他の領域に

積極的かつ戦略的に送り込むべきです。

 

看護のイノベーションは何も

看護師が起こすとは限らないのです。

 

おそらく、次の医療のイノベーション

医療者じゃない人が起こすでしょう。

 

ぼくらはあまりにも、知らぬ間に

自分の専門領域に捉われています。

 

自分自身の既成概念に洗脳されています。

 

イノベーションを起こすためには

自分からアクションすることが必要だし

他の領域に飛ぶこむ勇気が不可欠です。

 

看護と意外な組み合わせが

次のイノベーションを生み出すのです。

 

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5) イノベーションは、急激に進むものだけではない。

 

イノベーションは基本的に

破壊的なインパクトをもっていますが、

変革を起こすスピードは、それぞれです。

 

急激に進むものもあれば、

時間をかけて進むものもあります。

 

確かに、プロダクトベースの場合は、

一気に世の中を変えることが多いです。

 

iphoneはたった数年で

世界中の人々のライフスタイルを変えたし、

Googleはネットさえあれば誰でも

世界最先端の情報に無料でアクセスできる環境を

たった5年で生み出しました。

 

ただ、それらが

すべてのイノベーションスタイルを

意味するわけではないのです。

 

アメリカでは、ビジネススクール

ハワイ大学の有名なMBAでも)

診療看護師(NP)や麻酔看護師(CRNA)は

医療における最大のイノベーションとして

みな学習すべき内容になっています。

 

ただ、これらのイノベーション

結果的には破壊的な影響を与えましたが、

実行には40年以上の歳月がかかっています。

 

何度も紹介していますが、NPのシステムは

ハーバード・ビジネススクールの教授である

イノベーションのジレンマで有名なクリステンセンと

競争戦略で有名なポーターの本で議論されています。

 

医療イノベーションの本質―破壊的創造の処方箋 (碩学舎ビジネス双書)

医療イノベーションの本質―破壊的創造の処方箋 (碩学舎ビジネス双書)

 

 

医療戦略の本質 価値を向上させる競争

医療戦略の本質 価値を向上させる競争

 

 

これらの本も専門的なので、

あまりオススメしません。 

 

イノベーションは劇的に侵攻することもあります。

ただ、持続的に進行するイノベーションもあるのです。

 

日本や看護の文化を考えると

この持続的なイノベーション

適しているのかなと感じています。

 

もちろん、ぼくは

破壊的に侵攻するイノベーション

全力で目指していますが。

 

今やっていることが、

他から評価されなくても

10年後、20年後に

それはイノベーションだったと

評価される可能性は十分にあるのです。

 

だから、他人になんと言われようと

自分の革新や未来を信じて

行動を続けてみて下さい。

 

むしろ、ぼくは、

他人に同意されたり、評価されている方が

逆に危ないと思っています。

 

他人の同意や評価の延長線上に

イノベーションはありません。

 

自分の信念や評価の中にこそ

イノベーションは創造されるのです。

 

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6) イノベーションは、発展途上の領域から生まれる。

 

変化のないところに

イノベーションは存在しません。

 

挑戦のないところに

イノベーションは存在しません。

 

リスクのないところに

イノベーションは起こり得ません。

 

投資のないところに

イノベーションは起こり得ません。

 

つまり安定した環境

また成熟した産業では

イノベーションは起きにくいのです。

 

「飽和」という表現が適切でしょう。

 

ここ10年で医学界から

大きなイノベーション

数多く生まれたでしょうか?

 

大きな予算の割に

あまりないのが現状です。

 

iPS細胞とがんの免疫療法くらいでしょうか。

(どちらも日本から!!)

 

つまり、医学はアイデアが飽和し

また研究しつくされてきたので、

新しいイノベーションが起こる確率は

相対的に低いと言わざると得ません。

 

この状況は、すでに理論化されていて

「リバース・イノベーション」と呼ばれています。

 

詳しくはこの本に書かれています。

これは読みやすくて、刺激を受けました。

 

リバース・イノベーション

リバース・イノベーション

 

 

この本が議論しているのは、

先進国ではアイデアが飽和しているので

次世代のイノベーションが起きる可能性が少なく、

これからのイノベーションのほとんどは、

発展途上国から起きるという理論です。

 

まさにその通りだと思います。

 

だから、ぼくはあえて積極的に

アフリカや中東に出向いています。

 

それはイノベーションが起こる可能性が

日本やアメリカよりも高いからです。

 

今ではなく、20年先を見ています。

 

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では、この理論を

「看護」に当てはめてみましょう。

 

医学は飽和し、看護はまだ発展途上です。

 

では、どちらの方が変化が大きく、

これからイノベーション

生まれる確率が高いでしょうか?

 

そう、もちろん、看護です。

 

リバース・イノベーションに基づくと

これからは発展途上である看護から

イノベーションが多く出てくるはずです。

 

だから、ぼくは自分の時間やお金を

あえて「看護」に投資しているのです。

 

自分が看護師だからとかではなく、

一人のビジネスマン、投資家として

看護の将来性がとても高いので

看護に多くを投資しているのです。

 

仮想通貨に投資するより

リスクが低く、高リターンです(笑)

 

もちろん、

適切なマネジメントが前提です。

 

看護は次の20年

多くのイノベーションを生み出すでしょう。

 

そのためには、看護に

人材・マネジメント・投資の

3つを集めることが必要なのです。

 

次の20年の間に

世界全体、社会全体にインパクトを与える

イノベーションは看護から生まれると信じています。

 

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7) イノベーションは、意外なところで起きる。

 

イノベーション

偶然的な要素も多いので、

予想しない意外なところから起こります。

 

あとから考えたら

「あまり前じゃん」という内容が多いです。

 

実験の失敗や基本事項の確認から

イノベーションを生み出せたストーリーは

多く聞いたことがあると思います。

 

たとえば、ARDSはどんな薬を使っても

予後を改善することができなかったのですが、

看護師が長時間腹臥位にするだけで

28日死亡率が50%も減ることが知られています。

 

またICUでは

クロルヘキシジン入りのスポンジで

毎日ベッド上シャワーするだけで

不可能と言われたICUにおける耐性菌の感染を

劇的に減らすという有名な研究もあります。

 

あまり前と言われれれば、

とても当たり前です。

 

つまり、次のイノベーション

すでのぼくらの手の中にあるのです。

 

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実は、ぼくらが日常にやっていることが

次の大きなイノベーションになるのです。

 

ぼくら看護師は、

自分が行なっている看護が

治療にあまりインパクトがないと

勝手に思い込んでいますが、

薬や手術より大きくアウトカムを

改善する可能性を秘めているのです。

 

看護師は自分の看護を

過小評価しすぎています。

 

最近は、賞賛されるICUの研究も

看護的な内容になってきています。

 

ICUの入院した家族は

1年後も精神的に苦しんでいるとか、

CPRをする時には

家族に見せた方が良いとか。

 

看護師なら誰でも

当たり前じゃん!と思っている内容が

医師たちによって検証されて

世界最高峰の雑誌に投稿されており、

とてつもない悔しさを感じています。

 

「看護では当たり前」だけど、

それは、他の人から見たら社会的に

「大きなイノベーション」なのです。

 

看護の可能性を信じて下さい。

 

今日の臨床が、明日のエビデンス

そして次のイノベーションになるのです。

 

現場で働いている看護師が

次のイノベーションを起こすのです。

 

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「看護とイノベーション

は、どうだったでしょうか?

 

このテーマは、

自分の生涯テーマなので、

本当はもっともっと

詳しい内容がありますが、

また次の機会としましょう。

 

変化に従う存在ではなく、

変化を生み出す存在になって下さい。

 

変化に対する最良のマネジメントは

変化を起こすことなのですから。

 

僕自身も、変化を怖がらずに、

いつまでも挑戦していく人材で

ありたいと考えています。

 

ということで、

こんなに重たい記事書いても

1円も原稿料出ないので、

ハワイでのビールおごりに期待しています(笑)

 

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